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異世界エンジョイ勢は無自覚逆ハーレムを築く  作者: ごん
リズと軟派系第二王子
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64.可愛い二人のお仕置き


 私は今、人生の山場にいた。

 片腕にレオ、片腕にライラ。まさに両手に花状態。

 しかし同時に、一番の苦境にも立たされていた。なぜなら…



「…本当にこれ着るの…?」



 えげつないほどのファッションショーをさせられていたからである。

 気分はもう着せ替え人形だ。しかし、二人は当然というように頷いた。


 もうお分かりかもしれないが、今私達は貴族街の服屋さんに訪れている。地雷系ファッションやゴシック系、和服っぽいものやあざとさMAXのものなど、多種多様なものを取り揃えていることで有名なお店だ。



「…えぇ…だって、こ~れは……」



 そして今私が着せられそうになっているのは、ゆるふわ系の可愛い服だ。完全に着る人を選ぶデザインである。しかも、この後は地雷系とゴシックが待ち構えているのだ。もうこれで切り上げたい。


 しかし、私の願いは当然のように受け入れられない。



「だって、あなたが悪いのよ?何も教えてくれなかったんだから」

「ね~。ずっと色々な騒ぎを起こしまくってたのに、何度言ってもダメだったし。例えば、前から振り返るとー」

「レオナード様奪還に少数で突っ込んで…」

「狩猟大会で危険な魔物と戦ったり」

「グレン様と散々二人でイチャつきながら稽古をしていたらしいし……それからも、そんなに大事件ってほどじゃないけど色々な問題を起こしてたじゃない」



 二人の笑顔の圧に、私はひっと後ずさる。けれど、試着室に入っていたこともあり、すぐに背中が壁についた。



「だから、お仕置きしなきゃ……ね?」

「抵抗しちゃダメだよ?姉様。まあ、抵抗しても連行するけど♪」



 それだけ聞いたら鼻血ブーする自信があるのに……と考えながら、渋々私は着せ替え人形に成り果てた。


 シャッとカーテンを閉められると、私は再びじっくりとゆるふわ系の服を眺める。リボンの数がえげつなく、フリルとレースの数も異常。それなのにデザインは整っているのは流石だが、着こなせる気はしなかった。


(うぅ……恥ずかしいぃ……)


 しかし、約束は約束だ。着替え終えた私は、腹を決めてシャッとカーテンを開けた。


(どうせ見るのは二人とアンナくらいだし)


 ――そう考えたのが甘かったのだろう。


 私がカーテンを開けると、こちらを見ていたのは三人だけではなく、なんと、こちらが見える位置にいる全ての人がこちらを見ていたのだ。



「……っ⁉」



 完全に動揺し、シャッとカーテンを閉め直す。



「あーもう無理‼」

「えー⁉どうして姉様、もっと見せてよ!せっかく可愛いのに…」

「そうよ。超絶美少女がゆるふわ系の服を着ると聞いて興味津々の野次馬が、勝手に覗いていたのは不服だけど」



 そう言われても、恥ずかしいものは恥ずかしい。あと今は全てフォローに聞こえるからやめてほしい。そんな私の思いを感じ取ったのか、「…仕方ないわね」というライラの声が聞こえた。



「じゃあ、その服は脱いでいいから、今度はこっちを着てみなさいよ」



 そうして試着室に侵入してきたのは、地雷系の服だった。

 順番待ちをしていたとはいえ、これは酷い。同じぐらい着られないのに…。



「……」



 しかし私もまた、着なければ終わらないことがわかっていたため、またもや渋々試着した。


(ま、まださっきよりはマシ…かな?)


 そう考えて、鏡に映る自分をチラッと見る。しかし爆速で目を逸らした。


(思いっきりダメなやつだった。あー、記憶消したーい)


 次いで、(これを見せるなんて……)と絶望する。しかし、足掻けるだけ足掻いてみようと、一つの作戦を思いついた。


(そうだ!シャッシャッ、で、秒で開け閉めすればいいんだ‼よし――行け!)


 シャッ



「あ!姉様――」



 シャッ



「……」

「よし次‼」

「…ま、いいわ。貴方も目に焼き付けたわよね?」

「まー…バッチリ覚えてるからいいけど……」

「何で……?今、0.3秒くらいだったよね……??」



 一瞬だったよね今?と、そう思いつつ、私はシャッシャ戦法で最後までやり遂げたのだった。



 ♦ ♦ ♦ ♦ ♦



 私は服屋から出ると、再び両腕をとられながら、先ほどのことを思い出していた。勿論、あの黒歴史のファッションショーのことではない。着替え中に周囲から聞こえてきた情報のことだ。



『…ねぇ、第二王子様の噂、聞いた?』

『あのヴァンパイアの…?』


『そうそう。最近すごいらしいわよ。政治で貢献してるーとか何とかで…。あの第一王子様よりも才能があるらしいの』


『えっ!あの完璧と名高い第一王子様よりも…?』

『冷遇されているってことだったけど、所詮は噂だったのかしらね。だって、政治のことを勉強するにはいろいろと必要じゃない?』


『ああ…。そうね。でもなら安心だわ』

『流石に、自分より幼い子が辛い目に遭っていると聞くのは応えるものね~』



 そのご婦人達は、おほほほと笑いながら店をあとにしていた。

 私も、そのヴァンパイアだという第二王子に興味があったから丁度良かった。


(それにしても、政治の才能と冷遇……か)


 私は、ぼんやりと、まだ見ぬ第二王子へと想いを馳せるのだった。

年齢とライラの口調を修正しました(2025/8/17)

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