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異世界エンジョイ勢は無自覚逆ハーレムを築く  作者: ごん
王位継承争い編 /学園編
144/146

133.最愛の親友達へ! ~完全復活を捧げます


「……、その」



(……こういうとき、何て言えばいいのか……。『あの時味方できなくてごめん』?いや今更感強いかも。じゃあ『私なりに解決策を探してて、それがこれで』?うーん言い訳染みてるかな…。でも、何か言わなきゃ、何でもよくはないけどとりあえず…)



「…、その……、殿下」

「!」



 久しぶりに、声がちょっぴり震えていた。



「私…なりに。道を、模索しました。勿論最後に決めるのは二人ですが、でも……手を取り合える道があるなら、私はそうして欲しい、というか。優柔不断で……、だから――」

「――ごめん」

「……。…えっ?」



 目の前に、長身の壁がなくなって、代わりに背景の壁が見えた。

 勿論、頭ごと、私の目線のずっとずっと下にあった。



「え、ちょ、とりあえず自分の身分わかってます⁉」

「その上で、だよ。そう……、オレ、()()に甘えてばっかりだった。ジェラルドの時も、助けられるばかり。今だって、……余裕がなくなったからって。本当に格好悪いことを……。君に、あんなことを言うなんて。あれから、言ってしまってからずっと後悔してた。本当にごめん、リズ」



 真摯的な言葉と、軽薄さや甘さの欠片もない真剣な表情だった。



「えっ、いいですよ」

「反射的にそんなこと言っちゃダメだよ。言っておくけど、リズはただ一方的に、理不尽に責められただけ。なんなら罰してくれた方が、オレ的には助かるくらいなんだけどね?……まあ、『殿下』呼びになってるとか、敬語になってるとか、そういうとこはちゃーんと罰になってるけど……」

「……すみません、最後なんて言いました?」

「いいや、これは暫くこのままで……。それより、今ならオレを扱き使えるよ?何がいい?何でもする。リズに限ってはないと思うけど、言うなら奴隷堕ちしてもいい」

「一回ぐらいでそんな大袈裟な⁉」



 ガチさに思わずドン引きする。

 そして、目もマジだったのでさらに引いた。



「奴隷堕ちは流石に言い過ぎですよ…。それに、若い頃なんて、いくらでも失敗するものですって」

「若い頃?まあ、仮にそうだとしても、オレにはハリボテでも立場があるし、言葉には気を付けなきゃいけない立場にあるから。その一回が命取りになる。それをよくわかっていてやったんだから、始末に負えないってことだよ」



 アハハと軽く笑っているが、ヴィンセントの精神疲労も相当のものだったはず。

 壮絶な虐めに、王宮でも味方が居らず、気苦労ばかりという現実。更に、自分の野望のためとはいえ、王位継承者争いに参加して、多忙に多忙を重ねた超過酷なスケジューリングをしていただろうし……。


 …まあ、そう言っても引かないんだろうけど。



「では、本当にお願いを聞いて下さるんですね」

「正しくは罰を、ね。ただ、何でも受ける。これは本当」

「わかりました」



 罰。

 ヴィンセントがこれ以上、この件で自分を責めないような罰……。



「……複数でも良いのですよね?」

「……勿論」



 嫌な予感がする……と書いてあるヴィンセントの顔を眺めつつ、私は口を開いた。



「…学園のグランド、百周」

「……」



 深く息を吸い込む音が聞こえた。

 が、この世の終わりのような顔をしつつも、ギブはしない。流石、私の好きな(like)人。

 お言葉に甘えてというか、沈黙に甘えてじゃんじゃん言っていく。



「素振り百回。習得魔法それぞれ十回。冒険者登録をして、週末は私と一緒に治療所で無償活動…」

「リズといっしょに……」

「あとは、殿下との仲直りと、協力をすること。それから……」

「それから……?」

「私との仲直り。これで、全部。で、どうですか?」



 そろそろと頭を上げた殿下と、目と目が合った。



「……いいの?」

「何がですか?」

「君との仲直りも、君と一緒の無償活動も、協力の件も、全く罰じゃないけど……。…まあ罰も、そこそこあるけど」

「いいんですよ。私がそうしたいので。勝者が敗者にさせたいことをさせるのは、お決まりみたいなものですから。それに、私が欲しかったのは、いつも通り、親友とくだらないことを言い合える、楽しい学園生活ですしね」



 そう言ってニッコリ笑うと、嬉しいような、戸惑い気味のような、そんな殿下が見えた。



「……本当に?」

「本当です」

「じゃあ、敬語も殿下呼びもナシで……?」

「……。あ、望むなら未来永劫そうしますけど」

「全然望まない。寧ろ却下だよーありがとうリズ受け取るね」

「なんか結構早口ですね…」



 恐るべきスピードに慄くと、殿下はほっとしたような笑顔を浮かべた。



「リズ、オレの名前は?」

「ヴィンセント」

「じゃあ、敬語も…」

「ん、やめるね」

「……はぁ、良かった……。一時は本当、どうなるかと……」

「ヴィンセント……。軟派キャラはどこ行った……」

「実は少しだけ作ってるから。リズがタイプって言うなら、いつでも戻すよ?」

「いや全然作ってないよね?結構そのまんまだったけど…?」



 こうして、私とヴィンセントは和解した。

 あとは、フレデリック殿下とヴィンセント、そして私とみんなで協力し、貴族に一泡吹かせるだけだ。



「…よし!日常学園編に戻ったという栄養で、私、完全復活!早速バリバリ働いちゃうぞ~‼」

「ふふっ、それはオレも心強いな。二人三脚で、頑張ろ~ね、リズ」

「うん!じゃあ早速、腐った貴族どもを闇討ち、じゃなかった、暗殺しに行こ!全ては親友達の為に‼」

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― 新着の感想 ―
『暗殺』のところで吹き出しそうになりました。 ギリギリで耐えました。ほめてほめて( 〃▽〃) 二人三脚って....ヴィー....それは、遠回しにいって結婚の申し込みかプロポーズか告白なのかい....…
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