第41話 醉妖花様のために
深夜にも関わらずイシュトビ・ノヴァ―ドの邸宅は煌煌と照らされていた。
「これ相当警戒してるな、私兵やら冒険者やら国軍やら500人はいるんじゃねーの」
「なりふり構わずは嫌いじゃないけど面倒ねなお」
「全員関係者なら食べてしまってお終いなのですが、事情を知らずにいるものもかなりの数でしょうし困りましたね」
「うーん、ひとつ賭けてみるか」
「何するなお?」
「ずば抜けて高いLPを持った奴とその周囲にいる連中も高いLPを持った奴らがいるところを指示してくれ。大鎌で時空を割いて突入する」
「ああ、それはいいですねイシュトビ・ノヴァ―ドの蓋然性は高いでしょう。念話で場所を伝えます」
「場所は分かったじゃ、一気に行くぞ」
ほたるがⅢ両刃双の大鎌を振り下ろすと時空に裂け目が生じる。その裂け目に三人が突入する。
時空の裂け目から飛び出した三人は、豪奢な応接室にいた。そこには、イシュトビ・ノヴァードと側近と警護の者と思しき男たちが十数名ほど、そして、静かだが危険な魔力を放つ忌み枝が2体、立っていた。
「そりゃーさー、いるよねー、忌み枝がさー」
大鎌を振るいながら側近と警護の者をバラバラに切断する。同時に瑚沼崎がイシュトビ・ノヴァードの頭を掴み取りねじり取る
ミントは結界を駆使した格闘戦を忌み枝達に仕掛け手数で優位をとる。また頭部をかじり終えた瑚沼崎も格闘戦に加わり一撃の重さで畳みかける
「さて、撤退するぞー」
ほたるが大鎌を振るう。先ほどと同じように時空に裂け目が生じる。まずほたるが脱出する。
「おいちゃん先するなお」
次にミントが脱出する。
「では私も」
瑚沼崎は忌み枝たちのLP、生命力を忌み枝の行動が一瞬、戸惑いで止まるだけ吸収し、そのすきに脱出する。
「mission 1-3 complete なおー」
「まてまて、おうちに帰るまでがmissionです。てことで早く帰ろうぜー」
「そうですね。早く帰って今日のところは休みましょう。得た情報については明日またじっくり分析しましょう」
一晩明けて
「なかなかに厄介です」
瑚沼崎は開口一番そういった。
「聖地都市の聖地とは転移陣のこということは知っていますが、それでもよくまあ聖地都市と臆面もなく云えたものですよ」
「どゆこと?」
ほたるが聞く
「魔薬の生産販売は聖地都市レイタニアの一大産業であるということです。昨晩私が恐れていたのは証拠となる生産基地が既に破壊されているか、ノヴァードの殺害をもって残党が破壊するすることなのですがノヴァ―ドは只のトカゲのしっぽでしかない」
「つまりなお?」
ミントが聞く
「この聖地都市レイタニアは『深き茂み』の統治下にあり、全土へ魔薬を供給するための生産基地であるということです。魔薬の使用者はこの都市の支配者層ほぼ全てといえるでしょう。従って、この都市に送られてきた、送った実際のものと交易記録は嗤えるほど違います」
「全土から子供を集めて魔薬にし、全土へ魔薬を送る。そうして『深き茂み』の統治下に置いていく。この理解で構わないかしら」
「はい、それで間違いないかと」
「つまり、レイタニアは魔薬漬けで、しかも『深き茂み』に乗っ取られてるってことか。厄介だな」
ほたるは眉をひそめ、Ⅲ両刃双の大鎌を無造作に床に突き刺した。
「まったく最悪ね」
月跡は、青水晶水の入ったグラスを静かにテーブルに置いた。その瞳は、冷徹な光を放っていた。
「この状況を打開するには、迅速かつ的確な行動が必要だわ。まず、レイタニアの魔薬組織を壊滅させ、魔薬の流通を断ち切らなければならない。そして、その上で、真の黒幕である『深き茂み』を討つ」
「でも、レイタニアの支配者層はほぼ全員、魔薬の常用者でしょう? そんな状況で、どうやって魔薬組織を壊滅させるんです?」
ローラは、不安そうに月跡に問いかける。
「単純よ。魔薬に係わる全てを焼き尽くせばいいのよ」
月跡の言葉に、ほたるとミントは頷く
しかし、瑚沼崎は、冷静に反論する。
「お待ちください。月跡お嬢様。確かに魔薬組織は壊滅できるでしょう。しかし、聖地都市ノゼインのみならず聖地都市をまた攻撃、破壊したとすれば、新アラビリス帝国の評判はさらに悪化するでしょう」
「この世界は、既に『深き茂み』に蝕まれている。それに、評判など、それこそどうでもいいのよ。私たちは、この世界を支配するために来たのではないわ」
「醉妖花様のために来たのよ」
月跡の言葉に、瑚沼崎は言葉を失う。確かに、月跡の言う通りだ。彼女達は、醉妖花のために存在している。醉妖花のためならば、どんなことすらも厭わない。
「では、行動を開始しましょう」
月跡は、そう告げると、漆黒のドレスを翻し、空中に浮かび上がった。その瞳は、青い炎のように燃え盛っていた。
レイタニアの夜空に、巨大な銀の月が浮かび上がる。それは、月跡の永久尽界が具現化したものであり、この世界の理を超越した存在感を放っていた。
「焼き尽くすわ」
月跡は、静かにそう告げると、銀の月から青色の炎を放つ。炎は、まるで流星群のように、レイタニアの街へと降り注いでいく。
「うわー、綺麗だなおー」
ミントは、炎の雨を見上げながら、感嘆の声を漏らす。
炎は、レイタニアの街を焼き尽くしていく。建物は崩れ落ち、人々は逃げ惑う。しかし、月跡の炎は、罪のない市民には届かない。炎は、まるで意思を持ったかのように、『深き茂み』の関係者、忌み枝と魔薬の常用者だけを焼き尽くしていく。
「さすが月跡様、完璧なコントロールですね」
ローラは、避難誘導をしながら、月跡の力に感嘆する。
明日も投稿予定です。




