噂のお姫様の愚痴
どうしてこうなっちゃったんでしょう。噂って本当、怖いですよね。この国全体への広まり具合、どなたかの作為としか思えません。権力と能力がある人って恐ろしい。主犯は王様でしょうか王妃様でしょうか。どちらにしても、国民としては頼もしくも恐ろしい限りです。
ええ、まあ、あの方々を両親として育てられるのは大変だったでしょうね。お城を抜け出して遊びまわりたい気持ちも分かります。
けれども、今頭を抱えたいのは私の方ですよ。何ですか、お姫様って。何ですか、結婚って。
私は単なる村娘に過ぎませんし、王子様と結婚したいなんて一言も言っていませんよ?
そうでしょうね。私も王子様が私との結婚を望んだ、なんて思ってません。そもそも王子様には魔法使いさんがいるじゃないですか。この話が彼女の耳に入ったら……ってなんて顔してるんですか。
え? 隠してるつもりだったんですか? はい? 告白もまだなんですか? え、嘘でしょう?
あの、確かに魔法使いさんは貴族嫌いですけどね? 王子様は別でしょう。だっていつも一緒に居るじゃないですか。
まあ、仕事ではあるんでしょうが、流石に辞めようと思えば辞められる筈ですよ。魔法使いさんの程の実力があれば、再就職には困らないでしょう?
そもそもあれだけ仲良くしておいて、嫌われてるはないでしょう。いっそ魔法使いさんが可哀そうです。
はあ……でも貴方たちどう見たって……まあ、はい。聞いてみればいいじゃないですか。魔法使いさんに。ここで私を前に悩んでどうするんです。
え? 今から? でも彼女は今、それこそ王様の命令で旅に出てる筈じゃ……
ああ、都までは戻って来てるんですか。常にお互いの居場所が分かるってそんな魔法があるんですね。それは良かったですね。ええ。本当に。
どうぞいってらっしゃい。
おかえりなさい。早かったですね。相変わらず人間離れしていて何よりです。
いえいえ、結果がどうだったかなんて言って頂かなくてもいいですよ。顔を見れば分かりますから。
本当にいいですから! ええ、分かりますよ!? 確かに魔法使いさんは可愛いですよね! わざわざ教えて頂かなくても知ってますから!
ああもう……分かりました。聞けばいいんですね? 聞きますよ。どうぞお好きなだけ惚気て下さい……。
いえ、ちゃんと聞いてましたよ? ええ、もう、本当にごちそうさまです。
それで浮かれている所申し訳ないんですけれどね?
貴方、私との結婚どうするつもりなんですか?
やっぱり忘れてましたか……。
まあ、「魔法使いさんと結婚したい」って王様にでも王妃様にでも言えばいいと思いますよ。幸い結婚式の準備は着々と進んでますし。花嫁が入れ替わることぐらい大したことじゃないでしょう。
そもそも今回の噂も、中々結婚しない王子様と魔法使いさんに焦れた王様夫婦が、お二人を炊きつけるために広めたんじゃないかと。強制的に噛ませ犬にされた私にはいい迷惑ですけれどもね。
それはそうでしょう。むしろ隠しているつもりだったことに驚きです。
あ、あの、いえね? 分かりやすいのは王子様の美点だと思いますよ。はい。
まあ、確かに、貴族の間ではやっていけないと思いますけれど……そういうところも含めて魔法使いさんとお似合いじゃないですか。
……ええ……幸せそうで何よりですね。本当に。
私ですか? そうですね、お城で雇って頂ければ、と思ってますけど。
いえ。村には帰りたくありません。元々みなしごですし。村にはいい思い出が余りないんです。
魔王様に拾って頂いたのも、村から逃げている時だったんですよ。村長の後妻にされそうになりましてね。村長、私と同い年のお孫さんが居るのに。
ええ、そうです。村から逃げ出して途方に暮れていたときに拾って頂いたんです。村には帰りたくないって言ったら、魔王城に置いて下さいました。人間好きなんですよね。あの人。だから、人間について教えるのと引き換えに。
何ていうか、好奇心が強いんでしょうね。私を拾ってくれたのも、人間の事が知りたくて、人間の住む国を見に来たときだって言う話でしたから。
え? ああ、大丈夫ですよ。勘違いなら誰にもありますから。魔王様だって否定しようとしなかったんでしょう?
まあ、お蔭で私は王様にも王妃様に良くして頂いてますしね。都も賑やかで素敵なところです。あのまま村にいたらこんな賑やかな街に来ることもできなかったでしょう。
そう考えれば、今はとても、幸せ、なんでしょうね。
大丈夫ですよ。私はここで、この国で、きっと幸せになりますから。
だってそれが、魔王様のお望みなんですもの。