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出発

気がついたら俺はレオナ様の像の前にいた。どうやら戻って来れたらしい。


「オルフェン、神託を受けたんだね」

シスターが震えた声で俺に話しかけてくる。


「…知ってるのか?」

さっきみたいに喋られなくなってる。本当にレオナ様以外では相変わらずなのか。


「私にも女神様から神託が降りた。これからオルフェンは、この国、アストレア王国の王都で開かれる王国戦術参謀登用試験を受けることになるよ。」

あの邪神何してくれとんじゃあ!俺が軍に行くとか無理に決まってるだろ!


(だから邪神じゃないってば!というか、オルフェンに拒否権はないよ!)

頭の中でさっき聞いた声が響く。しかもこいつ、またヤバいことを言ってるぞ!


(無理だって!そもそも受からないし、受かったとしてもいずれ即死するわ!)

(多分受かるし、即死はしないと思うから大丈夫!)

(全部憶測じゃねえか!ふざけんな!)


「オルフェン、王都はここからかなり遠いから、ニ日後の朝に貨物馬車に乗せてもらって出発しよう。それまで色々準備してくるんだよ」

脳の処理限界を超えて立ち尽くしている俺は、当然シスターを止められるはずもなく、そのまま試験を受けることが確定してしまった。


(じゃあ、頑張ってね〜)

この神に倫理観はないのか?




それからの二日間はあっという間だった。

天涯孤独で知り合いも一人もいない俺は、なんと数時間でこの村を旅立つ準備が整ってしまった。

残りの時間は今まで通り、村の農作業を手伝ったり、お気に入りの木陰で昼寝をして過ごしていた。

そのためか、今から村を出る実感があまり湧かない。


「オルフェン、この馬車に乗せてもらいなさい。王都まで二週間ほどだ。しっかり勤めを果たすんだよ」

「…行ってくる」

これからどうなるんだろう、俺…。


「君がオルフェン君だね、途中揺れるかもしれないから気をつけて」

手綱を握った優しそうなおじさんがそう言うと、馬車はゆっくりと動き出し、王都に向けて進み始めた。




それから馬車に揺られること二週間、今の俺はレオナとピクニック中だ。

「そろそろ着くんじゃない?私、すごく楽しみかも!」

「なんでレオナが俺より楽しんでんだよ」


馬車生活の序盤の方では、レオナに呼び出される場所は村周辺だったが、最近はよく分からない場所なことが多い。今回はどこかの湖のほとりのようだ。

レオナが言うには、この場所は俺が普段いる世界とは別物で、彼女が作り出した世界とのこと。

ちなみに出発してから二日目のピクニックで。様付けはやめて!」と言われたので、呼び捨てになった。


この二週間はかなり暇で、荷台から景色を眺めているか、結構な頻度で呼び出されるピクニックに参加する以外のことをしていない気がする。


「きっとすごく面白いことになると思うの!早く着かないかなー!」

「勘弁してくれ…」

まず着いたとしても試験で一発不合格だろ。対策何もしてないから、そもそも何をする試験なのかすら分かっていないんだぞ。


「それでね、それでね!」

ちなみにレオナは、こんな感じで結構喋る。前に聞いた話だと、気軽に話せる相手が、今まで全くいなかったらしい。


「なんだけど…….ちょっと待って!オルフェン、早速仕事だよ!」

いきなり会話を中断し、俺の手を掴む。


「えっ!?なんだよ、仕事って」

「私を楽しませる仕事!じゃあ頑張って!」


その瞬間、俺は元の世界に戻された。

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