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「お母様は悪役令嬢」  作者: 輝く泥だんご
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第49話 ドキドキわくわくの力づく

 いきなり後ろから声がした。その声だけで5人は動けない。声の主はスタスタと5人の前に来ると


「これはこれは、いつも部下と倅が大変お世話になっております。どうも初めましてベルギア=シッソです。名詞をどうぞ」

と5人に名刺を配る。

「名詞の本社の住所を発音しながらなぞっていただければ直接テレポートができますし、これがアポイント代わりになりますのでよほど立て込んでいるとき以外は、私が応対させていただきますのでどうか宜しくお願い致します」


「倅?」

月跡が白い羽を広げてベルギア=シッソに尋ねる。


「ノキ=シッソのことですよ。私から分岐した最初の枝です。私としてはそろそろヤンチャを止めて落ち着いてほしいのですが、これが、どうにもこうにも悩みの種でして」


はっはっはと笑う。


「ああ、もう一つ皆様にお願いがありまして、皆さまの醉妖花様から皆さまが離れていただけないものでしょうか」


「それは不可能です。私たちは醉妖花様の眷属として、醉妖花様のために存在しているのですから、如何なる大義も、道理も私たちから醉妖花様への忠愛を振るわすことすらかないません」


「まあでしょうねー!、となると後はドキドキわくわくの力づくですが、もう時間なんですよね!!」


世界の壁を砕いた大金棒6本がそのままの威力でベルギア=シッソに叩き込まれた。

「すまぬ。遅れた」

六つの腕で大金棒をゆっくり引き上げ、暁鐘統合元帥は微笑んだ。その姿は、この世界の法則すら捻じ曲げるほどの威圧感を放っていた。


「暁鐘統合元帥、お待ちしておりました」

崩壊した街のなか、月跡は白羽を広げ、銀色の光を放ちながら云う。


「よっしゃ!いよいよ本番だぜ!」

ほたるはⅢ両刃双の大鎌を構え、戦闘態勢に入る。


「ここは私たちが押さえるなお。暁鐘統合元帥はベルギア=シッソに集中してなお」

ミントは緑羽を広げ、自身の永久尽界を展開し、周囲の時空の制御を始める。


 瑚沼崎はベルギア=シッソとの距離を詰め、ほたるとローラの前に立ち二人にとっての城壁として守りを固める。


 ローラは後方で警戒しながら、街全体の状況を監視する


 一方、大金棒の六撃を受けたベルギア=シッソは、体を大きく歪ませながらも、その場に留まっている。その姿はまるで液体のように揺らめき、徐々に元の形に戻っていく。

「大変申し訳ございません。名詞を丁度切らしてしまいまして、しかし...」

ベルギア=シッソの体から黒い霧のようなものが溢れ出し、周囲の世界を喰い始める

「これで勝負がつくと思っているのですか?私はノキ=シッソよりも深いものです。根本の存在なのですよ」


「ならば貴殿の真の姿、見せてもらおう」

暁鐘統合元帥は6本の大金棒尾を構え直し、ベルギア=シッソに向かって云い放つ。


暁鐘統合元帥もまた周囲の世界を侵食し、己が身体の一部とする


 己が創造する世界で相手を殺す


 世界を破壊する力で叩きつけても無意味、しかも、この世界の理では互いに相手を殺すことは不可能。故にこの世界を破壊し、相手を殺せる理を持つ世界を新たに創造する。

 互いに創造した世界が拒絶し合い


急速に事象の地平面が生じ、その事象の地平面も終極点へと収束し始める。


誤謬と誤謬が重なり正となる 無限遠が1になり、1が0となる中で

 暁鐘統合元帥は大金棒の乱打、どれも致命の一撃を狙ったもの、をベルギア=シッソに打ち込むが、ベルギア=シッソの身体から湧き出す黒い根にからみ取られる。

 からみ取られた大金棒を無理やり根から引きちぎり

「忌み枝の力、シッソの名、侮りがたし」


「侮りがたし、とは、誠に光栄。しかし、暁鐘統合元帥、あなた程の方もまた、馬鹿息子の企みに踊らされているとは、まったくもって不愉快なことです」

 ベルギア=シッソは、暁鐘の六つの腕が繰り出す大金棒の猛攻を、黒い根で巧みに受け流し、時には絡め取ってその動きを封じていく。収束し始めた事象の地平面すら歪み、世界の終わりが遠のく。

「お会いできると分かっていれば、プレゼンの資料を作成してきたのですが、このような絶好の機会をのがずとは。いやはやトップセールスとは難しい」


「確かにその言動、ノキの祖木に違いない。あのノキを超えるものだとしても、ここで枯らし朽ち木とする」

 暁鐘は、ベルギア=シッソの言葉を聞き流し、より一層猛攻を強める。六つの腕がそれぞれ異なる軌道を描き、大金棒を振り下ろす。その一撃一撃は、ベルギア=シッソの黒い根を砕き、彼の体を傷つけていく。


「何と素晴らしい。その大金棒一本に練りこまれた人間の数、数十阿僧祇に達しています。それが六本、練りこまれ怨霊と化した者たちの叫び、何とも心地よいではないですか、暁鐘統合将軍?」


「貴殿のご子息は親孝行であるな。この大金棒はノキより預かったもの。これならば打ち殺せるとな。ノキの祖木を数十阿僧祇の怨霊で打ち殺せるならば、これはすなわち功徳である」

 暁鐘は六つの腕を大きく広げ、大金棒を回転させ始める。大金棒の回転が加速するにつれて、周囲の虚時間次元が歪み、黒い亀裂が走り始める。大金棒に宿る数十阿僧祇の怨霊の叫びが、轟轟と世界の終焉を告げる様に鳴り響く。


「面白くなってきましたね。ですが、所詮は悪鬼の力。清浄の力には敵いませんよ」

ベルギア=シッソは不敵に笑い、黒い根をさらに増殖させる。根は絡み合い、巨大な球体を形成し始める。球体の中心には、ベルギア=シッソの姿がぼんやりと浮かび上がっていた

「清浄?貴殿のそれは歪であり、病である。この世界を蝕む不浄そのもの。それを私は、この大金棒で叩き潰す!」

 暁鐘は六つの腕を振り下ろし、回転する大金棒をベルギア=シッソの黒い球体へと叩きつけた。世界を破壊する力と、数十阿僧祇の怨霊の念が、球体へと激突する。


その瞬間、暁鐘とベルギア=シッソの創造した世界が崩壊した。


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