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異世界エンジョイ勢は無自覚逆ハーレムを築く  作者: ごん
王位継承争い編 /学園編
132/139

123.解決のカギを握るモノ


「うん?もしかして、どこか具合が悪いのかな。顔が真っ青だよ」



 そして、自然な流れで私の額に――ぺたり、と額を()()()()()



「あ、あああああ……ッ⁉」

「呻いてるし、やっぱり保健室に行こうか。おいで、エリザベス嬢」



 するりと手首を掴まれる。

 言いようのない圧迫感と途方もない甘さに、思考がぱったり停止した。


 …その時、周囲のざわめきが耳に入った。



『…なにあれ…』

『婚約者?』

『内定してるとか…』

『でも、いくらエリザベス様とはいえ…』

『ねぇ……?』



 顔を見合わせている気配を感じる。

 背後からだ。詳細に気配を感じ取れるのは、日頃の訓練の賜物……だが。


(……はぁ……、怖…)


 いつぞやのことを思い出す。

 実は、前世でも少しだけ、虐めは経験しているのだ。

 だからこそ、その怖さがわかるし、ヴィンセントの怖さも少しはわかったつもりでいる。

 が……。



「…姉様にまで飛び火させるなんて…このクソ王子」

「抑えてレオ」

「でも美南、このままじゃ外堀埋められるよ?」

「うん、わかってる…」



 目の前でのコソコソ話を認める度量といい、殿下はかなり余裕の様子だ。

 それに、殿下は保健室へエスコートするためにか手を差し出したままなので、私達にヘイトが集まっている。女子生徒なんて、こちらを射殺さんばかりだ。


 私は、殿下の後ろ側にいるヴィンセントを見た。彼は、真剣な面持ちでこちらを伺っていた。それだけ把握すると、すうっと私は息を吸い込み、珍しく震えだしそうな足を叱咤し、その場に立つ。



「……殿下」

「ん?」

「そのお心遣い、有難く受け取らせて頂きます」



 私が力強く宣言すると、殿下側の女子生徒は渋々といった様子で道を開け、レオや翼は「姉様っ!」「美南⁉」と口を揃える。


(…大丈夫だよ、二人共。私だって、怯んだけど、何も考えてないわけじゃない)


 間違っても、術中になど嵌まってやらない。

 そう意思を固くして、私は殿下の手に、自分の手をそっと乗せた。



 ♦ ♦ ♦ ♦ ♦



 保健室への道中には、誰も居なかった。

 もうHRと授業が始まる時間なので、通っても教師くらいのもの。


 私は、自教室から離れたのを確認すると、「もう大丈夫です」と手を離そうとした。しかし、強い力でぎゅっと、強く強く固定される。

 それなのに、白々しい態度で殿下は笑った。



「朝から、大変なことに巻き込んでしまったね」

「そうですね。今後は是非ともやめて頂きたいです」

「ああ、出来るだけ気を付けるよ。…それにしても、驚いたな」



 何かを思い出すような仕草。

 芝居がかっていたので、面白がっているのだとすぐわかった。

 なので、敢えて乗ってやった。



「…私が付いてきたことに、ですか?」

「…ふふ、うん。だって、中立派の君にとって、私と関わるのはあまりにもメリットがないからね。一体どんな考えなのかな」

「殿下ならわかるでしょう?焦らし過ぎではないですか」



 私が少し睨みつつ言うと、「はは、それもそうか」とあっさり殿下は降参した。



「まあつまり、君は、私の真意を確かめたかったんだろう?ヴィンセントを見せしめのようにした、今朝のことの」

「やっぱりわかってるじゃないですか。それで、どうなんです?どのようなお考えがあって、あのようならしくないことをされたのですか?」



 つっけんどんに言うと、それすらも楽しむように殿下は目を細めた。



「何故だと思う?」

「……」



 ところで、殿下はよく『何故だと思う?』と聞いてくる。

 殿下が真意を見抜く眼を持っている分、そして、私に「見抜いて」と言ってきた分、言っているのだとは思うが…。


(正直…、殿下らしくなさ過ぎた)


 非情な一面もあるとは思っていたが、どんな考えがあったとしても、あそこまでやるとはと驚いた。ダイレクトで、手荒だった。


(ヴィンセントに関わることだとは思うけど……)


 じっと殿下を見つめるばかりの私。

 その時、殿下が「…タイムアップだ」と言った。

 ハッとして進行方向を見ると、あと一、二歩先に保健室が。



「ふふ、楽しかったよ、エリザベス嬢。じゃあまたね」

「……それはどうも、さようなら」



 疲れ切った声音で言うと、殿下はくるりと踵を返し、歩いて行く。

 私も、(適当な理由を作って、保健室のお世話になるか……)と一歩踏み出した。

 しかしその時、「ああ、それと」という声が聞こえ、振り返る。


 そうしたら、殿下が顔だけこちらへ向けて、言ってきた。



「――この騒動の解決の鍵は、君が私を見抜けるかどうかが握ってる。くれぐれも、それを忘れずにね」



 「じゃ」とひらりと手を振り、去って行く殿下。

 その背中を、私は愕然とした表情で見送った。

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ごん様は感想の感想?をかいていらっしゃったのですね!! ありがとうございます!!! リズ、がんばれ。リズが頑張らなきゃ、リズが消えるしかなくなっちゃう。 あれ?リズみんなの前から消えそうだな。「私が…
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