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異世界エンジョイ勢は無自覚逆ハーレムを築く  作者: ごん
ブラコンの実力育成期
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20.スイーツ&スウィートな展開


「次はここ!今王都で話題のカフェなんだって。確か、ライラがここのスイーツを食べてみたいって言ってたよね?」

「…!…まぁ…そんなことも…あったような気もするわ」



 さらに私の腕を掴む力が強まったライラを見るに、どうやら私が覚えていたことが嬉しかったらしい。

 キツイ印象を受ける吊り目も、上目遣いをされてしまうと可愛いの一言しかなかった。

 しかしこれ以上は話題に触れるだけでも尊死しそうなので、敢えてスルーし、お店の方に視線を戻す。



「ここのカフェ、雰囲気良いよね!落ち着いてるけどオシャレで」



 私の精神年齢は大人なのでしっくりくるが、傍から見ると、何というか、かなり微笑ましいことになっている。

 九歳そこらの子供達がちょっと背伸びして大人っぽいカフェに来た、というような、はじめてのおつかいに似たものを感じるのだ。


(アレクでさえも可愛く見える…。いや元から可愛いは可愛いんだけど、なんかこう…ほのぼのするっていうか?)



「……リズ、その顔ムカつく」

「えぇ~?どういう顔?」

「生温い顔」



 結構図星である。



「だって、なんか微笑ましいっていうか、みんなが可愛いっていうか…」

「むぅ…。姉様、ライラ様はともかく、ボクたちに可愛いはどうかと思うよ?」

「だって可愛いんだからしょうがないよ。ね~?」



 いつもの調子で頬をつんつんすると、「ねえさま!」と少しムッとしたような口調で返される。



「…ボクだって、そんなに年離れてませんよ?アレクシス様に至っては同い年じゃないですか」

「んー、まあそうなんだけど、私から見たら、みんな子供だよ。だってまだほっぺたぷにぷにしてるし」

「「…」」

「まだまだ手も足も短いし?」

「「……」」

「おまけに揶揄ったらすぐに顔真っ赤にしちゃうし」

「「………」」



 将来仕返しされると知らない幸せな私は、彼らを揶揄う楽しさだけを存分に味わっていた。

 だからだろう、二人からの恨みがましいような悔しさの滲む視線を全く相手にしていなかった。



「ま、精々頑張りたまえよ少年」

「…言ったね?」



 負けず嫌いのアレクの氷の瞳に、炎が灯る。

 レオも負けずに「…姉様を虜に…」と呟いていた。嬉しいけど既に虜になっているので無効だと思う。



「はいはい。あ、来たよ」



 このお店は注文から何まで予約制なので、予めこちらの方で全て準備していたのだ。

 そのため、現地で注文することなく、ほぼ最速で食べることが出来る。

 ちなみにみんなの注文だが…。


 私はボリュームたっぷりのパンケーキとカフェオレ。

 パンケーキは、ベリーソースとチョコレートソースと生クリームがかかっていて美味しそうだし、カフェオレも甘すぎない程度に調整してくれるだろうこと間違い無し。


 レオは私と同じのがいいと可愛いことを言って、本当に同じものを頼んだ。相変わらずの小動物感にキュン死しそうだった。


 ライラは苺のパフェだ。しかも特大サイズなのでえげつない量ある。そして飲み物もメロンソーダ。甘味×甘味の組み合わせだが…、ライラの瞳がこれ以上ないほど輝いているので大丈夫だろう。


 アレクは標準サイズのチョコパフェとチョコマフィン、それからチョコシェイクを注文していた。甘党第二号で尚且つ全てチョコ。取り敢えず、アレクが大のチョコ好きだということは判明した。この世界にバレンタインがあったら必ずあげようと心に誓う。


 最後にぷよ丸だが、サイダーを十本注文してくれと言われたので素直にそうした。ぷよ丸のカラーであり尚且つしゅわしゅわ感もちょっと似ている両者(?)だし、どんな可愛い絵面になるのか楽しみで仕方がなかった。


 全員の注文が神業レベルの速さで届くと、私達は揃って食べ始める。

 やはり、みんなの食事の所作は、貴族だけあって見惚れてしまうほど美しかった。気安く会話しているから忘れてしまうけれど、みんな貴族なんだよなぁと感慨深く思ってしまう。



『ん~おいひい~』

「ほんとに?良かったね」

『うん!りず大好き~』

「可愛いわぁ。やっぱりサイダーとぷよ丸が映えるわ。ああ、イ〇スタ映えするだろうな、絶対……」



 親友がこの場にいたら発狂して連写しまくりそうな絵面に、思わず苦笑する。

 次に、早々にパフェに手をつけていたライラが声を上げた。



「んっ…⁉リズ様、この苺のパフェ、絶品よ!」

「あははっ。もう、ライラったら、本当に子供みたいに…。…ちょっとだけ動かないでね」



 私は、ほっぺたに生クリームをつけているライラに苦笑しつつ、人差し指で生クリームを拭う。少し心配だったが、一回で取りきれたようだ。



「「「⁉」」」

「……はい、取れた。もう、ライラってばヒロインみたいなドジするんだから~」

「~~~~っ⁉そっ…、そそそそうね⁉ええと、その…っ。…精進…するわ」

「ふふっ、なにそれ?別にいいよ。可愛いし」

「…可愛、……ま、受け取っておいてあげる」

「はいは~い♪」



 どうやら、ライラが私のことを揶揄えるようになるまで、あと百億年はかかりそうだ。

 ツンデレ美少女から栄養補給を済ませた私は、キラーンと目を光らせ、次の獲物をロックオンする。



「……あれ?レオくんもなんかついてない?」

「コホッ⁉ね、ねえさ…っ、ごほっ」



 変なところに入って噎せてしまったようで、二の句が継げない様子のレオ。でもこういうのは、小さい頃しか出来ない揶揄い方なのだ。

 お互い十八とかになってしまうと、揶揄い半分では出来なくなってしまう。それが貴族社会に生きる者の宿命だ。

 だから私は、小さい頃にたっぷりみんなの照れ顔を摂取しておくのである。



「…ボクはいいよ、姉様」

「え~?そう?うーん、じゃあチョコホイップついてるアレクくん?」

「……なに」



(お?こやつもしや…、気付いててわざと取っていないな?)



「そんなに私に取って欲しいの?」

「ゴッホ⁉コホッッ、ンンっ…んなわけ、ないでしょ…ッ⁉」

「え~?そ~ぉ?じゃあ特別に取ってあげるかぁ」

「……特別に、って。他の二人にもしてたでしょ」


「え?だって、一応二人は同性の友達と弟だよ?でもアレクは友達とはいえ異性でしょ?」

「いせい…異性って…子供でしょ、僕ら?」

「うん。だから、こういうのは小さい頃しか気軽に出来ないから、今のうちにたっくさん揶揄っておきたいなーって思って!名案でしょ?」


「……確かに迷案だね」

「ちょおっとぉ?なんかメイの字が違う気がするんですけど~」



 私はそう言いつつ、サラッとアレクの口に付いたホイップクリームをライラと同じように拭い取る。すると、アレクはすぐ私とは反対をふいっと向いてしまった。

 クーデレのデレが出た瞬間…、弟キャラ程ではないが痺れるものがあったのは確かだ。


(確かに翼が推すのも分かるかも)


 翼の最推しはアレクだと言っていた。そういう視点でアレクを見てみると、また違った気持ちになる。



「…食べ辛い」

「まあまあ、そう言わずに。こっちも一応デレを脳内カメラに収めないといけないんでね」

「よく分からないけど犯罪者臭がすることだけは分かった」

「扱いが酷い。訴えてやる」

「間違いなく僕が勝訴するけどね」



 そう言われてしまってはぐうの音も出ない。仕方なくみんなを揶揄うのを中断し、パンケーキに手をつける。


(ん…!ふわふわで美味し~。でもまあ、転生直後から思ってはいたけど、日本と比べるとどうしても甘さが足りないなぁ)


 私は、異世界転生を夢見る親友と役割分担をしながらチートすることを約束していたので、割と前世知識はある方だ。

 基本的に、私はレシピ担当、翼は物作り担当だ。そのため、結構なんでも作れる。勿論、名店のパンケーキの作り方だって粗方網羅している。


(今まで異世界エンジョイしてたけど、たまにはこの世界にチート知識もたらしてみようかな?…いや、何かの取引するときにでも使お。そんなにホイホイ提供するつもりはないしね)


 他店の味調査をするシェフのようにしっかりと味わい嚥下すると、ナイフとフォークを置き、今度はカフェオレに口をつける。

 甘さよりも苦みが若干強い印象で渋みもあるが、まあまあ好みの味だったため美味しく頂けた。


(しかもここ、眺めも良いんだよね~。夜に来たらかなりロマンチックな雰囲気に変わりそう)


 ちらっと横目で窓の外を見ると、城下の街並みが一望出来た。城も少し遠くにあるから、一枚の絵画のようになっている。

 通って来たばかりの道や、あの人面フルーツの店などが目に入り、思わず頬を緩ませた。うん、これがデートプランなら完璧だったな。

 そう思いながらにんまりとしていると、隣からちょいちょいと服の袖を引かれる。何気なく振り返ってみると……、そこには、破壊力百点満点の強気美少女の照れ顔があった。


(ごこうが…、後光がさしている)


 固まる私に気付かないまま、もじもじしつつ、それでいて気丈さをキープしながら照れているライラ。

 ライラだからこその仕草に、観客全員が胸キュンしたであろうことは想像に難くない。



「…その、リズ様。今日は…このお店に連れてきてくれたこと、感謝するわ」



(それどう考えても彼氏とのデート終わりに言うヤツ)



「……どういたしまして。さて…じゃあ次は、アレクが喜びそうなお店、行っちゃおっか!」



 珍しく照れが伝染したのか顔が熱くなった私は、みんなの視線から逃れるように、慌てて席を立つのだった。

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