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《ノエル・ブランジェ》 その1

ノエル・ブランジェ 


十五歳 身長145cm 


黒目栗毛のツインテール

第一章最強と最凶の出会い


魔法学園グランフォート。


この魔法国家グレイウォールにおいて、『十賢者』と呼ばれる偉大な魔道士たちを輩出した超一流の全寮制魔法学校。『十賢者』たちは、あらゆる災厄に立ち向かい、国を、そして民を守った。時は流れ、現在、『十賢者』の子孫は公爵に封じられ、『十公爵』と呼ばれる大貴族となり、国政の中核を担っている。


「はぁ~あ」


歴史の教科書をパタンと閉じ、私は大きなため息をつきました。


私の名前は『ノエル・ブランジェ』。

この国を支える『十公爵』の一つ、ブランジェ家の末娘で、三日前、この魔法学園グランフォートに入学した1年O組の新入生です。


ちなみに入学テストの成績順によってA~Oのクラスに振り分けられるので、O組の私は学年最下位の成績だったということですね。


まぁ、名門の家柄である私は、その結果に対しても落ち込みましたが、ただ今、それ以上の問題に直面し、学園の裏庭で非常に落ち込んでいるところです。


「せっかく、憧れのグランフォートに入学できたのに……」


かばんの中から、数枚の白い紙を取り出し、本日何度目かのため息。


その紙の右上には、赤ペンで数字が大きく書かれていました。

上から順番に5、4、3、2、1、0。


ドッカーンと頭の中が爆発した感覚に陥り、がっくりと肩も落ちました。


まるでカウントダウンのようなこの数字が一体何なのかというと、白い紙の一行目、タイトルを見てください。



『実力テスト』



そうです。この紙切れたちは、私が保有する知能指数を測るためのものなのです。

上から順に国語、社会、理科、数学、魔学、魔法学。


魔学というのは、一般的な生物とは違い魔力を持つ魔物や人間以外の種族、例えばドワーフやエルフ、それから魔族について勉強する教科で、魔法学は、そのまま魔法について習う教科のこと。


「れっ0点~」


一流魔道士を輩出する魔法学校の生徒なのに、これから超一流魔道士になるはずなのに、よりにもよって魔法学が0点とはシャレになりません。『魔法指数ゼロ、魔法の才能皆無』といわれたも同然。

このままでは留年の危機、いや退学の危機です。入学三日目にして、早々と留年および退学の心配をすることになろうとは、情けなくて、情けなくて……。


「どうしよう~」


な~んて言っている時間は残されていません。


私は、試験後、O組の担任に呼び出されたのです。


「ブランジェくん、君、このままじゃ、やばいよ~」


「やばい……ですか?」


私の返事にうんうんと何度も首を縦に振り、先生は言いました。


「グランフォートでは、基準に満たない成績の者は、留年または、退学処分にするという決まりがある。このままの成績じゃ、留年決定確実。下手すると、退学処分になるかもしれないよ」


「そっ、そんなに悪いんですかぁ?」


自覚のない私に先生は、教卓を叩きながら、怒ります。


「6教科合計15点だぞ! 誰が見ても悪いに決まっている! しかも、優秀な魔道士になりたいっていう奴が魔学で1、魔法学にいたっては0点とは前代未聞だ!」


ううっ、確かに、先生のおっしゃるとおりです。


叱られた小動物のようにシュンとする私。

そんな私を哀れに思ったのか、先生は助け舟を出してくださいました。


「明日の実技で高得点を取れば、とりあえず退学は免れる。留年についても今後の様子を見て考えてもらえるよう、校長先生にも口添えしてやるから。ここで勉強を続けたければ、実技を頑張れ!」


そう送り出されて、今に至るわけです。


ですから、私には落ち込んでいる暇はないのです。

秘密の特訓です。


「よし、頑張るぞ! おー!」


私は、拳を握り締め、立ち上がりました。やる気満々です。


そして、かばんの中から、ある分厚い本を取り出しました。

その本は何なのかというと『初級魔法教本1』。


明日の実技はこの本にある炎の初級魔法をやると、先生がこっそり教えてくださったのです。感謝です。

予習しておけば、高得点間違い無しですから。


私は、早速初級魔法レベル1のページをめくりました。


「え~と、なになに。炎の攻撃魔法レベル1 ファイアーボール」


きゃー、ファイアーボールなんて、テンションMAXです!

攻撃魔法の中でも、簡単で人気の高いファイアーボールを習えるなんて嬉しいです~。


私はドキドキする胸を押さえ、続きを読みました。


「まず、右手を前に出し、その腕を左手で支え、銃の照準を合わせるように構える。それから、呪文を唱えて、標的に向かって発射する。ふむふむなるほど」


そして、私は本に書かれている呪文を口にした。


「灼熱の玉よ。わが敵を駆逐せよ! ファイアーボール!」


カッコイイ。


私は、目をキラキラさせ、本を見入っていましたが、すぐさま異変に気がつきました。


「ん? あれ?」


なにやら、周りが異常に明るい。裏庭は木々が生い茂っているので、少し薄暗いはずなのに、おかしいです。


「それに、暑い」


さきほどまで、涼しい風が吹いて、気持ちよかったのに、汗が出てきました。


「太陽が出てきたのかな?」


そう思って、空を見ると、私の目の前をゆっくりと赤い玉が飛んでいました。


「ひっ火の玉ーー! おばけー!」


私、幽霊が大の苦手。驚いた拍子に持っていた本を放り投げてしまいました。


すると、ゴンッと、本が何かにぶつかる音が聞こえてきました。


「いてっ」


木の上から男の人の声。


それから、本がドサッと草むらに落ちる音がしたと思ったら、先程の赤い玉がのろのろとやってきて、その木にぶつかったのです。


「あっ」


私の一言と同時に、赤い玉が炸裂し、その木はあっという間に爆発炎上と相成りました。てへっ。

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