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異世界エンジョイ勢は無自覚逆ハーレムを築く  作者: ごん
王位継承争い編 /学園編
138/145

【閑話9】すべてはあくびから始まった


 私はエリザベス・レイナー。

 親しい人からはリズと呼ばれている、普通のハイスぺ貴族令嬢だ。

 今は、学園にいて、授業の合間の休憩時間を謳歌している。いつも通り、親友達との会話を楽しみながら。


 ……しかし、そんな私でも、非常に困っていることがある。


 それは――、”あくび”である。



 ”あくび”。

 眠いときや疲れているときに出る生理現象であり、人類なら誰もが経験しただろうもの。


 だが、貴族令嬢たるもの、あくびを人前では決して見せてはいけない。「ほわあ~っ……」と大きく口を開けようものなら、私の家庭教師がすっ飛んできて、家でみっちりしごかれるだろう。

 ちなみに、私の家庭教師が厳しいのではなく、この世界ではそれが普通なのである。


 ――よって!

 私は、眠気からくるあくびに耐えるのに必死だった。

 しかし、その時は突然やってくる。



 ふっ……と急に波に襲われる。

 瞼が重くなり、「あ、くる」と感じた。

 咄嗟に声も息も制限し、ぱっと口元を手で隠す。


 そして……



「…ふわあぁぁぁ……っ」



 とても、と~っても気持ちのいい、あくびをした。


(あぁ~幸せ~もう寝た~~~い……)


 ちなみに私は昨夜、午前二時まで恋愛小説を読むために起きていた。


(ん~、それにしても、なんともいえない背徳感と脱力感……)


 滅多に得られない至福を噛みしめる。

 すると、「……ん?」というグレンの声が聞こえた。



「リズ、お前……」

「なに?」

「……泣いてる、のか?」

「…………へっ?」



 小声で囁かれたはずの言葉。

 しかし、なぜか、傍に居た親友達の耳や、それだけじゃない、クラスメイト達の耳も、一回りか二回りくらい大きくなったように見えた。



「え……?美南、なんで泣いて……」

「姉様、誰かにイヤなことされたの?誰?教えて、誰?」



(え?あ、そっか……貴族令嬢があくびするなんて、全然ないから、私が涙目で焦ってるのか!)


 勘違いに気付く私。

 それからの行動は素早かったと自分でも思う。

 速攻、私は誤解を解こうと口を開く。



「え、いや違くて!これはその、なんていうか……」



(……うーん。聞き耳を立てられてるし、あくびっていうのも……。でも、誤解を解けない方が困る!)


 一瞬の迷いが生じる。

 けれどすぐに立て直し、「そ、そのね、これは実は、私のあく――」まで出た。


 そう、そこまでは問題なく出たのだ。

 しかし、その「び」から先は、瞳にハイライトがないヴィンセントとアレクに遮られてしまった。



「――リズが庇ってる?じゃあ、犯人は、僕らか家族の誰かだね。ヴィンセント殿下、心当たりは?」

「えー。なんでオレ?恋煩いでなら泣かせるかもしれないけど、オレがそれ以外でリズを泣かせるなんてあると思う?」

「それを言えば、全員対象外になるでしょ」

「……じゃあ、確実にここに居るんだ、美南を泣かせたクソ野郎が。……とりあえず、大人しく自首しよう?そうじゃないと、一人残らずぶっ飛ばすよ?」

「…ね~、それじゃ出てこないでしょ~?もっとこう、殺すよ♡って感じで可愛く言わないと。ねっ、姉様♪」


「……あ、あ……」


「大丈夫だよ、美南。誰か話せる?」

「酷でしょ。実際、口を割らないし」


「え、ええっとぉ……そのぉ……」



(………まさか、この涙目の原因があくびだなんて…言えない……ッ‼‼‼)


 ただ、親友達が言い争っているのも見ていられない。

 結果。私は、間でオロオロしていた。

 無能である。


 ちなみに、全てを看破しているフレデリック殿下は、終始おかしそうに笑っていた。本当に楽しそうだったというところが腹立たしいし、わかっていた上でこっちに丸投げしたところも腹立たしいので、私は最後、「私が99%悪い口喧嘩を、フレデリック殿下とした」ということで終結させた。


 そして、殿下に非難轟々の面々を宥め……。

 無事、この件は解決(?)したのであった。

 めでたし、めでたし。

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― 新着の感想 ―
あっ、あっ、あくっびっ......(笑いをこらえています) ふっふふふふふあっはははは!!!! ふぅーーー失礼。 あくびひとつでみんなが騒ぐって面白いですね。 前回までシリアス展開だったので、ギャッ…
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