表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/12

心を重ねたその先に

 透の剣とギルバートの魔導がぶつかり合った瞬間、地下空間はまるで別の世界のような光景へと変貌した。


 重力が歪み、時間がねじれ、空間が震える。


「……これが、世界の境界か」


 ギルバートが笑った。


 彼の身体はもう人の姿を保っていない。魔導陣と融合し、巨大な術式の核と化していた。


「君の力が必要なんだ、透。特異点としてではなく、完全なる媒介として!」


「ふざけるな……! 俺は……そんなもののためにここに来たんじゃない!」


 透は踏み込む。


 剣が意思を帯び、輝きが増していく。


「セシリアの世界を壊させない……この場所を、俺は――守る!!」


 


 一方、セシリアとカイは、魔導塔の中層へと急いでいた。


 結界が崩れかけ、空間が裂け始めている中、カイは黙ってセシリアの前を歩く。


「あなたは聞きたいんでしょう、私の気持ちを」


 その言葉に、カイの足が止まる。


「透を愛しています……前世のことなんて、思い出せなくても、彼の手を取りたいって、心が叫ぶの」


「……知っていた」


 静かに、だがはっきりとカイは応えた。


「それでも……私の願いは変わらない。姫が誰を選ぼうと、私は姫を守る。それが、私の役目だ」


「カイ……あなたには、感謝してもしきれない。だから、どうか……」


「いいえ、それ以上は言わないでください」


 カイは振り返り、微笑んだ。


「もし、前世で私があの戦いを止められていたら。もし、姫が透ではなく私を選んでいたら――そう思うこともあります。でも、今の私は今のあなたが好きなんです」


 セシリアの瞳に、涙が浮かぶ。


 言葉にならない想いが、彼女の胸を締めつけた。


「さあ、行きましょう。あなたの想い人が、あなたの未来のために戦っている」


 


 その頃、透の剣はギルバートの術式の核心へと迫っていた。


 だが、ギルバートの魔力は異常だった。


「君はまだ気づいていないようだ。君がこの世界にいる限り、崩壊は止まらない。存在そのものが、因果を乱しているんだ!」


「……じゃあ、俺が消えればいいって言うのか?」


「そうだ。だが、君が自らそれを望むことはない。だから私が導く。理のもとに!」


 ギルバートが魔導を解き放つ。


 全てを消し去る光が、透に迫る――


 その瞬間。


 間に割って入ったのは、セシリアだった。


「やめて!!」


 彼女の詠唱が、空間を覆う。


「私が鍵なら、私がそれを閉じる……あなたは、彼を奪わせない!」


 セシリアの魔力と、透の剣が共鳴する。


 二人の想いが、術式の核心に突き刺さった。


 崩壊の魔力が、断ち切られる。


 ギルバートの絶叫が響く。


「なぜだ……なぜ、また選ばなかった……ッ!!」


「これは、お前の再現じゃない! 俺たちの未来だ!!」


 最後の一閃が、ギルバートの姿を完全に断ち切った。


 


 光が静かに収束し、地下空間に静寂が戻る。


 透とセシリアは、互いの手を強く握り合っていた。


「ありがとう、透……あなたがいてくれて、よかった」


「俺こそ……俺をこの世界に選んでくれて、ありがとう」


 


 だが、その背後で、カイは静かに目を閉じた。


 剣を収め、一言も告げずに、彼はその場を後にした。


 


 終焉は、静かに回避された。


 だが、それぞれの心に残った傷と想いは、消えることはない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ