第44話 重大インシデント
「あちゃ~(ノo`;)シッソの名持ちとはやべーんだなお、やっぱり暁鐘統合元帥か華命玉天、いっそのこと変態本人の召喚一択だなお」
「でしょうね。流石にシッソの名持ちと殺し合いたくないわ」
「そんなにやべーのかシッソの名持ちってーのは」
ほたるがミントに聞く
「ええ、本人との違いは本人ではないぐらいなものよ」
「ええー変態じゃん。パス、パス、そんなの、めっちゃテンション下がる。だだ下がりー」
「って重大インシデントじゃないのかそれ、『探し人』がシッソの名持ちのところにいるんだろ」
「大丈夫じゃないけど大丈夫なお。報告は眷属ネットワークで変態に「事態が変態が大変それとも大変が変態が事態もちろん両方発生」と送ったなお」
「我々はいかが致しましょうか」
瑚沼崎が月跡に伺う。それに対して月跡はふふと笑うと
「『深き茂み』の拠点を襲撃するわ。ミント、ほたる、瑚沼崎、準備しなさい。ローラはネリウムの娘たちにいつも通りの仕事をするように伝えなさい。そして、援軍が本陣より到着次第、本拠地に強襲をかけます」
援軍の要請を発した先、本陣では
八十八重宇段大天幕の奥、その最奥の三つ前、三重宇段天幕の中、伽羅を削りだしたカウチに骸薔薇が寝そべって書を読んでいる。その姿は完璧な大輪の薔薇を思い起こさせる。
「この書もこの書もあの書も、Jacomusが書いたものね。全てJacomusの書いたものばかり。悪くはないのだけれども、Lilium auratumの情緒の育成につながるのかしら」
臣下の礼をとりながら黒蝶女長官は
「醉妖花様は経済、その経済体制を支える経済統計倫理文化史にご興味がおありの様で御座います」
「Jacomusは自分の庭にLilium auratumを咲かせようとしているのね」
「まったく懲りない男」
本を黒蝶に渡しひとつ伸びする
「それで、Jacomusからの連絡は?」
骸薔薇は、黒蝶に尋ねた。
「はい、月跡達より重大インシデントの発生を確認との連絡が入っております」
「ふむ、詳細を説明しなさい」
「はい。月跡様達が探していらっしゃる人物ですが、『深き茂み』の奥底に捕らえられているとのことです。さらに、その『深き茂み』の幹部の一人であるベルギア=シッソが、その人物の父親代わりになっているとのことです」
「ベルギア=シッソ… 聞いたことのない名ね。Jacomusの分体にしては、随分と大胆な行動をとるものだわ」
骸薔薇は、冷徹な表情でそう告げると、カウチから立ち上がり、部屋の中をゆっくりと歩き始めた。
「黒蝶、至急、暁鐘を呼び戻しなさい。そして、Jacomusには、直ちに月跡達の元へ行くように伝えなさい。Lilium auratumの伴侶となるべき人物を、あの忌み枝どもに奪われるわけにはいかないわ」
「かしこまりました」
黒蝶は、深々と頭を下げると、三重宇段天幕を出て行った。
骸薔薇は、鏡に映る自分自身を、静かに見つめていた。その瞳は、深い決意を秘めていた。
「Lilium auratum、あなたのためならば、私はどんなことでもするわ」
骸薔薇は、そう呟くと、唇に冷たい笑みを浮かべた。
「それでノキは今如何しているのだい」
醉妖花が黒蝶女官長に尋ねる。
「はい、ノキ首席補佐官は、ベルギア=シッソの名を聞いた途端、顔面蒼白になり、泡を吹きながら卒倒しました。その後、華命玉天が、ノキ首席補佐官の口に、どこにも存在しない片方の靴下と緑黄色野菜ジュース色の泥を流し込み、蘇生させましたが、意識は明晰そのものではありますが仮病をしており、石抱にしておりますが意味のある言葉をしゃべらせることは出来ておりません」
「なかなかに面白いね。暁鐘は?」
「『相手にしてられぬ』と月跡達の元へ急ぎご出立されました」
「そう、なら月跡たちも一安心だね」
骸薔薇からの勅命を受け、暁鐘統合元帥は急ぎ月跡たちの元へと向かっていた。
暁鐘は、六つの腕で世界の際を掴み、ねじ曲げながら世界間を移動する。
「しかし、シッソの名を持つ忌み枝とは… 厄介な相手であることは間違いない」
暁鐘は、眉をひそめる。シッソの名を持つ忌み枝は、ノキ⁼シッソの分体の中でも、特に強力な存在として知られていた。
「月跡達だけでは、対処しきれない可能性もある。急がねば」
暁鐘は、さらに移動速度を上げ、月跡たちのいる世界へと向かう。




