96.恋とバトルと、デート権?
「……ねぇ、僕も忘れないで欲しいんだけど?」
そんなアレクシスからの衝撃発言に、三者三様のコメントが送られる。
「…あー、薄々勘付いてたが、やっぱりお前もかよ、シス…」
「あはは、君はもう少し気付かないでくれても良かったんだけどなあ」
「ホントホント!一生そのままでも良かったんだけどな~。でも、どうせボクが姉様を貰うし、結果は変わらないけどね!」
「……はあ。全員、気付いてたってこと…」
アレクシスは、遠い目になった。
「そりゃそうだよ。バレバレな純情少年って感じだったよねっ!あーあ、折角揶揄い甲斐あったのに」
「あんまりアレクシス君を虐めちゃいけないよ。彼だって、きっと物凄い努力の果てに自覚したのだろうしね?」
「殿下が一番揶揄ってるよな?」
「あはは。まさか!年下の純情少年達を揶揄うのは楽しいな~とか、そんなことは思ってないよ」
「それ絶対思ってるやつなんだよなぁ」
常識人グレンが、的確にツッコミを入れていく。
そして、終始愉快そうなヴィンセントが、「さて」と会話に区切りを入れる。
どうしたんだという訝し気な目で全員が彼を見つめると、軽い調子で彼は言った。
「そういえば、今流れている、面白い噂は知っている?」
「面白い、噂……?」
「…どうせ、根も葉もない噂でしょ。そんなものを聞いているより、僕はそろそろ別のことを…」
「――リズの、好みの異性の噂」
「「「……‼」」」
一斉に、カチーンと動きが凍る一同(侍女達含む)。
そしてそんな一同に、「それなんだけどね、どうやら――」と、更なる特大爆弾を落とした。
「…強い異性が好みらしいよ?厳密に言えば、自分と高め合える存在がいい、ってさ」
「「「……」」」
まず最初に、レオナードの口角がピクピクとして、顔面蒼白になっていた。
逆に、アレクシスやグレンは、希望の光が差したとでも言うように機嫌が良くなっていた。
それもそのはず。
アレクシスは、リズに僅差だが勝ち続け、同世代の中では最も魔法に精通している、魔導士の金の卵。
そしてグレンもアレクと同様、リズに勝ち続けられ、同世代の中でも群を抜く実力を備えており、次期騎士団長確定かとまで言われている。
((来た……ッ‼))
…そう思ってしまうのもやむなし、というものだ。
逆に…。年の割にはどちらも器用にこなせるが、群を抜いてというほどでもなく、リズとは同じ土俵に立てないだろうレオナードは……、いつの間にか、くずおれていた。
「…姉様…いつの間に、そんな……っ」
…大分ショックだったのだろう。
天使の影は、跡形もなかった。
しかしそこで、ふふっと笑みをこぼしたヴィンセントが言う。
「だからね。どうせ、ここには彼女を恋い慕う者が集まっているのだから……、いっそのこと、ここで一度、実力比べをしてみてはどうだろうと思ったんだ。そして、その者だけに、『誰にも邪魔されることなくリズをデートに誘う権利』……つまり『デート権』を与える。どう?面白そうだと思わない?」
ヴィンセントは、人差し指を口元に当て、片目を綺麗に瞑っている。非常に絵になるが、それは何かを企む策士のそれだった。
……まあ、何はともあれ、それが大乱闘となったわけである。
♦ ♦ ♦ ♦ ♦
そして。
リズは、悶々としている侍女三人をバックに、目をキラキラさせながら戦闘を眺めていた。
(一人ひとり、戦術が違う!可愛い!格好いい!そして私も混ぜてもらいたいっ‼)
レオナードは、器用に攻撃を魔法や剣で相殺しつつ、機を窺う戦闘スタイル。
アレクシスとグレンは、それぞれ魔法と剣で、真っ先に自分のライバルとなりえる互いに攻撃を仕掛けることが多い。
そしてヴィンセントは、血を操って、流れ弾を防ぎつつ、目立たないようにしていた。きっと漁夫の利狙いだ。
衝撃波を受けた直後、0.01秒でそこまで考えたリズは、パッと後ろへ振り向いた。
「私もあそこに混ざりたい‼‼‼」
「「「いけません」」」
当然だった。
「えー⁉なんでよー‼あんなに楽しそうなのに…」
「やはり一度、眼球のお取替えをお勧めします」
「ちょ、ラピス、目が怖い、目が」
完全に鬼軍曹モードだったラピスさんなのであった。
「…それに、もう決着がつきますよ」
「えっ?」
ラピスの言葉で、再びリズが四人の方へと目をやった。
するとそこには、アレクシスの魔法も、グレンの剣も、ヴィンセントの血の攻撃も弾き返したレオナードが立っていた。
【ゆるゆる感想 by作者】
※ちなみに、まだ決着はついてません!笑
そして最近は糖度がどんどん加速しているので……「ここ良かった!」「ここはもうちょっとこうして欲しいな」などあれば、ぜひぜひ感想を送ってくださいね!
それはそうと――。
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