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異世界エンジョイ勢は無自覚逆ハーレムを築く  作者: ごん
リズと兄貴肌・騎士団長子息
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47.親方!空からグリフォンが!


 空からグリフォンが降ってきた。



「は?」



 ドーン!という音を立てて、それは俺の目の前に落ちてきた。

 …俺、グレン・デイヴィスの人生で、初めて魔物が空から降ってきた瞬間だった。



 ♦ ♦ ♦ ♦ ♦



「あれっ?お客様?」



 黒色の生地に、金色の装飾が映える戦闘服。それを纏った金髪碧眼の少女は、高さが結構ある魔物の上からひょいと飛び降りて、軽々と着地してみせた。そして、流れるような動作でカーテシーをする。その動きは、あまりに綺麗だった。



「初めまして。私はエリザベス・レイナーといいます」



 惚れ惚れとするような所作の美しさ、そして表情。これが公爵令嬢か……と衝撃を受ける。



「…俺はグレン・デイヴィス。よろしくな」



 握手を求めて手を差し出すと、レイナー公爵令嬢はニコリとしてすぐに応えてくれた。


(シスがあんだけ言うからよほどの問題児なのかと思ったが、普通に滅茶苦茶いい子じゃねぇか)


 貴族によくある驕ったところは全くない。爵位が俺より上だからと偉ぶることもない。先ほど間違えて敬語を使わなかったことも、あえて咎められるようなことはなかった。



「私のことはリズと呼んでください。口調もぜひそのままで」

「じゃあ遠慮なく。あと、俺のこともグレンでいい。敬語も勿論いらないぞ?」

「わかりました。グレン様」

「いやガッツリ敬語だし…」



 呆れたようにそう言うと、くすくすと上品にリズは笑った。

 そんな時、ふと視線を感じてシスの方に目を向けると、今までに見たこともないような顔をしていた。なぜか俺はキッと睨まれているし、リズに対しては胡乱気な視線を向けている。



(…どうした)

(誰この人)


(本当にどうした?)

(……こんな常識人、僕は知らない…‼社交界に出た時ですらもっと破天荒なのに……っ)


(あー…。まあ…初対面なんだし、猫の一匹や二匹被るだろ)

(僕との初対面は全然違った……っていうか君、なんで鼻の下伸ばしてるわけ…??)


(はぁ?伸ばしてねぇけど…)

(嘘。さっき、間違いなく見惚れてた)


(所作も性格も綺麗なら、そりゃ当然だろ)

(は…っ⁉きれ――)



 アイコンタクトでやり取りを繰り広げる俺達に、リズは小首を傾げた。



「…聞いていた通り、本当に仲が宜しいのですね」

「これでも一応幼馴染だからな。…ところで、そのグリフォンはどうするんだ?」

「?あ、この子ですか」



 リズは後ろを振り返り、ダウンしているグリフォンを見た。



「ご存知かもしれませんが、私は冒険者ですので、解体業者へ持って行き、その後素材をそこで売り払おうと思います。爪や牙は武器用に取っておこうかと……」

「リズ嬢が冒険者だっていうのは本当だったのか⁉やっぱり凄いな。それに、この爪や牙も、きっといい武器になる」

「はい、私もそう思います」

「ところで、冒険者には冒険者カードがあるんだよな?よければ見せてもらえないか?」

「持ち歩いていますので、ぜひどうぞ」



 戦闘服の胸ポケットから取り出されたそれは、ダイヤモンドのような美しい水色をしていた。

 そして、それがキラリと光った瞬間見えたランクは……。



「……S?」

「はい、実はこれでもSランク冒険者をやらせて頂いています」



 冒険者のランクは、F、E、D、C、B、A、S、という順に高くなっていく。まあつまり、リズは現時点で一番高い冒険者のランクを手に入れているということだ。

 

 そういえば、今更だが、グリフォン討伐の依頼は、Aランク以上でなければ受けられない。つまり、目の前に証拠があるのだ。くったりいっているグリフォンが。



「…やっぱり只者じゃないよなぁ」

「ん?何か仰いましたか?」

「いや、何でもない」



 シスの友人は、今のところ、同世代の化け物しかいない。第一王子殿下と俺がその代表的な例だろうが、この令嬢も、やはりというか例にもれなかったようだ。



「…そうだ。なあ、リズ嬢。よければ俺と、勝負しないか?」



 にっと悪戯に笑うと、きょとんとした様子で「勝負?」と問い返される。



「そう、勝負。どんな勝負でもいいから、一度戦ってみたかったんだよ」

「……なるほど」



 少し考え込むような素振りを見せてから、「ふふっ」と口角を上げた。



「その話、お受けします。私もちょうどそう思っていましたから」

「よし。決まりだな。それで、肝心の勝負内容はどうする?」

「私に任せて下さると。なら……、そうですね。一か月後にある狩猟大会、そこで、より強い魔物を狩れた方が勝ち。これでどうですか?」



 それを聞いて、シスと一緒に驚いた。

 だがその後、シスはキッとリズ嬢を睨み、俺はぷはっと吹き出した。



「…今度こそ、ご両親が心労で倒れるよ」

「……うまく……説得します」

「そう言う割には遠い目になってないか…?」

「…大丈夫です。せっかくの勝負、気持ちよくケリをつけたいので」



 晴れやかな顔をして豪胆なことを言っているあたり、やはり普通の令嬢ではないらしかった。しかも、青色の瞳の向こうには、めらめらと燃える闘志が見えた。



「じゃあ、よろしくな、リズ嬢」

「こちらこそ。お相手よろしくお願いします」



 こうして、狩猟大会でのリズ嬢との勝負が決定した。

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