悪魔との出会い
「…なんでまた外にいるんだ?」
さっきまで俺はレオナ様の像の前にいたはずなのに、気づけば、昼寝していた木陰にワープしていた。しかも人の気配が全くない。
代わりに、すぐそばにはピクニックセット一式が並んでいる。
「このサンドイッチ美味そうだな」
めちゃくちゃ食べたいが、突然ワープした時点で何かヤバそうだ、食べたら呪われそう。
「失礼だよ!せっかく作ったのに呪物みたいな扱いしないでよ!」
「うがああああ!!!」
多分3メートルは垂直に飛んだと思う。それくらいびっくりした。だって耳元で声が聞こえてきたもん。
「あはははは!君本当に面白いね!呼んで正解だったかも!」
そこにいたのは、レオナ様の像にそっくりの人。灰色がかった茶髪に、青い目の女性が笑いながら辺りを小走りしていた。
「なんだこいつ!ヤバすぎるだろ!」
「ちょっとちょっと!なんて口聞するのさ!女神相手にこんな失礼な人、初めて見たよ!」
頬を膨らませて怒っているが、最後の部分は頭に入ってこなかった。
(……待て、なんで俺、こんなに普通に喋れてる?)
あまりに自然すぎて気づかなかったが、普段の俺じゃありえない量の会話をしている。
「それは簡単だよ!オルフェンは流石に口数が少なすぎるから、私だけには普通に喋られるようにしただけ!」
「おいおい!なんであんた限定なんだよ!その限定外して全員対象にしてくれよ!」
謎に限定してんじゃねえよ!と思ったが、そもそも何でそんな芸当ができるんだ?
「嫌!面白くないもんそれじゃあ!それに私はあんたじゃない、レオナっていう名前があるの!」
「……レオナってあの、女神のレオナ様か?」
「言ってるじゃん!さっきから!」
確かに突然俺をワープさせたり、レオナ様の銅像にそっくりだったり、何故か俺の名前を知っていたり…そもそも俺が普通に話せてることから考えて、嘘じゃなさそうだ。
「色々とすみませんでした」
「分かればよろしい」
○
その後、急にレオナ様が「ピクニックしようよ!」と言い出したので、俺達は木陰でピクニックをすることにした。
「で、なんで俺はここにいるんだ?」
貰ったサンドウィッチをかじりながら聞く。
レオナ様はこちらを見ながら、笑顔でとんでもない事を言った。
「それはね、オルフェンの運命が凄く面白そうだったから、もっと面白くしちゃおうと思って呼んだの!」
やっぱこいつは女神様じゃないんじゃないかな、むしろ邪神に近いと思う。
「邪神じゃないよ!君本当にどうなってるの!?
もうサンドウィッチあげないよ!」
「ごめんなさい、レオナ様は邪神じゃないのでサンドウィッチもっと欲しいです」
このサンドウィッチは美味すぎる。しょうがないね、これは。
「ふふっ!もっと食べなよ!でもね、こんなに友達みたいな感じで接してくれる相手は、オルフェンが初めてだなぁ」
黄昏始めたレオナ様。可哀想だからサンドウィッチ分けてあげるか。
「レオナ様もサンドウィッチ食べる?」
「そもそもそれ私が作ったものだよ!?自分が作ったみたいにしないでよ!オルフェンは本当に面白いね!」
青い目がきらきら光る。
「なあ、俺はどうやったら戻れるんだ?」
そもそも、この場所に出口があるのかも分からない。
「それは簡単!これからオルフェンには色々やって欲しいことがあるんだよ!」
レオナ様が手を叩いた瞬間、体がじわっと熱くなった。
「今君に力をあげたよ!」
満面の笑みで言ってくるが、何故か全く信用できない。
「信用できるから!この力を使うと、相手をビックリさせることができるんだよ!」
「なんか凄そうだな。どう使うんだ、それ?」
「発動のタイミングとか、ビックリさせるレベルは私が決める感じだね!」
「何考えてんだ?コイツ」
ヤベ、心の声がそのまま出た。まあいっか、なんでか分からないけど心読めてるっぽいし。
「またそんな酷いこと言っ……あ、そろそろ時間かも…この後は、アストレア王国で開かれる試験を受けてね!絶対だよ!今日のピクニックはもうお開き!また誘うから!」
レオナ様がそう言った途端、俺の視界は再び真っ暗になった。