第56話 ( ๑❛ᴗ❛๑)۶∠※*・゜。:.*
「さぁ、ローラ。冒険の準備を始めましょう」
醉妖花はローラの肩に手を置くと、倉庫の中の空気が変わり始める。宝箱から光が溢れ出し、壁や天井に映し出された影が踊り始める。二人の冒険の始まりを告げるように、倉庫全体が不思議な熱気に包まれていった。
「まずは、服装を整えましょう」
醉妖花はそう言うと、ローラを大きな鏡の前に立たせた。鏡の表面が波打ち、そこに映る ローラの姿が曖昧に揺らめく。次の瞬間、ローラの服装は一変していた。
白茶色を基調とした、軽装ながらも機能的なデザインの冒険服というよりは探検服だった。上質な布地は彼女の体にぴったりとフィットし、動きやすさを追求した仕立ては、彼女の活発さを際立たせる。
「わあ、素敵...」
ローラは、思わず呟いた。
「似合っているわ、ローラ。これなら、どんな冒険にも対応できるでしょう」
醉妖花は、満足そうに頷いた。
「さあ、次はこれよ」
醉妖花は、別の棚から、革製のベルトを取り出した。ベルトには、いくつもの小さなポーチとホルダーが取り付けられており、様々な道具を収納できるように工夫されている。
「これは、冒険者用のベルトよ。ここに、必要な道具を収納するの」
醉妖花はそう言うと、ベルトをローラに手渡した。
ローラは、ベルトを受け取ると、その一つ一つのポーチやホルダーを確認していく。そこには、薬草やポーション、簡単な修理道具、そして、方位磁石などが収納されていた。
「では、参りましょうか、ローラ」
醉妖花は楽しそうに笑う。その笑顔は、世界の理を超越した存在であることを忘れさせるほど、無邪気で純粋なものだった。
倉庫の片隅に設置された、古びた木製の扉の前で醉妖花は立ち止まり、ローラに微笑みかけた。
「さあ、扉を開けて」
ローラは促されるままに、ゆっくりと扉を開けた。
轟轟と、扉の向こう側から、轟音が響き渡る。それは、風が吹き荒れる音のようであり、巨大な獣が咆哮する音のようでもあり、何千億何兆という人々が悲鳴を上げる音のようでもあった。
まばゆい光が溢れ出し、ローラは思わず目を閉じた。光が収まると、そこは、先ほどまでの倉庫とは全く異なる世界だった。
目の前に広がるのは、赤い砂漠だった。地平線まで続く赤い砂の大地、空には紫色の雲が渦巻き、遠くには、巨大な岩山がそびえ立っている。灼熱の風が吹き荒れ、ローラの顔に砂埃が叩きつけられた。
「ここは… 」
呆然とするローラに、醉妖花が笑顔で答える。
「五大宗教の一つ、CrimsonSand教の聖都星、ルビークロスよ。最初はこの星から探検と冒険に行きましょう」
「彼らはこの惑星の人類とは異なる進化を遂げた種族なの。退化と進化の繰り返しで行き着いた先が砂漠で生きるということなのよ」
「水も酸素も彼らには毒。私たちが生きるには厳しい世界ね」
ローラの全身を包む探検服はこの世界の法則に干渉し、砂漠の過酷な環境から彼女を守っている。それは醉妖花の祝福によるものだ。
「さあ、行きましょう」
醉妖花はローラの手を取り、赤い砂漠へと足を踏み入れた。二人の冒険は、こうして始まった。
その頃、交易都市アラビリスでは、ミントがネリウムの娘たちを集め、会議室で今後のことについて説明していた。
会議室のテーブルには、様々な種類の果物や菓子が並べられ、ネリウムの娘たちは思い思いにくつろぎながら、ミントの話を聞いていた。
「えーと、みんな聞いて聞いて〜(⋈◍>◡<◍)。✧♡」
「あのねー、ローラちゃんがね、醉妖花様に嫁いだんだなお。おめでとうなお〜❤︎( ๑❛ᴗ❛๑)۶∠※*・゜。:.*」
「二人は今、新婚旅行の最中なお。二人で冒険の旅に出かけているんだなお。とってもロックンロールなおー」
「二人っきりで冒険か… いいわね、それ」
アイリーンは腕を組んで呟く。彼女もまた、冒険者として生きてきた。誰かと共に旅をする喜び、そして、未知の世界へ踏み出す興奮を知っている。
「それってロマンチック!」と続け、パトリシアが目を輝かせた。
「まあな。二人の思い出作りにはピッタリだぜ」
バーナードは口の端を少し歪めて笑う。
「でも危険も多いはずよ。醉妖花様は守れるのかしら」とマーガレットが心配そうに口を挟む。
「大丈夫だなお。むしろ醉妖花様が強すぎて相手がいないのが問題かもなお。まあ、そこは醉妖花様が力を抑えて楽しむと思うなお」
「つーかさ、アタシ達の方が心配なんだが。新アラビリス帝国はこのままで?」
アイリーンが本題に入る。
「それが頭の痛いところなお」
「何か問題でもあるのか?」
アランが問う。
「この新アラビリス帝国がある惑星なんだけど皆も知ってのとおり、あの変態が醉妖花様の惑星にくっつけちゃったんだなお。でもこれが、それなりの問題を起こしてしまったなお」
「そこからは私『百薬』のサフランが説明させて頂きます」
デキる女メガネをクイと右手であげながらいきなり現れ、何事も無い様に椅子に座り、一番近くにいたネリウムの娘に珈琲を頼む。
「問題は、この惑星を統治する国は新アラビリス帝国かそれとも利帝国か否かということです」
「利帝国?ってなに?」
「この惑星を統一した帝国ですよ」
サフランが答える。
「新生アラビリス帝国が来るまではね」
「あー、結局、馬のおっさんの国が復活するんじゃなくて、あの首持ってきたねーちゃんの国を残すことにしたのか」
ほたるがそんなこともあったなぁと思い出しながら云う。
「はい。馬令殿は天花教の上人として、すなわち醉妖花様に帰依することを選びました」
「曰く『わーるどわいどの波が来ている。乗るしかないぜこのBigwaveによ』だそうです」
「うーん?まあ、わからんでも?ないかなー?」
よく分からんという風なほたるに対して
「祖霊よりも醉妖花様を選んだのよ。その忠はたたえられるべきものだわ」
月跡が云う
「まあな。でも、この利帝国と新アラビリス帝国の二重支配はマズくね?」
ほたるが首をかしげる。
「その点については、私、サフランがノキ首席補佐官より全権を委任され淵晶帝と交渉の場を持ちました、あ、淵晶帝は首狩りねーちゃんのことです」
「そしてサフランは負けたなお( ^ω^)・・・」
「弁明の機会を頂きたい。そもそも変態からの指示が『こまけーことはいいんんだよ』かつ、骸薔薇様が『もう約束してしまったのよ』である以上、もともと勝てない勝負であったのですよ!」
「えーじゃあ、新アラビリスとネリウムはどーなるんだよ」
ほたるが問いただす。
「吸収合併になるんだなお。これは確定事項なお。とはいえ実質は何も変わらんなお、法も憲法もほぼ其のまま残るなお」
「国名だけが変わるということね。ではネリウムの子達はどうなるのかしら」
月跡がミントの答えを聞いてさらに問う。
「ミントちゃんの指揮のもと維持されるなお、ただし、あの変態の命令には従わなくてはならなくなるんだお。血の涙が流れそうなお」
実際に血の涙を流すミント
「んー、ネリウムの子達を変態から守ることについてはオレも協力してやるし、月跡も協力するだろ?」
「もちろん協力するわよ。あとは
「オレ達のことだな」
とアイリーンが云う。
「実はノキ首席補佐官があなた方に注目しておりまして、いやそんなに、いやそーな顔をしないでください。こちらも心苦しいのですよ」
「と云ったって」「なあ」
アランが云い、バーナードが続ける。
「まあ、そんなに悪い話でもないんだなお。サフランもキャラが崩壊しないうちに説明するんだなお」
もはや、デキル女オーラがほんの僅かしか残っていないサフランであったが、デキル女メガネをクイと右手であげながら説明する。
「緋色の死、集いし星である皆さんには淵晶帝の近衛となっていただきたいのですよ」
「それを断ることができるのか、できないんだろう」
少々棘のある口調でアイリーンが云う
「もちろん断ること自体はできるなお。ただ結局は何故かノキ首席補佐官の思いどおりになるんだなお」
「だよなあ」
思い当たる節がありまくるのか、ほたるが頷く。
「よし、ノキ首席補佐官殿が何を考えておられるのかは分からんが、アイリーン達を強化しておくか」
「なになに?何するの?」
パトリシアがすぐに食いつく
「アイリーン達を俺の眷属、つまりは醉妖花様の眷属にする。おいちゃんの血と合わせて強化することになるから、かなり人間をやめることになるぞ。いいよな、月跡?」
「本来なら反対するところだけど、ノキ首席補佐官案件なのよね。分かったわ。許可しましょう」
やったぜ!と由緒正しきポージングをとるパトリシアと何故か諦めたような悟ったような顔のアイリーン達
「酒とお茶どっちに混ぜる?」
とほたるが問うと、全員が
「酒!」
と飲まずにはいられないようだ。




