魔の森.2
「そういえば伯爵。」
「どうした爺さん」
「教室でみんながパニックになっておるとき、「神秘的」だとか「穴が」どうこう言っておったじゃろ?ありゃどういう意味だったんじゃ?」
うーん。ぶっちゃけ今となってはどうでもいい推測…
だけど木を調べてるだけなのも暇すぎる。だって何もないんだもん。
話したっていい。
暇つぶしついでに爺さんに伝える。
教室の異常事態が空間の固定によるものだったんじゃないか。
その中で動けるのは生物だけ。
固定した意味は。生物だけ動ける意味は。何かを選別しようとしているんじゃないか。
そう考えたとき、ふるいがイメージに浮かんだからこそ「穴が空く」という発言をしたこと。
「まぁ。僕の推測に過ぎないし、合ってたところで「それで?」な話ではあるんだけど。」
「ほー。あの状況でそこまで考えてたんか。やっぱ異常じゃな伯爵は。」
「爺さんにだけは言われたくないわ。」
爺さんは知ってる。僕が人らしくないことを。
爺さんが自身の異常性を吐露したときに僕が話したから。
「じゃが、あの宇宙は何だったんじゃろな。あれが神かもしれんな」
カカカッと笑いながらそんなことを言う。
なんでそうなる?
「いやいや、あれが神なら僕は認めないぞ?」
「む?どうしてじゃ?あれにワシらは救われたじゃろ。」
やっぱ宇宙人が関係すると話がおかしくなる。きっしょいな。
「僕の推測が正しいとは言わない。けど、推測通りなら教室での出来事は宇宙人の仕業だろ。
全ては僕らを異世界に送るため。教室は選別の舞台。次の宇宙はギフトを渡すための中継地点。
何をどう考えたら救われたなんて考えになる?」
「教室での出来事は別の何かによるものかもしれんじゃろ?
それに死ぬ直前のワシらを救ってくれたのは事実じゃろうて。」
「たしかに教室のが宇宙人の仕業とは限らない。けど関係してる可能性は高い。
それに、死ぬ直前?天井に落下したことか?本当に何を言ってんだ、爺さん。
教室の天井は死ぬほどの高さはないだろ。受け身をとれなくても爺さんなら怪我しないだろ。
どうしてそこまで宇宙人の肩をもつ?」
「む?おかしい、のう。どうしてあれがワシらを助けたなんて確信していた?
たしかにあの程度の高低差じゃ死ぬことはないはずじゃ…混乱しておったか?」
「あれが何者だったとしても今の僕らには関係ないよ。正体を特定できるヒントもないし。」
「それも、そうじゃな。伯爵よ。その話、クラスメイトにはするんじゃないぞ。」
「所詮僕の推測にすぎないんだってば。聞かれない限り話さないよ。」
「いいや。聞かれてもダメじゃ。
あれはクラスメイトの精神を保っている要素の一つじゃ。
それが善良なものじゃない。ましてや精神崩壊した原因の可能性があるなんて、特大の地雷じゃぞ?」
「おっけー。死んでも話さないわ。」
めちゃくちゃめんどくさい。繊細過ぎるよ、みんなの精神。
ただ、僕が原因でまた精神崩壊するなんて、そんな責任負いたくない。
「ちなみに。さっきから伯爵は何をしとるんじゃ?木を眺めてうろちょろと」
「あぁ、その宇宙人がいた方向に生えてる木になんかないかなって思って。
まじでなにもないけど。あと、あそこの空き地は眩しすぎるから避難。」
「本当に吸血鬼みたいな体質しとるのぅ。
それに、木に何かあっても見つけるのは至難の業じゃろう。めっちゃ生えとるんじゃからな」
いや、本当にそう。木が多すぎる。
さすがに無理か。飽きてきたし。
「爺さんー!伯爵ー!お前ら何やってんだ?こっち来いよ」
どうやら話し合いに参加しなければいけないらしい。
爺さんから話聞いた後だと行きたくないんだけどー。
「すまんのー!今行くわい」
「行くぞい」と言った爺さんの目は、逃がさないとでも言いたげだった。
……うへぇ。行きますよ。行きますとも。