試験
試験会場の扉をくぐると、広い講堂のような部屋が目に飛び込んできた。
奥の壇上には試験官らしき人々が並び、受験者たちは長机に等間隔で座っている。
ざわつきはあるが、空気はやけに重い。
俺は係官に指示された席に座り、試験開始の合図を静かに待った。
○
「それでは、これより試験の説明を始めさせていただきます。この試験では、実際に貴方が戦場で指揮を取る立場に立った場合、どのような指揮を下すかを確認します。制限時間は三時間です。それでは----はじめ!」
とうとう始まってしまった…
深く息を吐き、覚悟を決めて問題用紙をめくる。
(えーっとまず一枚目は…)
絶望した。手も足も出ないとはまさにこのことかと痛感した。
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1.王歴293年、ディエルハが本国北東ベルグリードへ大侵攻を行った際、ロズヴァル北部辺境総合司令が下した指揮内容を鑑み、貴方ならどのような策を講じるか述べよ。
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………何だよこれ。誰だよディエルハって!ベルグリードってどこだよ!
(レオナ、助けてくれ!こいつら誰だ!そしてどこだ!)
俺はノータイムで助けを求めた。
(………あ〜ごめんね〜?私、人とか地方の名前とか全然知らないから、何のことかさっぱり分かんないや!)
(何しとんじゃコラァァ!!)
どうすんだよ!これ!他の問題も見た感じ、こんなのばっかだぞ!このままだと0点取って冷やかし扱いされて不敬罪になるって!
(オルフェン、多分大丈夫だって自信を持って!)
(もうやるしかねえ!とりあえず全部埋めるぞ!)
(頑張って!)
それからの俺は、ただひたすら紙に文字を殴り書きしていった。自分でも何を書いているか分からない部分も結構あったと思う。もはや問題文すら読んでいないものもあった。
読んだところで、そもそも理解できないんだから仕方ない。
(問題文が暗号にしか見えないぞ!)
本当にこの女神は、どんな試験に俺をぶち込んでいるんだ。
(ねえねえ!周りの人も結構手が止まってるよ!やっぱり難しいんだね!)
対策してるはずの人でも手が止まるってどんな試験なんだこれは!しかも何でレオナはこんなに嬉しそうなんだよ!
(もうどうにでもなれ!)
○
「お疲れ様でした。結果は三日後、本会場前に合格者を張り出させて頂きます。では速やかに退出してください」
(終わったな…色んな意味で)
余命三日かもしれないな。この短い命、どう使おうか。
(なら、前言ってた城下町巡りしようよ!今暇でしょ!)
(…いいな、楽しそうで。)
こうなったの誰のせいだっけ。
あ、コイツだわ。