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異世界エンジョイ勢は無自覚逆ハーレムを築く  作者: ごん
王位継承争い編 /学園編
136/141

127.遂に来た頼み事


「はー、今日も学園かー。憂鬱…」

「頑張れ美南。今日は、美南の好きな剣術の授業もあるんだし」

「それに、姉様の好きな魔法の授業もあるよ?」

「それはそうだけど……」



 三人で、教室に続く廊下をとぼとぼ歩く。



「でも、なんていうか、どんどん過激になってきてるよね」



 翼の言うことに、レオと一緒にコクリと頷く。



「黒板消しみたいなのなら、まだよかったのかもしれないけど…。ヴィンセント様への嫌がらせがエスカレートしていって、最近は……」

「最近は?」

「……暴力を振るわれてる、とかいう噂もあるよ」

「え……。どうして、ヴィンセントは魔法の成績だっていいはずなのに」

「迂闊に使ったら、それだけで言いがかりをつけられるような状況、ってことなんじゃないかな」



 私と翼は、揃って目を丸くした。

 そして、沈痛な面持ちで、三人一緒に教室に入る。

 適当に周囲に挨拶を返しながら、もうみんなすっかりバラバラになってしまった席を見る。そして、二人と、一番奥の角の席に座った。



 ♦ ♦ ♦ ♦ ♦



 そしてそれは、突然起こる。

 学園から帰宅したあとの出来事だった。自室に戻り、やっと腰を落ち着けた時。

 屋敷中が、俄かに騒がしくなった。



「……どうしたんだろう」

「見て参ります」



 異様な空気を察したのか、戦闘力では一番のラピスが見に行った。

 そして、思いの外すぐに帰ってくる。



「どうだった?」



 何の気なしに訊いてみると、ラピスは、少し目を伏せて言った。



「ヴィンセント第二王子殿下が、お越しになられました。リズお嬢様とのお茶会を所望されています」

「……!私とのお茶会を?」



 この騒動が始まって以来。

 私とヴィンセントは、視線が絡む時はあるものの、微妙な距離感を保っていた。だからこそ、何かあったのかと思ってしまう。


(中立派だから、派手には動けないけど……。……悪いけど、何か聞かれたら、押しかけられたと言うくらいは出来る。それで、我が家は断れなかったんだって。まあ、そう聞かれる前に会話を終わらすけどね)



「……わかった。ガゼボに案内して」

「……はい。こちらです、リズお嬢様」



 アンナに言われ、立ち上がる。

 緊張の面持ちで、私はガゼボへと向かった。



 ♦ ♦ ♦ ♦ ♦



「!…こうやって話すのは久しぶりだね、リズ」



 美しい色や装飾の、我が家のガゼボ。

 そこに、絵本から飛び出してきたような王子様がいた。


 相変わらず絵になるなと思いながら、「そうだね」と無難に返して、正面の椅子に座った。



「嬉しいよ。最近は、心が病みそうになることもあってさ。いつもいつも、リズの顔を思い出してた」

「あははっ。そう言う割には、全然変わってないけどね」



 それから、暫くは世間話をした。

 世間話、というか……、普通の、友人との会話だ。何が美味しかったとか、こんな嫌なことがあったとか。そうしていると、気分が段々解れてきたし、長らく話していなかった分を、少し取り戻せたような気がした。


 しかし、その時は着々と近付いてくる。

 カチャリ、とヴィンセントがカップを置いた時、真剣な眼差しを受けて、私はピンと背筋を伸ばした。――始まる、と感じた。



「ところで、リズ。今日はね、一つ頼み事があって来たんだ」



 来た。



「……それって、どういう頼み事?」



 ヴィンセントが、にこっと笑う。



「それはね――」



 そして、言った。



「――君と、君の家に、オレ側に付いて欲しいって頼み事」

「……」



 私の笑顔も、膝の上で固く握った拳も、板挟みにされた状態に、ふるふると震えていた。

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