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暗いと捨てられた令嬢は、隣国で光を取り戻す  作者: かも@ろん


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第2章

大広間を後にした瞬間、喧騒が遠ざかり、廊下には冷たい静けさが満ちていた。

エリシアは小さく肩を震わせながら、レオンハルトの後ろを歩いている。

彼は歩調を緩め、ちらりと横目で彼女を見た。

(……足元ばかり見ている。

転びそうだが、理由は“床の汚れ”か。)

エリシアは緊張で手をぎゅっと握りしめていた。

その指先には、まだハンカチが握られている。

「……あの……」

小さな声が背後から届く。

レオンハルトは足を止めた。

「何だ。」

「ご迷惑を……おかけしてしまって……」

「迷惑ではない。」

即答だった。

エリシアは驚いたように瞬きをする。

(この国の者は、彼女に“迷惑だ”と言い続けてきたのだろう。)

レオンハルトは、彼女の家族が向けていた冷たい視線を思い出す。

婚約者の令息が吐いた「暗い女」という言葉も。

(暗いのではない。

ただ、誰も彼女を見ていなかっただけだ。)

「……君は悪くない。」

レオンハルトは静かに言った。

エリシアは小さく首を振る。

「で、でも……私、また……掃除してしまって……

あんなに……たくさん……」

「それで困るのは、隠していた側だ。」

淡々とした声。

しかしその言葉は、エリシアの胸に深く染みた。

(この人は……怒っていない……?

私を、責めていない……?)

エリシアは胸が熱くなるのを感じた。

レオンハルトは歩き出しながら、

彼女の足元に落ちていた小さな紙片に気づいた。

拾い上げると、それは“汚染水誘導装置”の設計図の一部だった。

大広間で露出したものの続きだ。

(……やはり、この国は何かを隠している。)

そして、その真相を暴いたのは、

ただ“掃除をしただけ”の令嬢。

(彼女の魔法は……国を揺るがす。)

レオンハルトは紙片を懐にしまい、

エリシアに向き直った。

「エリシア嬢。

君は、しばらく我が国で保護する。」

「え……?」

「この国に置いておけば、また同じことが起きる。」

エリシアは戸惑いながらも、

その瞳にはほんの少しだけ安堵が宿っていた。

(この人のそばなら……叱られないかもしれない。)

レオンハルトはその表情を見て、

胸の奥がわずかに揺れるのを感じた。

(……守る価値がある。)

そして二人は、王城の門を出た。

エリシアの“掃除”が、

隣国リュミナールの運命を変えるとは、

この時まだ誰も知らない。


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