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「お母様は悪役令嬢」  作者: 輝く泥だんご
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第55話 一杯の珈琲を

 ローラが醉妖花のもとへ行く決意を固め、瑚沼崎が彼女に付き添うことを決めた。ほたるは惑星の制圧へと向かい、ミントはネリウムの娘たちの今後について考えを巡らせ、月跡は新生アラビリス帝国についてアイリーン達へ指示を行う。残された時間はあとわずか。それぞれの決意を胸に、彼女らは最後の準備を進めていく。


 約束の日が訪れた。交易都市アラビリスのみならず、この惑星全てを包み込む永久尽界が展開されている。

 その永久尽界を展開したノキ=シッソはどう見ても腐った豆、変色どころか糸すら引いている、を(´~`)モグモグ食べながら

「やっぱり何処の食品メーカーの納豆も大差ないですね。やはりタレが味の決め手というか全てですねぇ、あと万能ねぎ、自分一人では戦えない食品、悲哀を感じますね」

食レポをしていた。

「さて、食後に一杯の珈琲を、ああ、そういえばカフェインレスの珈琲が欲しいなんて云う連中がいるそうですが、Real Manの云うことではありませんね」

 優雅に珈琲を飲み終える。

「準備は整いましたか、皆さん、点呼はしませんよ」


「準備おっけーだぜ、ていうか準備なんか必要あんのか、この惑星全部持っていくんだろがよ。そのために一日半かけて制圧したんだぜ」

 たほたるが苦労したぜとばかりに云い放つ


「その点はお疲れさまでした。ですがまあ、今回、大事なのはローラ様のご決断、それが全てですので許してくださると幸いです」

 ノキ首席補佐官は云い、会議室を見渡す。

 月跡、ミント、ほたるの三人娘、ローラ様とその護衛の瑚沼崎、この惑星の住人のアイリーン達5人である。


「ローラ様宜しいでしょうか」

ノキ首席補佐官が戻れない一線を引く。


「はい、お願いします」

ローラは深呼吸をし、決意を固めた表情でノキを見つめた。


「承知いたしました。では着きましたよ」


事もなげにノキ首席補佐官は惑星一つを醉妖花のいる世界へ運び終えた。


「随分久しぶりに感じるわ。けど此方も大分変わったようね」


「惑星だけど惑星という規模じゃなくなっているな」


「半径億光年単位の惑星になってるなお?」


「いえ、まだまだ半径2143光年と云ったところです。何分人手不足なものでして」

 ノキ首席補佐官は、月跡たちの言葉に苦笑いを浮かべた。

「まあ、そうですね。この惑星の規模は、まだ醉妖花様の理想には程遠いです。ですが、醉妖花様の祝福のもと我々は、必ずやこの惑星を、より大きく、より美しく、より繁栄した世界へと変えていくことができるでしょう」


「そうね。醉妖花様の祝福は必ずこの世界を理想郷へと変えてくださる。でも、そのためには、まず『探し人』が必要だわ」

 月跡は、静かにそう告げると、ローラに視線を向けた。ローラは、少し緊張した様子で、月跡の視線を受け止めた。


「ローラ、準備はいいかしら?」


「はい、大丈夫です」

ローラは、深呼吸をして、決意を固めた表情で答えた。


「では、行きましょう。醉妖花様がお待ちかねだわ」

  月跡は、そう云うと、ローラの手を取り、醉妖花が待つ八十八重宇段大天幕の最奥へと向かった。

 月跡は、ローラを伴い城の深部へと進んでいく。廊下には無数の薔薇が咲き乱れ、その香りは甘美でありながら、どこか危険な魅力を漂わせていた。


 八十八重宇段大天幕の最奥、紫星城の深部。そこは世界の理が交差する場所であり、全ての運命の分岐点となる特異点。無数の薔薇が咲き乱れる回廊を進むごとに、世界の様相が変化していく。実現されなかった未来と失われた過去が、幻のように揺らめいていた。

 醉妖花は静かに座っていた。黒漆より深く黒く照り輝く髪、真珠のように光を纏う肌、そしてあらゆるラピスラズリをも凌駕する青い瞳。その存在は世界の在り方そのものを変える力を持っていた。

「お待たせいたしました、醉妖花様」


 月跡の言葉が響いた瞬間、時間の流れが停滞する。


 ローラが一歩を踏み出すと、世界が完全に静止した。薔薇の花びらが宙に浮かび、その一枚一枚に異なる世界が映り込んでいる。無数の世界線が交差する中心で、醉妖花が立ち上がった。

「ようこそ、ローラ」

 その声が響いた瞬間、宙に浮かぶ花びらが光の粒子となって、星々のように輝き始める。

醉妖花は静かにローラへと歩み寄り、その度に空間が波打つように揺らめく。二人の距離が縮まるにつれ、光の粒子は渦を巻き、まるで天の川のような光の帯となって二人を包み込んでいく。


「長い時を経て、やっと出会えたわね」

 醉妖花の手がローラの頬に触れた瞬間、ローラの体内で眠っていた「探し人」の意識が大きく波打つ。光の渦が激しさを増し、その中に無数の未来が映し出される。

「これは...私の...?」


ローラの言葉が途切れる中、光の渦が一点に収束していく。

「あなたの世界であり、私たちの物語」

醉妖花は柔らかく微笑む。

「さあ、一緒に確かめに行きましょう」

 醉妖花は手を差し伸べ、ローラはその手を取る。瞬間、光の渦が二人を包み込み、空間が大きく歪む。世界そのものが変容し、二人は古びた倉庫のような空間へと移動していた。


「ここは『冒険の部屋』よ」

 醉妖花は楽しそうに微笑みながら、ローラの手を引く。

「私が長い時間をかけて、この日のために用意していた場所」

「魔法で創造して作り出せばいいと思うわよね。でも、この八十八重宇段大天幕は私にとっては結界なのよ。だからこの結界のなかでは自由に力を使うことができないの」


「でも、ローラが来るのに間に合ってよかったわ」

 醉妖花は、いたずらっぽい笑みを浮かべると、倉庫の奥へと歩みを進めた。その足取りは軽く、まるで宙を舞う蝶のようだった。

 醉妖花に手を引かれ倉庫の奥へと進むローラ。高い天井まで所狭しと並べられた棚には、見たこともない道具や素材がぎっしり詰まっている。宝石のように光り輝く宝箱、複雑な模様が刻まれた古文書、奇妙な形の武器や防具、そして、微かに脈打つ不思議な植物。全てが、この世界の常識では考えられないものばかりだった。

「凄い… 」

 思わずローラは呟いた。


「でしょ? 気に入ってくれると嬉しいわ。」

 醉妖花は子供のように笑う。

 醉妖花は一つの棚の前で立ち止まり、木箱を取り出した。その木箱は古びていて、ひときわ年季が入っている。醉妖花はそっと蓋を開けると、中には、黒い布で包まれた何かが入っていた。

「これは?」

 ローラの問いかけに醉妖花は布を解き、中身を見せた。それは、黒曜石のように黒い鞘に入った短剣だった。


「これは、黒曜星の刃よ。この世界で作られたものじゃないの。とても強力な武器よ。貴方にぴったりだわ」

 醉妖花はそう言いながら、ローラに短剣を手渡した。

ローラは恐る恐る短剣を受け取ると、ひんやりとした冷たさが掌に伝わってきた。黒曜星の刃は、鈍く光り、不思議な力を感じさせる。

「私なんかがこんなもの…」


「大丈夫よ、ローラ。きっと貴方の役に立つわ。それに使い方を教えてあげる。心配することはなにもないわ」

 醉妖花は自信に満ちた笑顔でローラに云った。

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