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戦神

仕事って何だ?レオナとのピクニックが終わってからしばらく経つが、特に何も起こらない。


(とりあえず、少し寝るか)

そう思って目を閉じた途端、複数の足音がこちらに近づいてくるのが聞こえた。


「オルフェン君!しっかり捕まって!」

おじさんがそう叫んだ瞬間、馬車が急加速する。


(何だ?一体何が起こってる!)

揺れまくる馬車から外を見て、状況を一瞬で理解した。


(なんだあの化け物共!?)

六本脚で口が裂けたたくさんの狼が、とてつもない速さで追って来ている。


「このままだと追いつかれる!!」

おじさんが焦りながら叫ぶ。


「うわああああ!!」

その瞬間、馬車が急停止し、俺は荷台の外に放り出された。




馬車は狼たちに囲まれ、ジリジリと距離を詰められる。荷台の外に吹っ飛ばされ、起き上がった時には、既にこの状況になっていた。


(どうしろっていうんだよ…こんなの…)

「絶体絶命って、こういうことを言うんだな」などと、もはや他人事のように頭が回ってしまう。


(オルフェン、自信を持って!!)

突然、レオナの声が頭の中に響く。


(どう自信を持つんだよ!!このままだと食われて終わりだ!!)

(オルフェンには私があげた力があるでしょ!!)


狼達がすぐそこまで近づいて来た!もう一か八かーーやるしかねえ!




「魔獣の報告があったのはこの近くか!?」

「はい!この先の草原です!」


甲冑の騎士や長杖を手にした魔導士達が馬を走らせる。


「先発隊より連絡が入りました!魔獣の数は13匹、民間人が襲われています!」

「数が多すぎる!!スピードを上げろ!急げ!!」


そう私が檄を飛ばした瞬間、空気が変わった。

温度が下がる、そんな生易しいものではない。頭上から巨大な手で押し潰されるような、強烈な威圧感。草原を渡る風は途絶え、遠くで鳴いていた鳥や虫は一斉に沈黙した。雲が太陽を覆い、昼だというのに辺りは薄闇に包まれる。


私だけではない、周囲の者も感じ取っているようだ。馬は目を剥き、泡を吹きながら後ずさる。多くの死戦を潜り抜けてきた歴戦の兵士ですら呼吸を荒げ、指先は痙攣し、視線を前に向けられない。

(この圧……!?一体何が起こっている!?)

「落ち着け!!」

私は怒号で兵士達を現実へ引き戻させる。


「魔獣は近いぞ!このまま向かう!隊列を崩すな!」




やがて魔獣の群れが視界に入った。しかし、そこで私は異様な光景に気づく。


(魔獣が……怯えている!?)

理性を失ったはずの魔獣が、明らかに恐怖に支配されている。


(あの男が、この圧の源か……!!)

灰色の髪の男、背中越しで顔は見えない。


「魔獣は怯んでいる!今の隙に魔導隊は攻撃!騎士団は私に続け!」


その後の戦いは一瞬だった。

怯え切った魔獣達は、次々と討ち倒されていく。あまりにも隙が多く、抵抗は形にならなかった。


戦いの最中、偶然にも男の顔がはっきりと見える。


(なるほど……魔獣がこれほど怯えるわけだ。)

螺旋状に渦巻く赤い瞳。

今回は魔獣だけに圧が向けられていたが、もし我々にも向けられていたなら、大半は即座に気絶してしまっていただろう。


「……もはやこれは、戦神そのものだな」

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