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103.ある一冊のノートと未来
――あるところに、一冊のノートがあった。
上質だが、あまりここでは見ないデザインと作り。
部屋は、さっぱりとしているが上品なため、どこか少し浮いて見える。
そしてそのノートには、文字がただ殴り書きされていた。
『異世界転生』
『未プレイ』
だが、ぽつぽつと何年にもわたって書き続けられていた。
『リュカお兄様襲撃』や『グレン様の訓練に付き合う』など、斜線を引いて消されたものもある。
そして、斜線を引かれていないものが、一番奥のページの「十六歳」という大枠に、改めて書き直されていた。
『リュカお兄様と共同研究』
『レオの魔法』
『隣国との問題』
『王族兄弟の共犯者』
『殿下を見抜く』
『強くなる』
ぱっと見、完全に意味がわからないようにされているものも含めて、懇切丁寧に綺麗な文字で綴られている。
そして最後に、それよりも少し大きめの文字で、こうあった。
『春、学園入学』
次回から新章に突入します!




