第28話 冒険者証
〜アラビリス帝国建国記〜
帝国はこの世ならざる怪異にのまれ深みへと沈んで朽ち果てた。連合王国は星の火に焼かれた贄をみて 自ずから星に慈悲を乞う。このときをもって国々は崩れ、
残った羊の群れをネリウムの娘たちが古都アラビリス導く
〜アラビリス帝国建国記〜
娼館練ネリウムの一室で
「行政掌握率は95%を超えたなお。旧帝都でもネリウムの子たちを徴募したのが前倒しにつながったなお」
基本的にみつらぼしの三頭政治の下、帝国の皇族、連合国の王族たちは公爵にまとめて臣籍降下にしてある。残った文官達はネリウムの娘達の管理の下、業務を続けていく。残るは武官、軍事面の方だが基本的に『みつらぼし』とその集いし星たちの個人能力なしに立ち行かなくなっていた。
「まあ、2択だよな、当分の間、おっさんの増殖分裂体を使うか、ネリウムの子たちに剣を持ってもらうか」
「やーっぱそれ以外になにかないなお?」
「行政掌握率は30%下げて構わないわ。その分の子どもたちを治安維持と国境警備に回しなさい。戦になればまたわたしが出るわ。構わないでしょう。ミント?」
「…あまり眷属を増やすのは望ましくないんですよ。ノキ・シッソ首席補佐官の根を隅々まで広げることになりますから。私達「百薬」は覚悟の上で「根」を受け入れたんです。ネリウムの子たちに対してこれ以上「根」が侵食するのは防ぎたいのです」
「何もノキの変態の力を使うことはないわ。もうミント自身の力で眷属を増やすときだわ。元々が変態の根であろうと接ぎ木した花はあなた自身の力でしょう」
「そう云えばミントの本質知らないな」
焼き菓子をもぐもぐ食べながら紅茶を飲む。気楽な発言ではある。
「『増殖』がミントちゃんカワ(・∀・)イイ!!の本質ですよ(´・ω・`)」
「じゃあ、拡大解釈と徹底でネリウムの子たちに増殖した力を分け与えることもできるんじゃね。なんでしないんだ。メリットだらけじゃん。」
「本質を使うほど、あの悍ましい変態に心身が近付くという強力なデメリットがありますので、まず使わないのです」
「一言、言わせてもらうわ。わたしを誰だと思っているの。そのような邪悪を見過ごす訳が無いでしょう。安心しなさい」
「じゃ、一件落着だな。おっさんにもう丸まってなくていいって伝えてくるわ」
ほたるはⅡ両刃双の大鎌で時空を切り裂くとその裂け目に飛び込み室内から退室した。
「そのようなことがあったのですね。20人に1と言わずもっと食い尽くす必要があったのかもしれません」
直径30フィートの多数の肉団子の一つのそのまた多数の口の一つと会話する。これだけ姿形が変わっても声が変わらないのが不思議である
「そんなわけでおっさん、月跡がもう一人に戻っていいってよ」
「わかりましたしばらく時間がかかりますのでお戻りになられてはいかがでしょう」
「せっかくだから見てるー。」
「そうですか、では、始めましょうか」
肉団子同士の喰い合いが始まった。大きな口で丸呑みしようとするものがあれば飲まれた体内で爪と歯を伸ばし高速回転し中から喰おうとするものや互いに複数の口を正面に集め飛びかかるものなど多種多様である。
ただ食い合っても体積は増えずしかし力の密度が上昇するのがほたるにはわかった。数が減るごとに人の形に近くなりそれでも食い合いは最後の一人になるまで続いた。
「おっちゃん滅多強くなってんじゃないか、Lv、Lvは幾つだ」
「ええーとそうですねLv24651ですかね」
「ミントを超えてんじゃん。雑魚ミント一丁あがり!」
「いえ、本質的な強さは何も変わり増しません。Lvの高さはこの世界にどれだけ順応、逆に言えば取り込まれたかに過ぎません。そもそもわたしたちはこの世界にとって有害な異物のようなものですから」
「さて戻りましょうか」
またも娼館ネリウムの一室、ひょっとしたら月跡はこの部屋が気に入ったかもしれない。
「さて、戦後処理も終りが見えてきたわ。帝国と連合王国の完全な統一は20年はかかるからこれは除外するわ。その頃にはアラビリスが帝都になっているでしょう」
「瑚沼崎今後の計画は?」
「はい、2つの選択肢があります。このアラビリスを発展させ続け向こうからコンタクトを得るのを待つのが一つ、もう一つは待つなどせずこちらから踏み荒らしてでて来たのを捕まえるのが
「どちらも一長一短があります」
「個人的には2つの選択肢を同時にするのが一番よろしいかと」
「具体的にはどうするのかしら」
「アラビリスの発展のためには聖地とすることが必要です。この200年新しい聖地都市は作られていません。達成できればこのアラビリスそして『みつらぼし』の名は遠くまで届くでしょう。」
「もう一つの選択肢は説明するまでもないと思いますが、深みからの情報から該当者と思われ得る対象者に片っ端から『みつらぼし』のみなさんが突撃すると言うものです」
「両方を同時にすることでアラビリスが発展すれば深みが広まりより正確な情報が手に入り、外れであっても使える何某かは手に入りアラビリアスの発展に寄与する事でしょう」
「ふー」と月跡は一呼吸おき
「アイリーン、聖地都市作成の探索頼みましたわ」
「あいよ、とりあえず総本山にいってみるよ」
「ミント、深みで興味深い情報はなかったかしら」
「むむむ、情報はないお。ただ今回の戦で何もなかったところを見ると近場にはいないと思われるなお」
「少し遠出をする必要があるなお」
「もし、お伺いしても」
アランが云う
「皆さんは冒険者証をお持ちでないのでは」
「(゜∀゜)キタコレ!!冒険者ギルド。最高だぜ!」
「いえ、そのギルドがあるわけでなく国が発行するものなのですが、皆さんはもはや大国のトップまあつまりでありますので」
「ズルし放題だなお。これは熱くなってきたなお、けど帝国と諸王国の法では見つけられなかったなお」
「それはそうでしょう国際法で決められれいますから、他所に迷惑をかけた自国のゴロツキの責任は取ってもらうからなというのがそもそもの発端ですので」
「世知辛い話ですね、まあそれはそうとして9人分作ってしましましょう」




