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異世界エンジョイ勢は無自覚逆ハーレムを築く  作者: ごん
リズと小悪魔公爵令息
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45.情報を整理しましょう(キリッ)


 厳正な空気に包まれるのは、レイナー公爵邸の一室。

 そこには、厳めしい顔をしたお父様とお母様、騎士団長と執事長と、そして私がいた。長机には、人数分の資料が、それぞれの席の近くに置かれている。



「では会議を始める。まず、此度の襲撃と誘拐についてだが、改めて状況を整理しようと思う」



 そうして、その部屋の全員がお父様の話に耳を傾けた。



 ♦ ♦ ♦ ♦ ♦



 …まず初めに、リュカが通算六十三回もの襲撃に遭った。

 毎晩、それも約二か月間襲撃され続け、うちと言えども使用人達に疲労がたまり、不安を感じざるを得なかった。


 そこで一斉に仕留め、速度重視で元の配置へ戻る…という作戦を決行したな。しかし敵の狙いは、執拗に襲い続けたリュカではなく、レオナードだった。リュカへ差し向けられたのが二人なのに対し、レオナードの時は二十五名、しかも相当な手練れが五人もいたということからもわかるだろう。


 作戦は失敗し、リュカを守る代わりにレオナードを攫われた。

 ……ああ、いや、お前達を責めているわけではないよ。エリザベス、それに()()()()騎士団長。

 ただ単にそういう事実だというだけだ。


 では、進めるぞ。

 そうして、してやられた我々は、レオナード奪還作戦を練った。魔力の残滓から転移場所を特定し、我々も少数精鋭部隊を送り込み、その次に、特別部隊を編成し、即刻敵陣へ向かわせた。

 が、特別部隊が到着した頃には決着がついていた、ということだったか。見事奪還に成功し、敵も捕らえることができた。文句なしの結果だ。


 そして全ての部隊を引き上げ、捕らえた敵を地下牢に入れた後、諜報部隊と尋問官を使い、色々なことを探らせた。

 まず初めに、尋問の結果だが…。これは芳しくなかったそうだ。狙いも、少数精鋭部隊からの証言からしか判断できていない。レオナードを手に入れ、”聖印”と呼ばれる焼き印を付け、”あの方”とやらに捧げるつもりだというところまでだ。


 どうしてレオナードを手に入れる必要があったのか、などは吐く見込みがないらしい。優秀な尋問官だが、何より敵の口が異常なほど固いということだ。まあ、これは宗教関係者にはよくある現象だが。


 しかし、諜報部隊からは有益な情報が得られた。「ナムニョアル」と何回も唱えていた、ということだったな。その「ナムニョアル」という言葉だが、どうやら、隣国のアルヴェル帝国の「リムダ教」でよく唱えるものらしい。


 つまり、この件にはアルヴェル帝国が関係しており、明らかに敵はリムダ教の関係者。いや、教徒といってもいいだろう。…エリザベス、そう急に殺気立つな。クロノスが可哀そうだろう。


 …それで、話を戻すが、そのリムダ教の神は二人いるらしい。とても珍しいことだが。

 一人は、浄化の神ヴォルテ。もう一人は、魅了の神アエロデ。

 神への捧げもの、とレオナードのことを言うからには、どちらかの神が関与していることは間違いない。勿論神は想像の産物だから、正しくは、敬虔な信徒がことを動かしているのだろうが…。


 ともかく、尋問や諜報部隊から得られた情報はこれのみだ。今も調べさせてはいるが、元々アルヴェル帝国は情報規制が厳しい秘密国家だ、なかなか探るのは難しい。新しい情報も、悔しいが、何か起こるまでは得られないだろう。こちらからアルヴェル帝国に仕掛けるのも論外だ。


 よって、これが今回の事件の……。…どうした、エリザベス。

 ……ああ、そうだったな。もう一つ報告があった。


 他言無用で頼むが……、レオナードは、何らかの力を秘めている可能性が高い。エリザベスが敵と交戦している際に、光の膜、いわゆる結界のようなもので、敵の攻撃が弾かれた、とのことだ。その直前にレオナードの声も聞こえたから、あれはレオナードがやったのではないかと。


 それについての調査結果も、この場で明かしてしまうことにしよう。

 結果から言うと、レオナードは「聖人」である可能性が非常に高い。


 皆も既に知っていることと思うが、結界を作り出せるのは「聖女」か「聖人」で、聖女や聖人は、聖魔法を扱える者の総称だ。もし本当にレオナードが結界を作り出したのなら、ほぼ確定だろう。


 また、レオナードを教会に連れて行き、聖魔法感知器で、聖魔法を持っているかどうかを調べさせた。聖魔法感知器は、正しい結果が出る確率が約七割だと言われているが、確かにレオナードは「聖魔法所持者」と感知された。


 よって、あの結界はレオナードが張ったものでほぼ間違いないと思われる。咄嗟のことで本人はよく覚えていないとのことだったが、今後のためにも、レオナードには聖人の家庭教師を付けることを打診する予定だ。


 …どうした、オリヴァー。

 ……ああ……。確かに、オリヴァーの言う通り、聖魔法教育には聖法学園に入れるのが一番だ。

 だが、それを言ったところで、本人も娘も、一瞬も悩むことなく一刀両断するだろう?

 まあ、レオナードにはどちらも提示して選ばせるから問題ない。


 では、他に事件のことで確認しておきたいことがある者はいるか?…よし、いないな。

 それでは、これにて会議を終了する。皆、事件の後始末がまだ残っていて忙しいだろう。十分に休息を取りつつ仕事をするように。

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