第2話 ほたるくんちゃん元気してるぅ~?
馬令の独言と同じ時。
昇華極熱圧爆弾と苦土軽銀極焼夷弾の混合集束爆弾が平原を焦土に変える。
その生命が生きることを許さぬ熱圧の中
「糞が!」
醉妖花様をお守りする観賞用奴隷にして愛玩人間であり異世界強制TS転生幼女半ホムンクルスである「ほたる」は下品な言葉で毒づいた。
そもそも、こんな目に会うのは、あの超越変態者の腐れノキのせいである。
軍議であの阿保が発議し決議となったことは、朝廷軍にかむなぎ様が精神支配を行うが、それはさらりと吹く秋風のように爽やかに留める。
それは朝廷軍の中にいる強者を探すためである。それら強者に接触し可能であれば離反させ、それが出来なければ戦場から離れるよう勧告する。聞き分けがないようなら曉将軍に這い従うモノが処分する。
ここで問題となるのは、精神支配に対抗できた朝廷軍の暗殺者等である。そのならず者からかむなぎ様をお守りするためにノキの配下である最終独立魔導機械化戦闘文官大隊「Garden of hell」と「ほたる」が暗殺者狩りを行うということである。
ほたると相対したその暗殺者が強い。
ほたるの能力は六万五千五百三十六個の武具を念動操作する。弓、盾、刀剣類、小銃、機関銃、重火器、重砲、戦闘車両、航空兵器等それらの武具自体が強力なものであるが、さらにほたるの魔力により強化されている。
豪雨のように攻撃を仕掛けているのだが、暗殺者の時空間制御により全ての攻撃が強制的に外され、逆に自空間破砕で武具を破壊され追いつめられてしまっている。
ほたるは魔法の箒代わりにしたタワーシールドに立ち、空を飛びながら空間破砕を避けつつ突撃し、両刃双の大鎌で暗殺者を両断する。が、歪めた空間を刃が滑るのみで傷一つつけることができない。
逆に、暗殺者の反撃が、時空間破砕を伴った拳が放たれる。その一撃はほたるの命を確実に奪うはずであったが
「ほたるくんちゃん元気してるぅ~?、お兄さんはね、右手が無くなって痛いけど戦場でなら平気だもん。でも涙が出ちゃう。だってまだまだ男の子なんだもん!」
じんわりと空間から滲みだしたノキがほたるを庇う様に暗殺者の前に立ち、暗殺者の攻撃により欠損した右手を掲げる。
「いや〜、あなた、これこれこれこのお手手ですよ、只の時空間破砕にしては随分、深いですねぇ。私の永久尽界にまで傷が達していますよ。ご理解頂けます?はっきり言って危険なんですよねぇ。しかもなんかオサレさんだし(暗殺者は全身を黒い包帯の様な布で巻いている。唯一、口の部分だけ切れ目がある)。そう、オサレさんだなんて、こんなことが許されるはずがない、これは許されざることなんですよ!」
周囲の空気をボッと音を立てて集め、その集めた圧縮空気を元素変換し失った右手の再構築を行う。
「では、始めますか」
左右の腰に垂らした二本の超越強化ナイフ(耐極超高熱、極超硬度、極超靭性を永久付与)をヒップシュートのように同時に極超々音速で投擲する。
暗殺者はナイフの刃が届く前に大げさなまでに回避行動をとる。
ナイフの刃先に固着時空間断裂の刃が伸ばされており不可視の刃(長剣程の刃渡り)となっているためだ。
ノキは暗殺者が回避行動とるのに合わせて間合いを一気に詰め多重時空貫通掌底を撃ち込みさらに、
「錠、永久災庭園、佃煮汁!!」
百万町の草原が佃煮になる。無塩、されど味滲み深い。
なにもおかしなことでは無い。石化の魔法で有機物が無機物になるのなら有機物を有機物として扱う方が簡単なのは道理である。石等の無機物にしなくとも、そう、たかが心臓一つ佃煮にされるだけで人は死ぬ。手間暇は相手の結界を破るために使うべき。しかし、このようなことでさえ、聖都の庇護下にあるような連中の手には余りあることだろう。
だが、今、重要なことは、
「いーやはやはや、どちらも凌ぎきりますか。あなた何者ですかとおもったら、あなた私ではありませんか。おそらく二百万世代前に分岐した、時空間操作を引き上げた私に連なる私、やっぱり私、出来る男なんですねー」
「まあ、私だと分かったことですし、ここからは、ノキ=シッソ、それなりにお相手しもす」
始まった戦いはおそらく肉弾戦、しかし、そのほとんどを認識できない、おそらく己が身体と時空を一体化し戦いながらこの場の時空操作の主導権をどちらが得るかをせめぎ合っているのだろう。
ほたるは何も出来ず呆然としていると
「ほたる殿、この場の時空はもはや腐り落ちる。急ぎ、かむなぎ様の下へ参りましょう」
暁将軍が閉じつつあるこの時空に普段と変わらず穏やかに現れた。
「暁将軍、ノキはどうするの」
「アレはどうとでもなる。今回は遊びが過ぎたようだが、華命玉様より一言あるだろう。さあ、ほたる殿、失礼いたします」
暁将軍は、ほたるを腕に抱えると急速に腐り落ち収束発散する時空からかむなぎ様が居られる八十八重宇段大天幕の前に空間跳躍した。
暁将軍は蒼空を見上げて一言
「刻限ですな。」