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人でなしのヴァンパイア  作者: 梨味の林檎
1章 リンディア王国
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魔の森.4

 能力の確認はあらかた済んだ。

 そろそろ方針も決まっただろう、と。話し合いに耳を傾けてみる。


「やっぱり人のいるところに行くのがよくないかな?」


 話の中心人物は帰宅部の剛士からクラス委員長の(はる)委員長になっている。


「とはいえ、さ。どっち行く?って話」


「うーん。手分けして探す?まとまって行動する?どうしようか」


「いやぁ…手分けするのは怖くない?迷子になりそうだし」


「たしかにね、じゃあみんなで動こうか」


「俺がこの木の棒倒すから倒れた方行こうぜー!」


 おー。いい感じに話進んでるじゃん。

 でも木の棒はないだろ。

 え?意外と賛成意見多数?まじで?


「木の棒もいいと思うんだけどさ、こっち行ってみない?」


「伯爵ぅ?なんでそっちなんだよ、風水的にいい方角とか??」


「風水なんか知らないよ。ただ、僕らが目覚めた時にみんなが向いてた方向なんだよね」


 みんなが同じ方向を向いてたなんて当然なんだけどね。

 僕たち全員。例外なく宇宙人のことを見てたんだから。

 宇宙空間と同じ立ち位置で森に転移したなら向いてる方向は一緒になる。


 木に何もないなら向いてた方向に何かあるかもしれない。

 いや、ないだろ。って冷静な考えも浮かぶけど。木の棒よりマシじゃない?マシだよね?


「こっち向いてたっけ?」

「覚えてないよぉ」

「言われてみれば?いや、自信ないけどね?」


 うーん。まぁそっか。覚えてないか…。

 気にしてなければ記憶に残んないだろうし、爺さんが言うには現実逃避気味らしいし?

 したら木の棒でも何でもいいから決めてくれーって感じなんだよな。


「ワシは覚えとるが、こっち向いとったのぅ。どっち行っても変わらんならこっちでよいじゃろ」


 爺さん、ナイスじゃん。

 ぶっちゃけ、この空き地から動けない状況を変えたいってのが本音だけど。

 話し合いが言い合いになって喧嘩になったら目も当てられない。

 堂々巡りになって日が暮れるのも良くない。

 地雷、爆発するよ??


「爺さんも覚えてんのか、すげぇな」

「ならこっちでいいんじゃない?」

「どーする?春ちゃん。」


「うん、私もこっちでいいと思う。逆に反対の人はいる?」


 反対意見が出ることもなく、進むことが決定した。

 人のいる場所、あるといいなぁ。


 16人は歩き出した。

 薄暗い森の中。僕は暗視があるから鮮明に見えるが、暗さでいえばお化け屋敷くらい。

 なんとか見えるけど、ちゃんと暗い。


 なのに、和気あいあいと雑談をしながら森を進んでいく。

 これが爺さんの言ってた異常さ、か。


 僕としてはこれが普通に思える。いや、これがあるべき姿?

 騒いだり、泣いたりしても状況は変わらない。

 なら、騒ぐ必要もないし、泣く必要もない。普段通りにするのが1番。

 僕も現実逃避してるのかな?爺さんに聞いてみるか?


 まぁそんなことよりも、だ。どうしようかな?


 尾行されてる。


 ちょっと前から爺さんが後ろを気にし始めた。

 だからそっちの方に聞き耳を立ててみたら聞こえた。

 16人の後を追うように歩いている1人の足音。

 1人、なのかな?吸血鬼がいる訳だし人外の二足歩行の可能性もあるか。

 でも、二足歩行なのは確実。足音がそうだったから。


 吸血鬼の能力向上は凄まじいの一言に尽きる。

 だって足音が聞こえるんだよ?後方を歩く誰かの足音が。

 能力向上の範囲は身体能力に限らない。視力も聴力も五感全てが文字通り人外の領域に至っている。

 む?五感も身体能力の内か?まぁいい。


 脳の処理能力も向上して、聞こえすぎることが煩わしくもない。

 むしろどこでその音が鳴って、何をして発生した音なのかを考える余裕さえある。


 いやー。能力向上の優秀さが判明するほど日差しによるデバフの大きさが浮き彫りになる。

 なにせ、日差しに当たったら能力向上は停止してしまう。

 その上で能力半減って、人以下じゃない?


 まぁ強力な力の代償なんだろう。

 日差しに当たらなければ聴覚だけで尾行者の動きが丸わかり。

 木の後ろに隠れながら付かず離れずの距離を保ってるね。

 うん。代償があって然るべきかもしれない。


 けどさ。素のスペックで尾行に気づく化け物(爺さん)もいるんだよ?本当に代償いる??

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