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「お母様は悪役令嬢」  作者: 輝く泥だんご
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第87話 『全艦に通達!彡 ⌒ ミ✨』

 帝都直通高速転移陣の光は、未だルビークロスの夜空を照らし続けていた。それは、この星に更なる混乱と、そして予測不能な未来をもたらす、不吉なオーロラのようだった。


 

 艦隊旗艦『ゴールデン・ラズベリー・タワーMAX』のブリッジ。ホログラムスクリーンには、ヴィクター・フェイザーの『False Harbinger』が「調律」作業を行い、それによってエルドラド・ストリームが発生し、そしてヴィクターがルビークロスの砂漠地帯へと降下していくまでの一連の光景が、詳細な分析データと共に映し出されていた。


「ハイパーレバレッジ全ツッパ友の会」の艦隊は、エルドラド・ストリームの発生を確認した時点で、その異常なエネルギーに警戒しつつも、即座に突入するのではなく、安全な距離を保ちながら観測とデータ収集に徹していた。


 ドミニエフの額には、制御室の冷気とは裏腹に、脂汗が滲んでいた。彼の瞳は、エルドラド・ストリームから放出される莫大な永久尽界粒子の奔流と、それを生み出したヴィクター・フェイザーの行動、そしてその背後に蠢くArcane Genesis教の巨大な影を、一瞬たりとも見逃すまいと、血走るほどに見開かれている。


 ブリッジに漂うのは、期待と興奮だけではない。一触即発の宇宙的危機を前にした、極限の緊張感。そして、その危機すらも己の糧とせんとする、常軌を逸した者たちの異様な熱気だった。


「ニキ…! エルドラド・ストリームより、制御不能レベルの永久尽界粒子、及び…複数の異次元法則が混濁したと思しき『時空の裂け目』を継続的に観測! これは…これはもはや『市場』などという生易しいものではありませぬぞ! まさに宇宙の『バグ』! 下手すれば、我々ごとこの銀河系団が特異点処理されかねない規模でありぞますぞ彡 ⌒ ミ」

 リチェードが、普段の軽薄さを完全に消し去り、顔面蒼白になりながらも正確無比な分析データをドミニエフに叩きつける。その声は、恐怖に震えながらも、プロフェッショナルとしての矜持を失ってはいない。彼の禿頭は、艦内の非常灯の赤い光を反射し、まるで血の涙を流しているかのようだった。


「ふむ…宇宙の『バグ』とな。結構。人跡未踏の地にこそ『先行者利益』あり、だ。諸君、聞こえるか? あれは宇宙の悲鳴ではない。我々『ハイパーレバレッジ全ツッパ友の会』だけが聞き取れる、醉妖花様の御庭を彩るであろう、見たこともない黄金の果実が熟れ落ちる音なのだぞ...!彡 ⌒ ミ」


 ロドニーが、コンソールの前に深く沈み込むように座り、乾いた唇を舐めながら呟いた。その瞳は、常ならば利益の算段でぎらついているが、今は、まるで深淵を覗き込むかのように、暗く、そしてどこか虚無的な光を宿していた。彼らは知っている。この「ゲーム」のチップは、金銭ではない。存在そのものだ。そして、その全てを醉妖花様に捧げるのだ。


「その通りだ、我が友ロドニー! そして、この『バグ』こそ、我らが帝都直通高速転移陣の真価を発揮する、またとない舞台! 我らが醉妖花様への限りなき忠誠と、その御庭を無限に拡張せんとする野心を示す時!彡 ⌒ ミ✨」

 ドミニエフは、魔法金の杖を強く握りしめ、その切っ先をエルドラド・ストリームへと向けた。彼の顔には、疲労と狂気が混じり合った、しかし、神々しいまでの笑みが浮かんでいた。この数時間、彼は全神経を集中させ、ストリームの僅かな変動、ヴィクターの行動、そして周囲の宇宙空間の法則の揺らぎを読み解き、次の一手を模索し続けていたのだ。それは、もはや人間の思考速度を超えた、本能と経験、そして何よりも「ハイパーレバレッジ」という本質が導き出す、狂気と紙一重の判断だった。


「塔道築教の主聖都転移陣を掌握した際、我々は転移陣の『強制接続』の可能性を実証した。ならば、このエルドラド・ストリーム…この宇宙の『バグ』そのものを、我らが転移陣の新たな『供給源』として『強制接続』する! 永久尽界粒子を直接吸い上げ、異なる次元の法則を『調律』し、そして、それをGoldenRaspberry教の…いや、醉妖花様の世界の『無限の豊穣』へと転換するのだ!彡 ⌒ ミ✨」


 彼の言葉に、ブリッジの空気が凍りつく。それは、あまりにも壮大で、あまりにも無謀な計画だった。永久尽界粒子は、扱いを誤れば 超銀河団すら消滅させかねないエネルギーの奔流。ましてや、異次元の法則が混濁するストリームに直接干渉するなど、自殺行為に等しい。


「ドミニエフニキ...!それは…それはあまりにも…! 我々の艦のシールドでは、ストリームの余波すら防ぎきれるかどうか...! これは、醉妖花様への貢献どころか、御迷惑をおかけする結果になりかねませぬぞ!彡 ⌒ ミ」

リチェードが、絶望的な確率計算を弾き出しながら、悲鳴に近い声を上げた。


「リスクか? ああ、確かにリスクだ。だが、我々『友の会』の会則第一条を忘れたか? 『すべてはマネーゲーム。故にハイパーレバレッジ全ツッパなり。例え命を失うとも』! そして、この『強制接続』には、我らが醉妖花様への、もう一つの『究極の奉仕』が内包されている!彡 ⌒ ミ✨」

ドミニエフは、不敵な笑みを浮かべた。その笑みは、極限のストレスと疲労によって歪み、どこか鬼気迫るものがあった。


「先の塔道築教との『接続』によって、彼らの塔道築の民の精神もまた、この転移陣ネットワークに『参加』している。彼らを、我らが醉妖花様の『偉大なる計画』に一方的に巻き込んだ以上、彼らにもまた、この宇宙的規模の『奉仕』に参加する『栄誉』と、そして、それに伴う『リスク』と『天花への帰依による救済』を享受する『機会』を与えるのが、GoldenRaspberryの信徒としての、いや、一個の天花教徒としての『慈悲』というものだ! 我々だけがリスクを手に入れ、栄光を独占するなど、それは醉妖花様の御心に適うものではない! そうだろう!?彡 ⌒ ミ✨」


 彼の言葉は、一見、塔道築教の民を危険に晒す暴挙に聞こえるかもしれない。しかし、ドミニエフにとっては、それは「リスクを共有させ、天花への帰依という究極の救済の機会を平等に与える」という、彼なりの歪んだ、しかし筋の通った「信仰心」の現れだった。彼は、塔道築教の民を単なる駒としてではなく、この壮大な「天花教布教事業」の、意志の有無は別として、参加者の一員と見做しているのだ。


「全艦に通達!彡 ⌒ ミ✨」


 ドミニエフの声が、ブリッジに、そしてネットワークを通じて「友の会」全艦に、鋼のような意志を持って響き渡る。

「帝都直通高速転移陣、及び全艦の永久尽界コンバーターを、エルドラド・ストリームに強制接続! 全会員の『ハイパーレバレッジ』本質を最大出力で解放! 我らが『信仰』と塔道築教徒たちの『否応なき参加権という名の救済』を触媒とし、ストリームの奔流を制御、いや、醉妖花様の御庭を潤す『黄金の河』へと変貌させるのだ! これは、もはや我々だけの投機ではない! これは、我々と、そして巻き込まれた全ての魂が、宇宙の『法則』そのものを醉妖花様に捧げる、究極の『奉納事業』であるぞ! 逝くぞ、諸君! 我らが黄金の夢の、その先へ! そして、参加者全てに、リスクに見合う天花の祝福があらんことを! 我らが頭皮に栄光あれええええええ!!!彡 ⌒ ミ✨✨✨」


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