プロローグ.1
あけましておめでとうございます。
第一作ですー。まぁゆっくりと。ほのぼのと書いていきますー!
僕は。人じゃないかもしれない。
いいや。そう思いたいだけか。
れっきとした人間の両親から生まれた。
その僕は鶏でも豚でも牛でもない。人間だ。人間であるべきだ。
でも、実は人間じゃない。
なんてありえない妄想をいつもしてしまう。
僕は大蒜が嫌い。
あの鼻に残る強すぎる香りが。噛んだ時に弾けるキツさが嫌い。
別に好き嫌いが多いわけじゃないんだよ。
それこそ大蒜以外なら苦手な食材も料理もない。
ピーマンもパクチーも、昆虫食だって嫌いじゃない。
大蒜だけが明確に嫌い。
そして、太陽が苦手。これは、体質が影響してる。
簡単に言えば眼球が弱い。普通の人よりも日差しが眩しいと感じる。
海外の人…というか、瞳の色が薄い人はそう感じやすいらしい。
僕は黒目なのにね。
別に眩しいって感じるだけならどれだけよかったか。
日差しを浴びすぎると眼精疲労になる。
症状は決まって、頭痛、吐き気、倦怠感。
だから太陽が苦手。僕には眩しすぎる。
大蒜と太陽が苦手。
まぁここまで言ったら思いつく存在がいると思う。
世界中で知られる怪物の吸血鬼。
あぁ、ちなみに金属もダメ。
金属アレルギーだから、汗かくと触れていたところが赤くなる。
実は吸血鬼でした。なんてことがあればいいのに。
「いい朝じゃのぅ、伯爵。ワシは眠いぞ」
カッカッカッと快活な笑い声をあげながら話しかけられた。
年寄りのような口調だが、声質は少年のもの。
だって本当の年寄りではないから。
着崩した制服。ブレザーのボタンは全開で、ネクタイはゆるゆる。
眼鏡をしているが、真面目感は皆無。だって丸眼鏡だし。
そもそもコイツは視力を矯正する必要はない。裸眼で1.2以上あるのだから。
つまりただのおしゃれ。
そんな若者らしい見た目でありながら、年寄りの口調の友人。
クラスで愛されるムードメイカー。
口調のインパクトが強すぎるから「爺さん」という愛称で呼ばれている。
まぁ、名前が迅だから掠ってはいる、のかな?
「おはよ、爺さん。どうせゲームのせいで寝不足なんだろ。」
「決めつけはよくないぞ。否定はしないがのぅ。
じゃが!この時間は夜更かししなくても眠いじゃろうて。
6時登校ってイカレとるんか!?」
「人間は6~7時間寝るのがいいんだよ。それを見越して寝るんだよ。
でも、爺さんは人間なのか??人間なら理性あると思うけど…
欲望に負ける理性って本当に理性?」
「人間だから欲望があるんじゃよ!
口ではそう言っても、伯爵も眠いじゃろ?おん?言うてみい」
「眠い。」
「ほれ!やっぱりこの時間は早すぎるんじゃよー!」と爺さんが喚いてる。
ちなみに、僕は伯爵と呼ばれている。
僕の特徴が吸血鬼に似てるから伯爵。名付けの親はコイツ。爺さん。
有名な「吸血鬼ドラキュラ」に登場するドラキュラ“伯爵”が由来らしい。
爺さんの呼び出した伯爵という愛称はクラスに浸透してしまっている。
他学年の人が「伯爵って誰?」って言った時の恥ずかしさは尋常じゃない。
絶対に爺さんを許さない。もう手遅れだけど。他クラスまで浸透してるけど。
果たして蓮夜という本当の名前を覚えてる人はいるんだろうか?
校門で会った爺さんと話しながら教室に向かう。
グラウンドには朝練で来ている運動部がちらほら見える。
夏の暑さは息をひそめて、急に寒くなった秋の朝。
…この寒さは冬だろ。秋なんてなかった。
朝の校舎内は静かで、廊下の電気さえついていない。
まだ時間は6時を少し過ぎたころ。
そりゃあ誰もいるはずがない…のだけど、うちのクラスだけは例外。
2年Bクラスの教室は電気がついていて、声も聞こえる。
「おはようさん。伯爵サマも一緒じゃよー」
爺さんが教室のドアを開けて挨拶をする。
それに応じるように返ってくる「おはよう」の声。
爺さんに続いて僕も教室に入って挨拶する。
「集合時間遅れてるからね?雑用してもらうけど、いいよね?」
「嫌じゃ。たかが数分、こんなのは遅れたに入らんわい。
それに、まだ作業は始まってないじゃろ?
なら今来たところで影響はないはずじゃ!のう、伯爵?」
いや、遅刻は遅刻なんだよ?爺さん…老害化?
でも僕も雑用はやりたくない。
「あー。昨日の作業の続きしたくてさ…できれば雑用は爺さんだけがいいな」
「たしかに伯爵くんはそっちの方がいいか。りょ~かい」
「何を言うとる?!謀ったな、伯爵!」
「雑用がんばれよ、爺さん」
「ワシはやらんからなー!」って騒いでる爺さんは無視でいいや。
「あ、伯爵!お前ドア閉めてくれよー、最後に入ったの伯爵だろ?」
「ん、ごめんごめん」
ドアを閉めてって言ったやつの方がドアに近いんだけどな。
まぁ確かにあけっぱにしたのは僕だ。
6時の教室。2年Bクラスの教室には僕も含めて16人の生徒が集結している。
男子6人。女子10人。
うちのクラスは男女15人ずつの30人。おおよそクラスの半数が集結している。
それだけの人数が集まって、何をしているかと言えば文化祭準備。
本来は放課後にするものだが
「放課後は嫌」という意見がクラスの大部分を占めた。
「なら朝準備すればいいじゃろ」と誰かが言い。反対者は0人。
担任からもOKを貰い、今の状況が生まれている。
あれ?朝やろうって言いだしたのあいつじゃん。
ここにいない14人のうち、8人の男子と2人の女子は朝練。
残りの4人(男子ひとりと女子3人)はサボり。
まぁこの4人が来ないのは承知の上だとも。
男子はそもそも学校にあまり来ない。あれ?文化祭のこと知ってるんだろうか?
女子3人は、なんというか、ギャルというか、不良というか。
「従わないウチらがサイキョー!」みたいな3人だから。
年齢的には中二病は卒業してていいんだけど。高校生だし。
さて、鞄は適当に置いてドア閉めないと。
まだ「雑用はみんなでするのがよかろう!?絆を見せる時じゃ」
とか爺さんは言ってる。
やっぱ老害になってしまったんだ。
(……あれ?)
何か。違和感があった。
いや。違和感にはすぐに気が付いた。でも、意味が分からなくて。
首を回してあたりを見回す。
「何だ、これ。」
「伯爵くん、どしたの?」
教室の外に景色がない。