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異世界エンジョイ勢は無自覚逆ハーレムを築く  作者: ごん
王位継承争い編 /学園編
142/146

131.VS殿下


 ほら早く、と玩具を強請る子供のように、殿下はこちらを見つめている。

 なんというか、期待の眼差しが痛い……。


(そもそも、私、探偵じゃないんだけどなあ。某謎解きアニメで、一度も当てられたことがないくらいだし……)


 私は、ううむと考え込む。


(レオと見つけたヒントは……)


 孤児院に支援している。大貴族を味方に付けている。

 これらから、明らかに王位へは前向きだということ。


 殿下は内気な時代があって、ある日を境に変わったこと。

 そしてその幼いころには、毎日のように暗殺者に付け狙われていたこと。


 ……それくらい。


(え?これから何を推理しろと?)



「……楽しみにしているからね」

「……やめて下さい」



 私は、再び思考の海に戻る。

 粗探しをするのと似たような感覚で、私は、何か見落としがないかを隈なく調べる。そこで、ふと頭に疑問が湧いてきた。



「……あの、殿下。恐れながら、殿下は小さい頃、恐ろしい目によく遭っていたと聞きました。そんな目に遭ったのに、ある意味で危険な王位から遠ざかるのではなく、近付こうとしているんですか?怖くは……ないのですか」

「怖い……、か」



 顔を上げて、殿下を見る。

 すると、とても楽しそうな笑みを浮かべた殿下が目に入った。



「怖いよ」

「怖いんですか?」

「君の言った通り、何度も何度も……、本当に何度も、危ない目に遭わされたからね。この、王太子に最も近く、尊い身分のおかげで――」

「……」



 つい目を伏せると、気にしないでというように、殿下はからっと笑う。



「だから、怖いよ。そして、私は王位に近付こうとしてるわけじゃない」

「あんなに精力的に、方々へ働きかけているのに?」

「そう。それに、弟には恩もある。闇雲に争いたいわけではなくてね」

「恩……?それと、争いたいわけでもない…」



 私が訝しむと、手を組んで、肘をテーブルの上に乗せ、その組んだ手の甲に顎を乗せた。



「そこまで来たら、もう答えは見えていると思うよ。君なら、すぐに当てられる」

「私ならって……。ちょっと買いかぶり過ぎじゃないですか、殿下?私、推理は得意じゃないんです。でも、そうですね…」



 ちょっとだけ考える。

 ほぼ確信している答えを、もう一度確かめ、勇気を出すため時間を使う。

 そして、ぐっと覚悟を決めて、殿下を真正面から見た。



「…もしかすると、殿下は、王位から()()()()()()()()()んですか?」

「……理由は?」

「私なら、到底考えられませんけど……。いや本当、考えられない作戦ですけど――」



 そうして、私は考えを語り始める。



 ♦ ♦ ♦ ♦ ♦



 本当に、ぱっと思い付いたものですからね。


 まず、殿下が、「もう暗殺者に襲われたくない」、「こういうところとは無縁のところで生きたい」、そう思っていると仮定します。


 ただ、殿下はエルフという、尊ばれる種族の生まれ。

 正妃様からお生まれになり、側室様はご逝去されている……。


 誰がどう考えても、次期王に相応しいのは、殿下です。

 いえ、相応しいというよりは……、条件的に、殿下しかいない、なんて考えられているかも。


 …おまけに、悲しいですが、ヴィンセントはヴァンパイア。

 ヴァンパイアという種族だけで、ヴィンセントを忌避する人は沢山います。

 それに、彼は政治に秀でているでしょう?だから、「王ではなく宰相でもいいはずだ」と考える層も、一定数いるのです。


 もし仮に、殿下が王をヴィンセントに譲りたくても、そう簡単にはできない状況になっている……。

 だからこそ、殿下は、これから私に取引を持ち掛けるつもりなんです。


 そう、私とヴィンセントと一緒に、ヴィンセントを王位に就かせるための。

 殿下が強ければ強いほど、殿下を倒し、王位に就いたヴィンセントは”強い”とされる。そうすれば治世もある程度安定するでしょうし、あとはヴィンセントの持つ手腕で十分どうにかなる。


 まあ、その先殿下がどうしたいのかはわかりませんが……。

 ここまで手厚いフォローをしたいと考えるほど、ヴィンセントに恩があるなら、きっと、少しは手伝っちゃうんでしょうね。



 ……それで、どうでしょうか、私の推理は。

 これから一緒に悪だくみをする、そういうことで、合っていますか…?



 ♦ ♦ ♦ ♦ ♦



「…はり」

「殿下…?」


「やはり……、私の目に、狂いはなかった……!ああ、大正解だよ、リズ。よく見抜いてくれた…」

「えっ、と、え?」



 急にガシッと手を掴まれる。



「じゃあ、これからは心置きなく、私の……悠々自適な隠居ライフのために、…じゃなかったね。そう、弟の輝かしい未来の為に、尽力して欲しい。頼めるかい?」

「…は、はい。が、頑張ります……。……ところで、悠々自適な隠居ライフって」

「では、早速作戦を練ろう。とびきり効果的なものを作って、貴族の鼻を明かしてやろうか」



 そうして、若干変になってきた殿下との交渉が成立した。

 予想外の結末で、対殿下は終わりを迎えたのであった……。

伏線とか推理系が苦手な作者です。

でも入れたいと思ってしまう、そういうときってありませんか?

ですから……ちょっと下手だったかもしれませんが、ここまで見て下さりありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
うおぉぉう.....隠居ライフ....か.... こうして殿下ルートが閉ざされたのであった.....(本音はいやですが....このキャラ好きなので....)(どうか殿下ルートが閉ざされないようお願いし…
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