第36話 ノヴァ―ド商会
「了解なお」「わかりました。月跡様。」
ミントは片手を振りながらローラと貴賓室を後にした。領事館の他に拠点となるネリウムの支店を作りそこでネリウムの娘たちの事に本格的に取り組む算段なのだろう。
二人が退出したあとほたるが魔薬の瓶を一瞥し
「さて、どうすっか」
ほたるは、いつものようにⅢ両刃双の大鎌をくるくると回すと、その刃先を魔薬の瓶に突きつけた。
「ぶった斬って成仏させるか?」
「そうね。でも小瓶はスケベどもに会うためにとっておきたいわ」
「あー魔薬を使ったことにすんのか。じゃあ中身だけ切っとくぜ」
「お願いするわ」
月跡が小瓶を宙に浮かべるとほたるが大鎌を振るう。
Ⅲ両刃双の大鎌の刃は、確かに小瓶の中にある黒紫の粘性のある液体だけ、ただその液体の全てを切り裂き消滅させた。
あとには空になった小瓶だけが残る
「後はスケベどもの子分に会って適当なこと言えばいいわけだな」
「ご負担ならば私が変わりますが」
「いいっておっさん、今度はぶった切れるんだから。多少の苦労は何ともないぜ」
「じゃあちょっと行ってくるわ」
静かな昼の歓楽街、それでも幾らかの人通りはある。娼館通りに至っては昼夜無しのようだ。
そんななか、16歳姿のほたるは昼でも空いている大きめの酒場に入る。こちらも昼だというのに盛況だ。何人かの視線が向けられるが構わず店員に話しかける。
「なあ、マネジャーはいるかい。この小瓶の蓋を届けてほしいだけど」
といって蓋と一緒に多めのチップを渡す。
店員はチップを確認すると注文もとらず、バックヤードへ入る。それを見たほたるが手近な席に座ってスパークリングワインを注文しようとしたときに件のマネジャーが現れた。
「やぁお嬢ちゃん。旦那衆に気に入られてたみたいだな。また呼んでくれって話が凄くてさ。だけど嬢ちゃん見つかんないし。名前も教えてくれなかったしさ。ホント困ってたんだよ」
「あはは♡名前なんてどうでもいいじゃない。これに比べたら。これホントに凄かったんだから。あなたは使ったことある?」
瓶でマネジャーの胸元をトンと軽く叩く
「一度だけ小指の爪の半分ぐらいかな。でもそんな上物じゃないやつ。でも確かに嬢ちゃんの云う通りどんな奴よりも極まったよ」
「またお願いしていいかしら」
「もちろんだよ。さっき云った通り依頼は多いんだしさ。でも
「一番いいのをお願い。そしたらあなたにもこれ分けてあげる」
「商談成立だ。嬢ちゃん。せっかくだから名前をおしえてくれないかな」
「ヒメよ。よろしく、マネージャー」
「ジャックだよろしくヒメお嬢ちゃん」
「てなわけでバッチリアポとったぜ」
領事館の貴賓室でドヤァと皆にアピールするほたる。
「やっぱりネリウムの素質ありますよ。半年研修を受ければ、バッチリ最前線で働けます」
「えーやだよローラちゃん達には悪いけどスケベども気持ち悪いし。ホントに仕事とはいえローラちゃん達には頭があがらないよ」
「スケベどもを代表してお詫び申し上げます」
「うーん、益尾のおっさんはおっさんだけどあんまりスケベ臭がしないんだよね。暁鐘統合元帥もそうだけど何か雰囲気似てるし親戚だったりしない?」
「親戚は数あれど流石に異世界には居ないと思いますが、一度お会いしてみたいですね」
「さて話を戻すわよ。魔薬を持ったスケベに接触できるチャンスだわ、接触したくないけど、まあいいわ。でほぼ確定でそのスケベは魔薬を造っている組織と繋がるわけね」
「ミントはその変態スケベの情報を調べてちょうだい。十分な情報を持ってこの機を生かしたいわ」
「了解なお。新生ネリウムの力を見せるなお。ローラちゃんサポートをお願いするなお」
「はい。もちろんサポートさせていただきます」
「じゃさっそくレイタニア・ネリウム支店に行って準備するなお」
1日足らずで既にネリウムの支店を聖地都市レイタニアに構えたようだ。ミントちゃん細腕辣腕記といったところだろう。
二日後情報を収集したミントがいつもの領事館の貴賓室で皆を前に変態スケベについての情報を説明する。
「変態スケベの表の名はノヴァ―ド商会会長イシュトビ・ノヴァ―ド、一代で大商会を立ち上げた立身出世を体現した人物ですが、黒い噂の絶えない人物でもあるなお。また端的に言って成金それも超成金と云ったところで、歴史ある商会や名を重んずる貴族等からは距離を置かれている人物でもあるなお。結論をいうと魔薬組織のフロント企業の可能性極大なお」
「こちらの情報はどの程度漏れているかしら」
「情報漏洩には気を付けてるけど、冒険者局経由、それと草むしりで襲撃者を撃退した実力等、結構漏れてるかも知れないなお」
「ならまた襲撃される可能性が高いわ。今日の夜、こちらから打って出ましょう」
「私は領事館で、ローラはネリウムの支店で防衛、ミント、ほたる、瑚沼崎が商会を強襲、瑚沼崎、異論はないかしら」
「ありません。月跡お嬢様」
「おっしゃーセクハラされまくったこの屈辱、晴らさでおくべきか。やったるで!」
「月跡お嬢様、会長を生け捕りしなくてもいいのですか」
ローラが当然のように聞いてくる
「今収監されていないのなら既に公的機関は買収済みかそれに等しい状況よ。それより恐怖を植え付けるべきだわ」
「何方に跪くべきなのかをね」
第37話は 6/17 17:30に投稿予定です




