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「お母様は悪役令嬢」  作者: 輝く泥だんご
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第46話 到着地点

 そのゴーレムは、黒曜石のような漆黒の鉱物で構成され、全身に複雑な魔法陣が刻まれていた。ゴーレムの胸部には、巨大な赤い宝石が埋め込まれており、不気味な脈動を繰り返していた。

「忌み枝の拠点にゴーレム… これは一体…」

瑚沼崎は、ゴーレムの姿を見て、眉をひそめる。


「忌み枝もなかなかやるものだわ。あれは 多数の忌み枝自身を供物として造られたゴーレムよ」

月跡は、ゴーレムを鋭い視線で見つめながら言った。

「魔薬を作るぐらいですから、これぐらいは予想すべきでしたね」


「忌み枝は、自らの存在をゴーレムに転写することで、合体の限界を超えようとしたのよ。そして理外の力まで手に入れた」


「あのゴーレムは、忌み枝の化身つまり 自我があるってことか。武具を操る力、通じるかな」


 そんなことを話している間も、ゴーレムの周囲の現実が歪み更にはボロボロと世界が壊れ落ちてゆく。


「ほたる、試してみる価値はあるわ。ゴーレムの制御を試みなさい」

月跡の言葉に、ほたるはⅢ両刃双の大鎌を構え、ゴーレムへと意識を集中させる。大鎌を通じて、ゴーレムの核となる赤い宝石へと自身の魔力を送り込む。するといきなりゴーレムがほたるへと襲いかかる。

 ゴーレムの世界を崩す回し蹴りがほたるの胴めがけて放たれるが、その間に瑚沼崎が理外の力で割り込み蹴りを両腕をへし折られ、肋骨を砕かれながらも受けきる。

 月跡はゴーレムより歪んだ現実と壊された世界の修復、更にゴーレムの現実と世界への干渉を断ち、この場に更なる敵対者が現れぬよう結界を張る。

「ほたるゴーレムへの制御を続けなさい。明らかにゴーレムの力が落ちているわ」


「分かった」

ほたるは、額に汗を滲ませながら言った。ゴーレムの赤い宝石は、ほたるの「本質」を拒絶するかのように、さらに激しく脈動していた。

 ミントは増殖の力で瑚沼崎の身体を回復させ、ゴーレムから放出される理外の力を同じく理外の力で中和していく

 瑚沼崎は自身より巨大なゴーレムと格闘戦を繰り広げていた。月跡、ミント、ほたるによる弱体化を受けても、一撃で瑚沼崎に致命傷に等しいダメージを与えていく。

 しかし、瑚沼崎にはまだ余裕があった。瑚沼崎の本質は「人喰い」、このゴーレムも忌み枝、つまり人から出来ている。先ほどから殴りつけた時、ゴーレムの永久尽界を削るように喰い、自身の永久尽界に取り込んでいた。逆に弱体化したゴーレムの攻撃は瑚沼崎の永久尽界に届かない

 十数度の時空を揺らす攻防の結果

「よっしゃー!コントロール成功、益尾のおっさんありがとだぜ」


「なんとかなったなおー」


「ほたる、先ほどは止めるようにいったけど、大鎌でゴーレムを切り喰いなさい。少しでも永久尽界を強化するように、敵は手ごわいわ」


「ん-ゴーレムのままの方がカッコいい気がするけど、ま、いいか」

ほたるは手にした大鎌で自身の支配下にあるゴーレムを両断する。と大鎌より幾本の太い針金が両断したゴーレムに刺さり、ゴーレムを吸収してゆく。


「この拠点もほぼ潰しました。一度、レイタニアに戻りますか」


「いいえ、深き茂みの標的は私たち、レイタニアにもどれば、そこが戦場になるわ。戦いを繰り返せば、深き茂みと私たちとの因縁に感づくものも出るでしょう。ここは戻らず次の目的地に向かいましょう」


「それもそうだな、えーと最終目的地はどこだっけ」


「ドゥスクロディア連邦王国なお」

「そのドゥスクロディア連邦王国まるごと『深き茂み』だったりしてな」


「その可能性は充分あるわ。探し人の傍にベルギア=シッソがいるならばね」


「ミント様、新体制になったばかりですがネリウムの子達の徴募を行いますか」


「ローラちゃん、今はまだそこまではいいなお。こちらの切札を手に入れたら徴募するなお」


「切札ですか?」


「そうなお、暁鐘統合元帥が切札なお。断じて口に出すのも悍ましいアレではないなお」


「あ、でも元緋色の死の集いし星のメンバーはアラビリスに戻しておいて欲しいなお。アラビリスを聖地都市にするより少しでも手数を用意しておきたいなお」

「益尾のおいちゃん問題ないかなお?」


「ええ構いませんので、集いし星を宜しくお願い致します」


「なあ、ローラ、次の目的地は何処の聖地都市になるんだ?」


「次の聖地都市は、アークトゥルス帝国の首都、アルクトゥルスですね。アラビリス帝国からは、かなり距離があります。レイタニアからだと、約2000mileほどでしょうか」


「遠いぞ」「遠いわね」「幌馬車ではいささか」「ローラちゃん流石なお」


「極端な話、走ってしまえば1日あれば十分な距離なのだけど」


「入国審査で『レイタニアから走ったら一日で着きました』は流石に本当のLvを開示する、私はLv63万ですか、皆さんも同様に開示するしかありません」


「それなんだけどさ、もうホントのLv開示でいいんじゃねーの。敵の親玉もこっちの強さ分かってんだろーしさ」


「その通りね。ほたる。隠匿する意味は最早ないわ」


「おおー宣戦布告だなお。今更だけどなお。というわけでアークトゥルス帝国まで走って行くなお?」


「もう面倒はしないわ。距離を焼いてドゥスクロディア連邦王国まで一気にテレポートするわよ」


 月跡の言葉に、ローラは一瞬、目を丸くしたが、すぐにいつもの冷静な表情に戻り

「かしこまりました。月跡様。念のため、到着地点の情報をネリウムのネットワークから取得しますので、少々お待ちください」

ローラはそう言うと、目を閉じ、集中を始めた。数秒後、ローラは目を開き、

「到着地点『ドゥスクロディア連邦王国国境検問所』の情報が確定しました。問題ありません」


「ミント、ネリウムのネットワークを使わせてもらうわよ」


「構わないなお」


「では、行きましょう」

月跡は静かにそう告げると、自身の永久尽界を展開する。銀色の光が馬車全体を包み込み、周囲の景色が歪み始める。次の瞬間、馬車は跡形もなく消え去り、ドゥスクロディア連邦王国国境検問所へと転移した。

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