115.ダメダメ考察はカフェの中で
占い屋から出ること数分。
「……」
超絶、気まずかった。
(…私はどこをどうすれば)
まず、相関図がわからない。
翼とアレクの好きな子が被ったのはわかったけど、グレンとヴィンセントの想い人のことは初耳だった。ただ、時折彼らの間でバチバチと散る火花を見るに……。
(もしかしてコレ…、四人共、同じ人を好きなパターン…?)
どうしよう。万が一にもそれが殿下で、みんなで取り合ってたらどうしよう。
グループ分けとかにもしなったり、そういう”お助け”が役立ちそうな場面で、私がウッカリ二人きりにしたりして、親友達から恨みを買ったらどうしよう…。
私は、生まれて初めて、己の鈍さを呪った。
「…えっと、次はどうする?」
苦し紛れにそう言うと、アレクが食いついてくれた。
「さっきみたいに面白いところがいいんじゃない?」
「…そ、うだね」
うん、確かに面白かったけども。
それ以上に精神的なダメージが大きかったので、一休みしたいのが本音であった。
しかしそこで、助け船が来た。
「…でも、昼も近いしね。どこか、レストランやカフェに入るのはどうだろう?」
殿下だ。
殿下は、知っての通り、人の感情を読むのが上手い。それも、全部筒抜けレベルで。なので、きっと私を本当に助けてくれたのだろう。心の中で密かに感謝をしておいた。
それから、なんだかんだ遊び疲れ(?)ていた全員の承諾を得て、私達は、最近人気のカフェへと入っるのだった。
♦ ♦ ♦ ♦ ♦
「…、……」
私は、コーヒーに口を付ける。
…うん、美味しい。
友人達も、それぞれの注文した品を楽しんでいるようだった。
木の気配がとても強く感じられる店内だからこそ、騒ぎ過ぎた心と体を丁度良く静めてくれる。今の私達に最適な場所だった。
「ふふ、それにしても、あんなにみんなが恋愛してたなんてね~」
先ほどまで感じていた気まずさは霧散し、私は落ち着きを取り戻していた。
「そうだね。まあ、私は知っているけれど」
「そういう意味で、殿下の目はチートですよね…」
「ははっ。誉め言葉として受け取っておくよ」
和やかに会話が進む。
(…うん、良い感じ。さて、じゃあ恋バナでもしちゃおうかな?)
いくらなんでも異性の友達だ。
恋バナは意図的に避けていた私だが、拒否感はなさそうだし、これからは積極的に持ち出していこうかなと思っていた。
(それに、当事者じゃないしね!バチバチはあっても気楽なもんよ!)
と、いうことで、躊躇いなく私は口にする。
「そうそう、翼って誰が好きなの?」
何の気なく聞いてみると、翼がごふうっとなった。多分、飲み物が口内で爆発した。
「こらこら、汚いよー?」
「ごほっ、ごほっ…。いや、絶対いきなりそういう話題を出す美南が悪いよ…」
それに関しては、ちょっとくらいは申し訳ないと思ってる。
せめて、飲み物を飲んでない時にするべきだったなー、ぐらいには。
しれ~と目を泳がせていると、「ハァ…。秘密」とだけ言われた。
「えー?なんでよー。私達、親友じゃん?」
「そういうところで使わない」
「え~」
コロコロと笑う私に、呆れ眼がぶっ刺さる。
「というか、美南って、自分にはそういう話題無いのに、こういう話題好きだよね。前世で幾度となく聞かれたもん」
「だって、憧れてたし……」
強烈なまでの憧れがあった。
何故か、前世の私には、そういう機会が無かったから。
「……ん、まあね。じゃあ、侍女ちゃんでも捕まえて話した方がいいと思うよ。少なくとも、ここに居る人達は口が堅いと思うから」
「そっか……」
…何か、私の知らない通じ合うものがあるのだろう。
みんなも口を開きたくはなさそうだったので、私は大人しく引き下がった。
それからは、ただ他愛のない話をして、静かにカフェで過ごす時間が流れた。
さっきと比べればゆったりとしていたけれど、そんな風に親友達と過ごす時間もまた、私は好きなことに気付いていた。
♦ ♦ ♦ ♦ ♦
カフェから出た私達。
朝から遊んでいたから、今は丁度昼過ぎくらいだ。
「次はどうする?」
「…ああ、それなのだけど、私は良いところを知ってるんだ。行ってみる?」
「えっ、本当に?」
なかなか決まらないだろう、と踏んでいた私は驚いた。
しかし、それを言い出したのが殿下であることから、カフェに居た時に何等かの下調べをしていたのだろうと納得する。ん?カフェに居た時にどうやってって?そりゃあ、自分の影を使ったんだよ。
ということで、私達は異論なく、殿下についていった。
まさか、あんなことになるとは露ほども思わずに――。