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異世界エンジョイ勢は無自覚逆ハーレムを築く  作者: ごん
リズと軟派系第二王子
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87.連携という名の強さ


 部屋は瞬く間に戦場と化した。

 殿下は、組織の女と胸倉を掴み合っている。そして、部屋の中には黒服が十人。


(少し顔が赤いのは……媚薬か。何にしても、最優先は殿下だ)



「〈〈身体強化(アビリティ・アップ)〉〉」



 私は、ゆらっ…と体を揺らしフェイントをかけ、黒服の間を風のように通り抜け――、掴み合う二人と一気に距離を縮める。


 そして、私に襲い掛かろうとした黒服の毒針をグレンが見事に弾くのと同時に、私は殿下を背に庇うような立ち位置で女と刃を交わす。


(…横、右上、左、右下…)


 視線が忙しなく動く。

 何度か「ガギンガギンッ」と打ち合い粘るが、なかなか私の手が空かない。


(…仕方ない)



「アレク!」

「わかってる…〈〈氷の護壁(アイス・ウォール)〉〉ッ」



 その詠唱が唱えられた瞬間、殿下を覆うように氷の壁が出てきた。

 丁度殿下が角に居てくれたので、空間ごと遮断するようないい位置だ。


(よし、これで遠慮なく殺れる)


 私とグレンは、示し合わせたようにアレクの元へと飛んで戻った。



「…合わせて」

「うんッ」「ああ!」

「行くよ――〈〈沼地の呪い(スリップ)〉〉‼」



 黒服と女の足元に、ピンポイントに茶色の魔法陣が出現する。

 そして、すぐさま足元が沼地に変わる。

 回避も出来ないほどの速度だ、一瞬、彼らは足をとられる。

 当然、私達がその隙を見逃すはずもない。



「はあッ!」

「ふッ」



 剣の柄を、深めに腹に突き刺した。

 ごほっと呻き、敵が倒れると、私とグレンで分担し、次の敵を気絶させに行く。


 そして、魔法の効果が切れる時には、残り五人。

 女も先ほど気絶させたので、残るは骨の在りそうな黒服だけだ。


(…でもまあ、骨がありそうって言っても…)


 私は、すっと目を細めて、アレクに重ね掛けしてもらった〈〈身体強化(アビリティ・アップ)〉〉の恩恵を足に乗せ、大きく一歩を踏み出した。


 それは、日本にいたころは考えられないほどの――、そう、例えば雷のような速さだった。

 そして、瞳をギラリと輝かせると、三人の黒服を、まるで流れるように気絶させた。姿勢を低くしたが、狙ったのは腹部だけだというのに、三人は、碌な対策もとれずに気を失った。


 どさっという人が倒れる音がして見てみれば、丁度グレンも二人抜きしたところだった。



「…これで終わりか?」

「…うん、大丈夫。流石に親玉クラスじゃないだろうけど、全員、危なげなく捕らえられたしね」



 私はそう言って、背後を親指で指し示す。

 その先には、アレクによって、いつの間にか縛り上げられた十一人がいた。



「……速過ぎねぇ?」

「君達が、僕の分も奪ったからでしょ?」

「あはは、ごめんね、つい楽しくて」



 ぶすっとしたアレクに、あっけらかんとそう返す。

 こう見えて、アレクは強者との戦闘が好きなタイプなのである。


 そうして和気藹々をしていた時、コンコン、と音が鳴った。

 氷の壁……に閉じ込められている、殿下からだ。


(((あ。忘れてた)))


 そんな思いはおくびにも出さず、アレクはすっと魔法を解除した。



「…ふふ、ありがとう。ちょっと忘れられていた気も、しないでもないけど…」

「どういたしまして」



 後半の部分はまるっと無視してそう言うと、「相変わらずだなぁ」と殿下に言われた。



「ごめんね?レディに任せきりにはしたくなかったんだけど…」

「いえ。逆に、大人しく守られていて頂いて、助かりました」

「うーんなんかちょっと嫌だ…」



 微妙そうな表情をしている殿下と、そんな殿下に憐れみの視線を向けている少年二人。

 そんな空気を、んんっと咳払いをして切り替えた。



「とりあえず、殿下。依頼者がいる以上、また何か仕掛けてくるでしょう。それまで、ここでお休みに…」



 なられて下さい、と告げようとした時、一際大きい地響きが起こった。

 バランスを少し崩したところを、グレンに支えられる。



「今の地響きは……?」

「…パーティ会場で、何かあったみたいだね。急いで向かおうか」

「…。…まあ、私達の傍に居てもらった方が安心ですからね。では、行きましょうか」



 そうして、私達はパーティ会場へと急いだ。



 ♦ ♦ ♦ ♦ ♦



「…これは…っ」



 私達四人は、揃って上を見上げた。

 それもそのはず。

 なぜか、パーティ会場に、大きな魔物がいたのだから。


(誰かが召喚したの…⁉)


 しかし、その魔物の種類を理解した途端、更なる絶望感に襲われる。


 空間に満ち満ちる圧倒的な魔力と、床を壊すほどの破壊的な咆哮。

 逃げ惑う人々を背景にした、ここにいるはずのない、その巨大な生物は――



「…ジャイアント・リザード…?」



 S+3の、最上位クラスの魔物だった。

気づけば、ヴィンセント編もかなりの長編に…!

そろそろ飽きてきた、なんて声もあるかもしれませんが、

ここまで読んでくださったあなたと、最後まで一緒に走り切れたら嬉しいです!

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