表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界エンジョイ勢は無自覚逆ハーレムを築く  作者: ごん
王位継承争い編 /学園編
146/147

135.疫病終息RTA




「治せるって……」

「古くから知られてる通り、ヴァンパイアの『吸血』は、酩酊感を与え、相手を短時間、半ヴァンパイア状態にする。でもそれは、別のヴァンパイアの吸血で中和出来る」


「…でも、それって、一人一人に吸血をしに行かなきゃならないってことなんじゃ……。病気はもう爆発的に広がってるし、国中のヴァンパイアを掻き集めても、感染スピードの方が速いよね。それに、病人への吸血は、ヴァンパイア側、病人側の両方が危険に晒されるって、前、本で読んだことあるし…」


「……ふふ、大丈夫だよ、リズ。そこは私が、両者に光魔法をかけて、病魔に罹る前に浄化するさ」

「兄上……」

「私も、折角夢のごろごろスローライフを叶えられるチャンスだからね。出し惜しみはしてられないよ」

「殿下まで……」



 私は、『リズはどうする?』というような二人の視線を受けて俯いた。

 私が止めても、二人は多分、本当にやりに行ってしまう。それでもし、二人を失うことにでもなったら……。



「極刑過ぎる…」

「…ん?」



(ってことは、もう私も、全力でやるしかないか…)


 私はぐっと腹を括ると、「…私もやる」と二人に言った。



「ただし、二人にそんな危険な真似は絶対させない」

「リズ、一瞬で矛盾したけど…」

「大丈夫。ところで、ヴァンパイアの吸血の成分って、抽出できる?」

「抽出?そうだね、出来なくはないかな…」

「液体状にも出来る?」

「?……そう、だね」

「じゃあ、私、『注射器』を作るから。二人は、吸血の成分を抽出して、液体状にしてから浄化して」



 私がそう言うと、二人は「チューシャキ?」というような顔で固まった。


 実は。この世界、魔法に結構頼っているせいで、異世界あるあるらしく、医学があまり進歩していないようなのだ。そのため、『注射器』もまだ生まれていなかった。


 私は、二人に注射器の説明をすると、二人共、「それなら確かに」「でも流石に時間がなさすぎる」と言った。



「それに、リズ。もし作れなかったら、作った分も時間も無駄になるんだ。新しいものを一日で開発するなんて、とてもじゃないけど無謀だよ」



 殿下に、軽く突き放すようにそう言われる。

 だが、構わない。



「では、この会議室にアレクを呼んで、魔法でサポートをしてもらいながら、これから目の前で作ります。それで証明しますから」

「…これから、目の前で?」

「はい。目の前で」



 じっと見つめてきたので、私も無言でじっと見返す。

 それから少し空いた後、ふっと二人が笑った。



「まあ……そう、だね。いいよ。今は派閥を気にしている場合でもないし。では、早速こちらから、エヴァンス公爵家に連絡するよ」

「お!流石殿下、ありがとうございます!」



 それから五分後。

 連絡も魔法、移動も魔法(転移魔法)だったので、恐ろしいスピードでアレクが到着した。



「……君、僕のことを何だと思ってるの?こんな時間にいきなり呼び出すなんて……」



 見てみると、八時を回っていた。

 ……でも、何となく嬉しそうだ。私も、久しぶりにアレクとゆっくり話せそうで、そりゃあもう嬉しいけれど。


 殿下とも、久しぶりに真面に顔を合わせられたのか、とても嬉しそうだった。 

 ヴィンセントとは、まあ何かの取引があったのだろう、僅かに距離があるようだった。しかし、ふるふるとヴィンセントが首を振ると、不思議そうな顔をしつつもどこかほっとしていた。


 そんなアレクを早速借り、作業スペースへ案内しつつ軽口を叩く。



「そういえば、不満そうに『こんな時間にいきなり呼び出すなんて~』とか言う割には、随分お早いご到着だったよね?転移魔法まで使ってくれちゃって」

「……今から転移魔法で帰ろうか?」

「待って?お願いだから魔法陣を起動しないで⁉」


「はあ……。それで?僕は何をすればいいの?」

「『チューシャキ』を作ればいいの」

「『チューシャキ』?」


「そう!形自体は私がイメージするから、魔力を安定させておいて欲しくて。あと、仕上げで、性能を魔法で補強するから。ほら、私ってそういうの、ほんのちょっとだけ苦手だからさ」


「ちょっと?かなりの間違いでしょ」

「まあまあ、そんなことはどうでもいいから。よーし、じゃあ気合入れて行くよーっ!」

「…はあ、全く…さっさとやるよ」



 そうして、私達の疫病終息RTAは始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
リズーーーーがんばれーーーーー((  ̄- ̄)) 今回も面白いお話ありがとうございます(・ω・ゞ-☆ では、お体にお気をつけください( ・д・)最近温度が低いのでねー( *´・ω)/(;д; )ネー …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ