表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

第4章 シンデレラの朝


昨日の夢のような出来事は、朝の通勤ラッシュのバスの中で、あっという間に現実に変わっていた。人々が押し合いながら乗り降りする狭い空間に、紗江の心はまだ昨夜の温かい余韻に浸っていた。目の前の窓ガラスには、冬の淡い朝日がビルの間から差し込み、冷たい光が揺れて映っている。


紗江は小さな広告代理店で課長として働いていた。少人数の職場で責任は重いが、自分なりに精一杯こなしてきた自負があった。揺れるバスの中で、部下の澤口が気を遣うように声をかける。「課長、今日のランチはどこにします?」


紗江はちらりと周囲を見回しながら答える。「貴方たちはどうするの?」

「最近、イケメンがいる良いフレンチレストランを見つけたんです。だから、そこに行こうと思ってます」

その一言に紗江の胸が一瞬、熱くなる。『イケメン…?』

「私も…一緒に行ってもいい?」とつい口を開いてしまった。


ーー昼休みーー


会社を出ると、冬の冷たい風が頬をかすめる。ランチの店は想像以上に混雑しており、女性客で溢れかえっていた。名前を書き、順番を待つ間、紗江の心臓は小さく高鳴る。やがて「お待たせしました」と現れた店員は、想像以上に爽やかなイケメンで、柔らかい微笑みと不思議なオーラを放っていた。紗江は思わず息を呑む。胸がぎゅっと締め付けられるようだった。


奥のキッチンでは、イケおじながらどこか影のあるシェフが静かに料理を作っている。運ばれてくる料理はどれも繊細で、香りも彩りも絶妙だ。味を噛みしめると、思わず目を閉じたくなるほど美味しい。澤口が満足気に「課長、どうですか?」と顔を覗き込む。紗江は微笑みながらも、少し声を詰まらせる。「うん…なかなか、いいお店ね…」


帰り際、イケメン店員が「またいらしてくださいね」と丁寧に告げる。紗江は自然に笑みを返し、「料理も接客も素晴らしいわ。今度シェフにもご挨拶させてね」と言い、心が温かくなるのを感じながら店を後にした。


会社に戻った紗江は、自分のデスクに置かれたコーヒーカップを手に取り、昨日田島がそっと残していったメモ書きを見つめた。柔らかな光の差し込むオフィスの中で、昨日の夜の出来事がまるで現実だったのか、夢だったのか、まだはっきりしない感覚が胸に広がっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ