表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界エンジョイ勢は無自覚逆ハーレムを築く  作者: ごん
リズと軟派系第二王子
74/146

65.軟派系王子様


 いつぞやのキラキラしいパーティ会場で、私はイツメンとキャッキャウフフと会話に花を咲かせていた。


 華美なだけでなんの面白味もないと思っていたパーティだが、最近は友達が増えてきたので、思いの外楽しい場所になりつつある。勿論、情報収集など課せられるタスクはあるものの、それが終われば遊び放題だ。


 それに、高い位の家なので、安易にあちらから声をかけられることもなく非常に快適。おまけに美味しいお料理も付いてくるので、煩わしい視線さえなければ完璧だ。


 ……ああ…、あと、王家への挨拶に行かなければ。


 家族に声をかけられたので、渋々イツメンの元を離れ、ウンザリしながら列に並ぶ。今回のパーティは、両親と兄同伴だ。位が高い家から挨拶をするので、私達の順番はすぐに回ってきた。

 いつも通り、若々しい国王夫妻と、輝かんばかりの第一王子殿下に迎えられる。

 …いや、違う。色々と違った。


(あれは……エルフの耳⁉)


 第一王子殿下の耳が、エルフっぽい長い耳に変化していた。前までは確かに人間の耳だったのだが…。確か、半エルフは十四~十六歳くらいに耳が変化すると聞いたことがある。きっとそれだろう。


(こ、こんなところでお目にかかれるとは…!あれ?てことは……)


 さりげなく、王妃殿下の耳元を窺う。すると……


(え…エルフ耳ー‼今まで長い髪に隠れていて見えなかったけど、エルフだったのか…‼異世界エンジョイ勢としたことが…何てこと……ッ)


 くっとショックに内心打ち震える。その間に、私の家族は挨拶を始めていた。私も口をオートで動かしつつ、思考は全く別の場所に行っていた。


(それに…)


 ちらり、ともう一人の少年を見る。

 そして、「第二王子殿下の誕生日であり、デビュタントであるこの目出度い日にお招き頂けたこと…」と社交辞令を述べる父の言葉に反応する。


(そうだった。このパーティ、第二王子殿下の誕生パーティだった)


 変なところで適当な性格が災いしていた。


(それにしても綺麗な子…。きっと攻略キャラなんだろうなー。第一王子殿下もだけど)


 改めて、それはもうじっくりと二人の容姿を観察する。

 第一王子殿下は、風精霊を思わせるエルフで、風のような爽やかな美形だ。王子らしい金髪碧眼で、容姿は完全に光系。金髪碧眼なのに私と被らない印象なのは助かった。

 第二王子殿下は、噂に聞いた通りにヴァンパイア。濡れ羽色の黒髪に血のように赤い目を持つ美形で、容姿は第一王子殿下と対になるような闇系だ。


 第一王子殿下の母親は王妃殿下で、第二王子殿下の母親は側室らしいから、容姿がかけ離れているのもなんとなく納得する。


(…ん?あれ?今、私、何か大事なことをさらっと紹介したような……?)


 うーんと考えた末に、ハッと閃く。


(そうだ!そうじゃんそうじゃん、目の前にリアルヴァンパイアがいるんじゃん‼)


 その途端、第二王子殿下をより食い入るように見た。危険そうで、それでいて少し軽薄そうな雰囲気を醸し出している。私が見ていると気付くと、さりげなくパチリとウインクをしてくるくらいには気障なようだ。

 しかし、違う。私が見たいのは仕草でも顔面でもなく、その牙だ‼


(ヴァンパイアなら例外なく牙があるって聞いた……つまり、その牙を生で拝めるチャンス…‼口…口を開けぇーっ‼)


 呪詛のように何度も何度も唱えていると、挨拶を終えてしまったようだ。目立たないように退散する。未練がましく第二王子殿下を見ていたが、遂に折れて、はあっと短めの溜息を吐くと、今度こそ視線ごと退散した。


 それから家族とは解散した。エリザベスちゃん救出隊(だっけ?)の隊員として何か言いたいことがある様子のお兄様だったが、私がライラの元へ素早く近付くと、諦めたように肩を落として去っていった。それについて話し合うのは、定期集会だけでいいのである。


(それにしても、フレデリック第一王子殿下と、ヴィンセント第二王子殿下かー…)


 こんな私でも、王子二人の名前は覚えているものだ。


(いつか、あの耳と牙だけでも観察させてほしいなぁ……)


 イツメンで固まり、貰ったノンアルのシャンパンを揺らしながら、ぼうっと私はそんなことを考えていた。近寄ってくる影と波乱に、気付かずに。

年齢についての情報を変更しました(2025/8/17)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ