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異世界エンジョイ勢は無自覚逆ハーレムを築く  作者: ごん
リズと兄貴肌・騎士団長子息
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48.狩猟大会当日、そして微甘アクシデント


 参加者は事前に報告。そして、時間制限は今日一杯。鐘の音が鳴り響いたら、即開始。

 そんなルールで長年行われ、人々に親しまれてきた狩猟大会。

 その大会の会場に、レオナードにエスコートされるリズの姿が見えた。



「おお!あれは……」

「本当に参加なさるのね…」



 しかし当の本人は、どこかそわそわとして落ち着かない。



「エスコートがレオくんなんて……殺す気⁉」

「何言ってるの…?」



 はぁ~と溜息を吐いたレオナードが「いい加減慣れてよ。そうじゃないと、もっとくっつきたいのに倒れちゃうでしょ?」と言うと、リズは本当にふら~っと倒れ始めてしまった。流石に慌てた表情になったレオは、倒れる義姉をそっと支えた小さな影を見て、げっと眉を顰めた。



「…全く、危なっかしいったらないね」

「……あ……、アレク……」



 アレクシスは、銀髪の髪を、透き通った青の髪飾りでまとめていた。後ろで結んでいるからか、いつもよりもシュッとして見える。そして相も変わらず令嬢からの人気も秋波もどちらも尽きない。

 


「…わあ、ありがとう!アレクシス様!ボクの代わりに受け止めて、それどころかお姫様抱っこまでしてくれて」

「当然。君の手に渡ったらリズが可哀そうだしね」

「なんで?ボク……嫌われるようなこと、しちゃった?」

「………君は”義弟”なのかと思ったら、そうじゃないような顔して隣にいるからでしょ」

「え?何のこと?ボク、姉様の義弟だよ?」



 きゅるるんとしたレオナードに怯まず、いつも通りバシバシ言葉をぶつけていくアレクシス。

 二人の間にバチバチッ…と火花が散った瞬間、「あ、あのぉ~…」という声が聞こえてきた。



「え~と…お話中申し訳ないのですが…そ、そろそろ下ろして頂けませんでしょう…か……?」



 そこには、珍しく照れたリズがいた。



「……えっ」

「ねっ、姉様⁉」



 つられて照れるアレクシスと、その様子を見て、すかさずバッとアレクの元からリズを奪うレオナード。それでも尚衝撃が抜けきらず硬直するアレクシスを置いて、レオナードはリズをなるべく引き離そうとお姫様抱っこしたまま早歩きをした。



「……っ」



 顔面を手で覆っているリズを見て、レオナードの機嫌が急降下する。いつまでも照れを引き摺っていると考えたからに他ならない。…そして、レオナードの小悪魔の部分が顔を出す。



「ねぇ……姉様。そんなにアイツがいいの?ボクじゃダメ?」

「ふぁっ」



 耳元で囁くと、リズは更に顔を真っ赤にした。レオナードの気分が急上昇した。レオナードも存外単純である。



「いやっ、あの!だから下ろして‼」

「ん~…もう、しょうがないなぁ」



 渋々といった様子でリズを解放するレオナード。するとその途端、リズが逃げた。



「あっ⁉ちょっと姉様‼」

「ややややっぱりこんな人前で私がお姫様抱っこされるなんて無理ー‼‼‼」



 当然、リズの猛ダッシュに追いつけるわけもなく、レオナードはその場にぽつんと一人残されたのだった。



 ♦ ♦ ♦ ♦ ♦



「はあ、はあ、はあ……っ」



 汗を拭う。狩猟大会直前に、とんでもなく本気の走りをしてしまった。(少なくともこんな予定ではなかった…‼)と思いつつ髪をかき上げる。


(というか…あの二人には無いのか⁉羞恥心というものが…‼隅の方に居たとはいえ、そしてアクシデントとはいえ!人は居た!確実に‼)


 うう~…と呻きながら蹲る。毎度のことながら、こういうのには弱いリズであった。


 その時、かさっと近くの茂みから音がした。ここは森の中だ、整備されているとはいえ、魔物や獣の類かと思って瞬時に気を張りナイフを構えた。が、そこにいたのは魔物でも獣でもなく、今日の対決相手、グレンだった。



「悪い。驚かせたな」

「あ、ああ……。いえ、こちらこそすみません」



 ナイフを懐にしまう。すると、グレンが隣に来て、一緒にしゃがんだ。



「こんなところで一体何してたんだ?」

「……ちょっと、黒歴史の清算を」

「ははっ。確かに、ここは黒歴史の清算には良さそうだよな」



 遠い目になった私の頭をぽんぽんと撫でてくれる。何となく感じていたが、グレンは兄貴肌らしい。あと、この年で黒歴史を深掘らないでいてくれるその気遣いからも、気遣いができる人なんだろうなというのを察せられた。



「そういえば、前から気になってたことがあるんだけどさ。なんでいまだに俺には敬語なんだ?親しい人ってカテゴリーに入ってなくても、普通に、俺の方が身分が低いんだし、敬語を使う必要ないだろ?」

「ああ……」



 そう言われて、私は少し考え込む。


 本当は、親しい人というカテゴリーに入っていないから、ただ単に距離を保つための小技として使っていただけだった。『家族や親友』か『赤の他人』か、極端に言ってしまえばそういうカテゴライズだと思っていい。『赤の他人』までいかなくとも、ただ単に顔見知り、程度とか…グレンはそこに入る。


 どう答えたものか……と笑顔で悩んでいると、グレンが「そういえば」と言った。強引に話題を変えてくれるつもりらしい。



「今日、一つだけお願いがあるんだよ」

「お願い?」

「そう。…この前言ってた対決のことなんだけどさ…あれ、秘密にしてくれねぇか?」

「えっ?秘密に?」

「ああ。満足いくだけの魔物が捕まったら…そうだな、丁度旗がある中央に集合ってことでどうだ?」



 そりゃまたどうして……と思って、つい聞き返そうとした。

 でも、さっき深く追求して来なかった彼に救われたのを思い出して口を噤む。「〇〇だからさ」と理由を付けそうな彼が付けないということは、きっと聞かれたくないことだし、それに、早めに借りを返しておく必要もある。

 だから私は、何も気付いていないような笑顔で了承した。



「決まりだな。今日はよろしく」

「こちらこそ。いい勝負にしましょう」



 どちらからともなく手を差し出し握手をする。

 その瞬間、狩猟大会開始の鐘が鳴り響いた。

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