第37話 忌み枝のあるべき姿
深夜、ノヴァ―ド商会会長イシュトビ・ノヴァ―ドの巨大な邸宅は静寂に包まれていた.。警備兵の姿はまばらで、緊張感は薄い。がそれは表向きの姿でしかない。
「{厄介なのが結構いるなお)」「(魔薬でLP操作した連中か)」「(それだけで100人以上いますし、極めつけは忌み枝が3体もいます)」
念話で三人は会話し情報を共有する。
「(いやまあ、今のミントたちならこの程度のLP強化警備兵にあの程度の忌み枝、ぶっ殺すのは容易いなお。ただ恐怖を植え付けろっていうのが厳しいなお)」「(俺も)」「(同感です)」
「(でもまあ愚痴を言っても始まりません。私は裏口から突入します)」「(俺はやっぱ正門だぜ)」「(じゃあミントちゃんは横からじわじわいくなお)」
瑚沼崎は裏手の使用人の出入口から屋敷へ静かに侵入し超感覚でLP強化兵の居場所を探知する。数人固まっているのもあれば一人だけ離れているのもいるが、LP量で見るとほぼ等分の配置になっている。皆かなりのLP強化を施されている。が、瑚沼崎は暁鐘統合元帥の眼球より得たLPの完全操作により片端からLPを吸収していく。LP強化兵は何もわからず意識を失っていく。その意識を失ったLP強化兵の身体だけ喰ってゆく、首はあえて残して並べてゆく。
ほたるが正門の前に立つと、ただの警備兵が詰問に寄ってくる。ほたるはⅢ両刃双の大鎌を無造作に横薙ぎに振り警備兵の意識を切り裂く。
「終わるころには意識が戻るから安心しな」
と云い終わるとあえて正門を破壊せずに飛び越えて中に侵入する。
40人ほどのLP強化兵ほど感知する。中には急速にLPが減少する兵もいるが、その残りに対して本質「武具の操作」を行う。
この場合の武具はLPそのものである。LPを消費して能力を上昇させるならばそれは敵にとっては武器である故にほたるの支配対象である。
爆発的にLPを消費して能力を向上させるが身体が持たない。故にLPをさらに消費し結果消費し尽くす。あとは瑚沼崎のおっさんに丸投げだ。
ミントは基本物理攻撃しか持たない。例外として永久尽界そのものを使った攻撃があるだけ。そうでなければ。主人たるノキ⁼シッソの力を借りるしかなかったが、暁鐘統合元帥の眼球を取り込んだことにより圧倒的に強化されたミントの本質『増殖』を自身の能力のみで扱えるようになり、しかも、理外の力、本質の力を使用したとき、世界の理と反する結果をもたらすことが可能になった。つまり時空を苗床にして時空と一体化した自身を増殖させることも可能になった。
むろんこの世界の理に反しているが問題なしとされる
その増殖した時空がLP強化兵を襲う。心臓を何度も潰され、脳を何度もかき回され、LPが尽きるまで殺され続けるのであった。
その能力を全開にした三人の前ではLP強化兵では物の役に立たない。そして忌み枝は力の差を悟ったが故に自分たち三人を一人にすることにより、より純化した存在になることを決定し実行した。
館の中庭の空中に浮かぶ忌み枝、純化したことにより元の三倍どころではなく強化されている。存在するだけで世界が少しずつ壊れてゆく。それこそが忌み枝のあるべき姿である。
真っ先に瑚沼崎が時空の衝撃を伴った、忌み枝の永久尽界にも届く拳の一撃を放つ。理外の力を得たはずの一撃は確かに忌み枝の永久尽界に届いたがそこまでだった。
忌み枝の反撃の手刀で瑚沼崎の身体だけなく永久尽界の一部が切り裂かれる。
次にほたるのⅢ両刃双の大鎌が忌み枝の首を撥ねようと振るわれるが、忌み枝の周囲の現実が歪んでいるため無力化される。忌み枝の中段蹴りを大鎌で防ぐが、現実が歪んでいるために直撃を喰らった事になりほたるの永久尽界が歪む。
ミントは瑚沼崎とほたるの永久尽界を修復する為、自身の永久尽界を増殖させ二人の永久尽界に結合させる。
「厄介だな。それは」
忌み枝がミントの永久尽界修復をみて言葉を発する。その声は驚くほどノキ⁼シッソ首席補佐官に似ている。
「助かりました」「同じく」
瑚沼崎とほたるがミントに礼をいう。その間も世界がまた少し壊れてゆく。
※明日も投稿予定です。




