結果発表
とうとう今日は合格発表の日か。
思えば短い命だった。村で慎ましく暮らす生活も、結構気に入ってたんだけどな…
あの日試験が終わった俺は、どっと疲れが押し寄せたこともあり、宿で休もうとしていた。
だが次の瞬間、目を開けると…そこは人が消えた城下町だった。
「ほら行くよ!オルフェン!頑張ってそっくりの城下町作ったんだから!」
「分かったから…引っ張らないで…」
レオナに手を引かれ、人気のない大通りを駆け足で進む。あんなに賑やかだった石畳の通りは、いまや不思議なほど静まり返っている。
その途中で試験前に見かけた串焼きの店の前に差し掛かるが、そこには店主も客もおらず、串焼きも一本も無い。
「オルフェン、今から元の世界に戻すから買ってきて!」
「……はいはい」
元の世界に飛ばされた俺は、店で串焼きを二本買う。
再びレオナの世界に戻ると、レオナは嬉しそうに受け取り、かぶりついた。
「ん〜!凄く美味しい!」
そんな笑顔を見ていると、まあ、悪くないかと思えてしまう自分がいる。
「あの鐘鳴らしてみたい!どんな音がするのかな!」
「噴水で遊ぼうよ!絶対気持ちいいよ!」
「見てこの服!似合うかな?」
あっちへこっちへと振り回されたが、不思議とこれからのことを忘れさせてくれる時間だったと思う。
…そういえば前に来たときよりも、長くレオナの世界にいた気がする。
だんだん長くなっているような…
(結果見に行こーよ!私凄い気になる!)
呑気なもんだ、この女神は。
これから一人の命が散るかもしれないというのに。
(もういいや…行こう…)
足取りが重い…
○
掲示板に近づくにつれて、人の数が目に見えて増えている気がする。
(凄い人だかり!何でこんなに人が集まってるんだろう!)
(みんなも誰が受かったかとか知りたいのかなぁ)
とりあえず人混みを掻き分けて進んでいく。どうやら全員、掲示板に向かっているらしい。
ざわめきと熱気の中、肩と肩がぶつかり合いながらも、ようやく最前列に辿り着いた。
(凄い人の数だった…え〜っと、俺の名前は…)
視線を掲示板の端から端へと走らせる。やけに合格者の数が少ないな。試験を受けたほとんどの人が落ちてないか?100人以上は会場にいたのに、10人も受かってないぞ。
(オルフェン、右の掲示板に名前書いてあるよ!)
凄く嬉しそうな声だ。え?マジで受かったの?
俺は慌てて右へ視線を移す。
--------------------ーーーー
<最優秀>
オルフェン殿
その優秀な成績を鑑み、これより直ちに二次試験へ移らせて頂きます。衛兵の案内に従い、速やかに二次試験会場、アストレア王都行政庁 大評議室へお越しくださいますようお願い申し上げます。
---------------------ーーー
(凄いじゃん!オルフェン!最優秀だって!)
…何で俺が最優秀…?適当に書いただけだぞ…?しかも今から偉い人が大勢いそうなところに行かないといけないのか……?
(やっぱりオルフェンは面白いね!一緒にいて楽しい!)
この女神、俺の精神が沈んでいる時はいつも元気じゃないか?
「貴殿がオルフェン殿で間違いありませんか?」
掲示板の側に居た衛兵が話しかけてきた。
「…はい」
周囲が騒つく。そりゃあそうだ、こんなに悪目立ちしているんだから。
「私は統帥より命を受け、貴殿をこれより王都行政庁の大評議室へとご案内いたします。ご同行いただけますでしょうか」
………これは逃げられないな。
「…分かりました」
生きて帰れるだろうか。失礼なことを口走ったらどうしよう。そもそも会話が苦手だし、聞かれた事に答えられないかもしれない。
「市民の皆さん、失礼します!」
衛兵が人混みを掻き分けて進む。
視線が痛いよ…