レモン
黄肌を撫でる。
それは何とも不思議な撫で心地であった。
金属ほど硬くはなく、されど押せば確かに沈む。中身がぎっしりと詰まっているのを指の腹越しに感じて、たまらなく暴きたくなるのだ。
口内に液が充満する。包丁の柄を握り締めて左の指を添える。
中身を改めんとする同志。牙を研いだのはこの時のため。頼もしき銀色がぎらりと日光を反射する。
黄肌をなぞり、切れ込みを入れて体重を乗せる。
勢い余った刃が板を打つ。本懐を遂げて歓喜の声を響かせた。
次は俺の番。衝動に身を任せて指を突っ込み、中身をえぐり取って指ごと頬張る。
その果肉は芳醇であった。