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異世界エンジョイ勢は無自覚逆ハーレムを築く  作者: ごん
王位継承争い編 /学園編
128/137

119.終わりが明日に迫る今日


 ……それからも、日常は続いた。


 親友達と受ける授業。


 授業で必ずといってもいいほど寝る翼を起こしたり、レオとの筆談が止まらなくなって、教室中にじとーっとした目で見られたり。二人を甘やかすから、私も合わせて先生に怒られて、その新鮮な感覚に興奮したら、更に怒られてしまったり。


 意外と勉強が得意なんだな…と思っていたグレンが、まさかの全学年一位の猛者で、開始早々メチャメチャモテてしまったり。グレンと、全学年二位のフレデリックがバチバチ火花を散らすところを、ノリノリで野次を飛ばしたり。


 移動の時だって、みんなとアレコレいっぱい話して、学食も、みんなでトレーを持って並び、どれにしようかとたくさん悩んで。下校の時には、みんなでじゃあねと言って別れた。


 ああ、本当に楽しい日々。

 だからこそ、最終日。私は、珍しく涙腺が崩壊しそうになっていた。


 今日は、王家主催の大規模パーティの前日。普通に、特別教室に移動しているところだった。

 私の隣は、いつも人がコロコロ変わるのだが、今日はグレンとアレクだった。この二人とだと、戦闘色強めの話題が多い。今も、少し興奮気味のアレクが、魔法愛を語っていたところだ。



「ドラグノフ・レガロの定理、美しすぎると思うんだよ。どんな人生を歩めばあんな思考回路になるのか…」

「ははっ、相変わらず好きだなあ、レガロ皇帝の魔術定理」



(……集中できない…)



「当然でしょ?魔導士では知らない人は居ない、魔法の祖、魔力を魔法に具現する方法を導いた天才だよ?」

「あー知ってるよ、お前が何十何百と言ってたしな」



(今日限りかも、しれないのに…)



「レガロ皇帝が作ったことで今の僕があるんだから。ね、リズ?」



(……辛い。こんなことなら、明日知らされた方がまだよかった――)



「…リズ?」

「えっ⁉あ、うん。レガロ皇帝が……何だっけ?」



 ふっと意識を引き戻され、少しばくつく心臓を抑えつつ半端な笑顔を浮かべる。

 アレクは訝し気な表情でグレンを見る。本当なら顔を見合わせていただろうグレンは、事を知っているだけに、アレクから視線を逸らしていた。それを見たアレクがちょっと眉を寄せたが、その続きは、後ろからひょっこりと顔を出してきたレオと翼に遮られた。



「美南?なんか今日、変じゃない?どことなく上の空っていうか…」

「そーだよ、姉様。というか、ここ一週間おかしいよね?ボクの顔を見ても、いつものボク大好きが半減してる」

「うんそれはいいと思う」

「え、は?ちょっと喧嘩売ってる?」

「だけど!問題は元気のなさだよ…。美南、何かあった?」



 レオはむす~っとしていたが、それ以上の追求はなかった。

 それよりも、レオに翼、アレクの目が、私への心配を如実に語っていた。

 そこで、気になってチラッとヴィンセントの方を見てみた。すると、彼も、一体どうしたのかというような、子犬のような目で私を見ていた。


(かわいい……じゃなくて!……あれ?ヴィンセントなら、私が落ち込んでいる理由、わかってるはずだよね?)


 内心、困惑する。

 こういう時、もしも()()()()()ヴィンセントなら、落ち着いた表情で、気遣うように私を見ているはずだ。それがわかるくらいには、付き合いは長い。

 ……じゃあ、と、いうことは。


(もしかして――)


 ゾワリ、と毛が逆立った。


(…ヴィンセントは、()()()()()?普段通りだったのも、まさか、()()()()()()()()から…?)


 贔屓、という二文字が頭を過ぎった。

 そして頭の中で展開されるのは、国王陛下か誰かがフレデリック殿下にだけ教え、ヴィンセントには教えていないという最悪の構図。

 一人で勝手に顔を蒼くしていると、ヴィンセントが気遣わし気に私に言った。



「…リズ、大丈夫?オレが保健室まで送ろうか?」

「あっ⁉う、うーん…、だ、大丈夫!ちょっと考え事してただけだから。それより、早く行こ?ホラ、遅れるとまた怒られちゃうし!」

「そうだね…。アレはリズも完全に悪かったけど」

「そうだぞ?レオとビアンカ嬢を甘やかしすぎだ」

「え、え~。個人的にはもっと甘やかしたいくらいなのに」



 なんとか話の流れに乗って、再び楽しい会話に興じる。

 が、私の頭の中は、ある悩みが席巻していた。


 私は、親友が同じくらい好きだ。そもそも、友達にわざわざ順位などは付けない。

 だからこそ、出来るだけ平等にしてあげたい……という思いもある。

 そして、だからこそ――、ヴィンセントに明日のことを教えるべきか、という悩みが渦巻く。


 今から教えても、という気持ちと、今からでも教えた方が、という気持ちがせめぎ合う。

 そうしているうちに、太陽は容赦なく、黙々と沈んでいった――。

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