表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暗いと捨てられた令嬢は、隣国で光を取り戻す  作者: かも@ろん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/12

第10章

二体目の守護者がエリシアに寄り添った瞬間、

倉庫の奥の闇が“どろり”と揺れた。

兵士たちは一斉に武器を構える。

「……今の、何だ……?」

「さっきまでの気配と違う……!」

レオンハルトは剣を構え、

エリシアと守護者たちの前に立った。

影の守護者たちは震えながら、

かすれた声で告げた。

「……くる……

あれは……

わたしたち……じゃ……ない……」

エリシアの胸がざわついた。

さっきまでの“痛み”とは違う。

これは──敵意。

(……この奥……

何かが……目を覚ましてる……)


奥の闇が、ゆっくりと形を成し始めた。

最初は黒い霧。

次に、霧が絡み合い、

人のような、獣のような輪郭を作る。

兵士たちが息を呑む。

「……形になっていく……!」

「これ……守護者じゃない……!」

レオンハルトは低く言った。

「構えろ。

これは“核”ではない。

汚染そのものが形を取っている。」

エリシアは影の守護者たちを抱き寄せた。

(……この子たちが震えてる……

つまり……

この存在は……“彼らを壊したもの”……)

闇の形は、

ゆっくりと“顔”らしきものをこちらへ向けた。

その目は、

光ではなく──空洞。


闇の存在は、

低い唸り声のような音を発した。

「……アァ……ァ……」

エリシアの胸が締めつけられた。

(……苦しんでる……

でも……

この苦しみは……

誰かを求めるものじゃない……)

影の守護者が震える声で言った。

「……あれは……

わたしたちを……

くずした……もの……」

レオンハルトの表情が険しくなる。

(……守護者を壊した“元凶”……

ならば、ここで止めるしかない。)

闇の存在が一歩、前へ。

床が軋み、

黒い筋が生き物のように広がる。

兵士たちが後退する。

「……動いた……!」

「来るぞ!」


闇が跳ねるように飛び出した瞬間、

レオンハルトが前へ踏み込んだ。

「下がれ、エリシア!」

剣が闇を裂く。

だが──

「……っ!」

刃は通らない。

闇は霧のように形を変え、

攻撃をすり抜けた。

兵士たちが叫ぶ。

「効いてない……!」

「どうすれば……!」

闇の存在は、

レオンハルトではなく──

エリシアへ向かって伸びた。

(……私……?)

影の守護者たちが一斉に叫ぶ。

「……にげ……て……!」


闇がエリシアに触れようとした瞬間、

彼女の胸元が強く光った。

「……っ!」

光は闇を弾き、

倉庫全体に響くほどの衝撃を生んだ。

兵士たちが目を覆う。

「光が……!」

「闇が……後退してる……!」

レオンハルトは驚愕の表情でエリシアを見た。

(……あの子の光は……

“守護者”だけでなく……

汚染そのものにも反応するのか……?)

闇の存在は後退しながら、

低い唸り声を上げた。

「……ア……アア……」

その声は、

怒りでも悲しみでもない。

ただ──空虚。

エリシアは震える声で呟いた。

「……この子……

何も……感じてない……

ただ……壊すだけ……

“空っぽ”……」

レオンハルトは剣を構え直した。

「エリシア。

あれは……守護者とは違う。

“救う”ことはできない。」

エリシアは影の守護者たちを抱き寄せた。

(……でも……

この子たちを壊した存在……

ここで止めなきゃ……)

闇の存在が再び形を変え、

エリシアへ向かって迫る。

レオンハルトが叫ぶ。

「構えろ!

ここが……本当の戦いだ!」


闇の存在がエリシアへ向かって迫った瞬間、

レオンハルトは迷いなく前へ飛び出した。

「エリシアから離れろ!」

剣が闇を裂く。

だが、刃は霧のようにすり抜けた。

闇は形を変え、

エリシアへ伸びる“腕”のような影を作る。

エリシアは影の守護者たちを抱き寄せながら、

胸の奥の光を必死に抑えた。

(……この子たちを守らなきゃ……

でも……どうすれば……)


闇が触れようとした瞬間、

エリシアの胸元が強く光った。

「……っ!」

光は衝撃波のように広がり、

闇の腕を弾き飛ばした。

兵士たちが驚愕する。

「光が……闇を押し返した……!」

「エリシア様の力……防御にも……!」

レオンハルトはその光を見て、

一瞬だけ息を呑んだ。

(……あの光は……

守護者だけでなく、

“闇そのもの”にも通じる……?)

闇は後退しながら、

低い唸り声を上げた。

「……ア……アア……」

その声は、

怒りでも悲しみでもなく、

ただの“空虚”。


闇が再び形を変え、

今度は鋭い槍のような影を作って突き出してきた。

レオンハルトは剣で受け止める。

「ぐっ……!」

影は重い。

霧のようでいて、

確かな“力”を持っている。

兵士たちが援護に入ろうとするが──

「下がれ!

あれは普通の攻撃では斬れん!」

レオンハルトは影を押し返しながら叫んだ。

(……斬れないなら……

“光”で弱らせるしかない……)

彼はエリシアを振り返った。

「エリシア!

光を……もっと強くできるか!」

エリシアは影の守護者たちを抱きしめたまま、

震える声で答えた。

「……できます……

でも……

この子たちが……苦しむかも……」

影の守護者たちは、

弱い光を揺らしながらエリシアの手に触れた。

「……だいじょう……ぶ……

つかって……」

エリシアの胸が熱くなる。

(……この子たちも……

一緒に戦ってくれる……)


エリシアは両手を胸元に当て、

深く息を吸った。

「……お願い……

私に……力を……」

影の守護者たちの光が、

エリシアの胸へ流れ込む。

次の瞬間──

眩い光が倉庫全体を照らした。

「……っ!」

闇の存在が苦しげに後退する。

レオンハルトはその隙を逃さなかった。

「今だ!」

彼は光の中へ飛び込み、

闇の中心へ剣を突き立てた。

闇が悲鳴のような音を上げる。

「アアアアア……!」

エリシアの光が剣を包み、

刃が“実体”を持ったかのように闇を裂いた。

兵士たちが息を呑む。

「……斬れた……!」

「光が……剣を……!」

レオンハルトは闇を押し返しながら叫んだ。

「エリシア!

そのまま光を維持しろ!」

エリシアは必死に頷いた。

「……はい……!」


光と剣の共鳴に耐えきれず、

闇の存在は形を崩し、

霧のように後退していく。

だが──

完全には消えない。

床に黒い“痕跡”を残し、

奥の闇へ逃げ込んだ。

レオンハルトは剣を構えたまま、

息を整えた。

「……逃げたか。」

兵士たちが周囲を確認する。

「完全に消えてはいません……」

「奥へ……逃げたようです……」

エリシアは胸に手を当て、

影の守護者たちを見つめた。

(……あの闇……

この子たちを壊した存在……

まだ……奥に……)

影の守護者たちは震えながら言った。

「……あれは……

“おおもと”……じゃ……ない……

もっと……ふかく……」

レオンハルトはエリシアを見た。

「……行くかどうかは、君が決めろ。」

エリシアは迷わず頷いた。

「……行きます。

この子たちを……

もう二度と……壊させないために。」

レオンハルトの瞳がわずかに揺れた。

(……あの子は……

本当に……強い。)


黒く脈打つ扉がゆっくりと開いた瞬間、

冷たい風が吹き抜けた。

それは風というより──呼吸だった。

エリシアは胸の奥が強く締めつけられるのを感じた。

(……この奥……

“何か”が……待ってる……)

レオンハルトは剣を構え、

エリシアを庇うように前へ出た。

「気を抜くな。

ここが……最深部だ。」

影の守護者たちは震えながら、

かすれた声で告げた。

「……あれが……

わたしたちを……くずした……

“おおもと”……」


扉の先は、広い円形の広間だった。

かつては白い石で作られた神聖な場所だったのだろう。

だが今は、黒い筋が天井から床まで絡みつき、

中央には巨大な“影の塊”がうずくまっていた。

兵士たちが息を呑む。

「……あれが……本体……?」

「形が……わからない……」

影の塊は、

まるで眠っているように動かない。

エリシアは胸に手を当てた。

(……苦しい……

でも……

さっきの闇とは違う……

これは……もっと深い……)

レオンハルトは低く言った。

「エリシア。

感じるか。」

「……はい……

この子たちの……“親”みたいな……

そんな気配がします……」

影の守護者たちは震えながら頷いた。

「……わたしたち……

ここで……うまれた……

あれは……

“ひかりの王”……だった……」

兵士たちがざわつく。

「光の……王……?」

「じゃあ……あれは……」

エリシアは息を呑んだ。

(……光を守る存在の“王”……

それが……壊れて……

闇になった……?)


影の塊が、

ゆっくりと動いた。

床が震える。

「……ア……ァ……」

その声は、

先ほどの闇とは違う。

深く、重く、

悲しみに沈んだ声だった。

エリシアは胸が締めつけられた。

(……この声……

ずっと……泣いてる……)

影の王は、

ゆっくりと“顔”らしきものをこちらへ向けた。

その目は空洞ではなく──

壊れた光の残滓が揺れていた。

レオンハルトは剣を構えたまま、

その目を見て息を呑んだ。

(……これは……

ただの敵じゃない……

“壊された存在”だ……)


影の王が腕のような影を伸ばし、

一気にエリシアへ迫った。

「エリシア、下がれ!」

レオンハルトが剣で受け止めるが、

衝撃で床が砕ける。

「ぐっ……!」

兵士たちが叫ぶ。

「将軍様!」

「援護を──!」

だが、影の王は兵士たちには興味を示さない。

ただ、エリシアだけを見ている。

(……私……?

どうして……)

影の守護者たちが震える声で言った。

「……おまえ……

ひかり……

もってる……

だから……よばれてる……」

エリシアは胸に手を当てた。

(……私の光……

この子たちの光……

それを……求めてる……?)


影の王が再びエリシアへ迫った瞬間、

エリシアの胸元が強く光った。

「……っ!」

光が衝撃波となって広がり、

影の王を一瞬だけ後退させる。

レオンハルトはその隙を逃さなかった。

「今だ!」

剣にエリシアの光がまとわりつき、

刃が“実体”を持ったかのように輝く。

レオンハルトは影の王へ斬りかかった。

刃が闇を裂く──

だが、深くは入らない。

影の王は苦しげに揺れた。

「……ア……アア……」

エリシアは震える声で呟いた。

「……この子……

本当は……

“助けて”って……

言ってる……」

レオンハルトは息を呑んだ。

(……あの子は……

こんな存在にすら……

寄り添おうとするのか……)


影の王が、

エリシアの光に触れた瞬間──

エリシアの視界が揺れた。

白い部屋。

祈る人々。

光をまとった王。

そして──

天井から落ちてくる黒い影。

王は守ろうとした。

だが、

光を奪われ、

壊され、

闇に沈んだ。

エリシアは涙をこぼした。

「……あなた……

守ろうとしたんだね……

壊したかったんじゃなくて……

守れなかったことを……

ずっと……悔やんで……」

影の王は苦しげに揺れた。

「……ひかり……

まもれ……なかっ……た……」

レオンハルトは剣を下ろした。

(……これは……

倒すべき“敵”ではない……

救われるべき“存在”だ……)


影の王の記憶がエリシアの胸に流れ込んだあと、

広間の空気は重く沈んだままだった。

影の王は苦しげに揺れ、

かすれた声で呟いた。

「……まもれ……なかっ……た……

ひかり……ぜんぶ……」

エリシアは涙を拭い、

震える声で言った。

「……あなたは……

守ろうとしたんだね……

壊したかったんじゃなくて……

守れなかったことを……

ずっと……悔やんで……」

影の王はその言葉に反応し、

わずかに光を揺らした。

レオンハルトは剣を下ろし、

静かに言った。

「エリシア。

あれは……倒すべき“敵”ではない。

救われるべき“存在”だ。」

兵士たちも息を呑む。

「……救う……?」

「あんなものを……?」

だが、影の守護者たちは震えながら頷いた。

「……おう……さま……

ひかり……かえせば……

もどる……」

エリシアは胸に手を当てた。

(……光を……戻す……

私の力は……

“本来の姿”を呼び戻す力……

なら……)


エリシアは影の王へ一歩近づいた。

レオンハルトが思わず腕を伸ばす。

「エリシア、危険だ!」

「……大丈夫です。

この子は……私を傷つけようとしていません。」

影の王は、

エリシアの光に引き寄せられるように揺れた。

その姿は、

恐ろしい“闇”ではなく──

壊れた光の残骸だった。

エリシアは静かに言った。

「……あなたの光……

取り戻すのを……手伝わせて。」

影の王の輪郭が震え、

かすかに光が滲んだ。

レオンハルトは息を呑んだ。

(……あの子は……

どんな存在にも……

寄り添おうとする……

その光が……王を呼んでいる……)


エリシアが手を伸ばすと、

影の王はゆっくりとその手に触れた。

瞬間──

広間全体が光に包まれた。

「……っ!」

兵士たちが目を覆う。

影の王の黒い表面が、

少しずつ剥がれ落ちていく。

エリシアの胸元の光が、

王の中へ流れ込んでいく。

影の守護者たちは震えながら言った。

「……ひかり……

かえってる……」

レオンハルトはその光景を見つめ、

静かに息を吐いた。

(……彼女の力は……

“浄化”ではなく……

“再生”……

壊れた光を呼び戻す……)


光が王の中へ流れ込むほど、

王の影が薄くなっていく。

だが──

その奥から、

別の“黒い影”が揺れた。

エリシアは胸が締めつけられた。

(……この奥……

まだ……何かが……)

影の王が苦しげに揺れ、

かすれた声で言った。

「……ちがう……

わたし……じゃ……ない……

なか……に……

“ほかのもの”……」

レオンハルトの表情が険しくなる。

「……内部に……別の存在……?」

影の守護者たちが震えながら言った。

「……おう……さま……

のっとられ……た……

“よそもの”……」

エリシアは息を呑んだ。

(……王を壊したのは……

外から来た“闇”……?)

影の王は苦しげに揺れ、

エリシアの手を掴んだ。

「……たすけ……て……

のっとられ……

て……る……」

エリシアは強く頷いた。

「……あなたを……取り戻す……

その“よそもの”を……

あなたから……追い出す……!」

レオンハルトは剣を構え直した。

「エリシア。

その“よそもの”が姿を現したら……

私が斬る。」

エリシアは影の王の手を握りしめた。

「……はい。

私が……光で引きずり出します。」

影の王の奥で、

黒い影が蠢いた。

広間の空気が震える。

(……来る……

王を乗っ取った“本当の闇”が……)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ