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「お母様は悪役令嬢」  作者: 輝く泥だんご
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第25話 酒店ネリウム

「とにかく人手が足りません。まともな占領、統治どころか治安の悪化すら見られます」


 占領した連合王国王都の軍会議室で瑚沼崎が云う


「生真面目ね、瑚沼崎、そんなものは『私達に逆らうな』の通達一つで十分よ。逆らえば、従うまで土地を焼き尽くしていくだけだわ」


「ですが、火事場泥棒というのはどこにでもいるのです」


「相互監視の密告システムの導入だなお。政策は『何でもかんでも皆ガンガン焼こうぜ!!』なお」


「思いっきり魔女狩りじゃん。それ上手くいくの」


「まあ、無いものねだりをしても仕方がありません。最悪より少しでもましであれば十分だと考えなくてはならないのでしょう」


「持続性を考えないタイプの焼畑農業だな」


「1回でも収穫できれば良い、0回より遥かに良いと考え方を改めなければ今の私たちの人的資源では対応できません『何でもかんでも皆ガンガン焼こうぜ!!』を採択しましょう」


 人道に悖る話をする三人娘と大男、聞こえないふりをする緋色の死の面々、死とは言っても人の道の先にあるもの、思うことはあるだろう。


「さて、こんなことをするのです。降りる最後の機会ぐらい設けるとしましょう。緋色の死の皆さん。こちらから降りるにあたって特に条件は付けません。付けるのは退職金ぐらいなものです。明後日に回答を聞きましょう。宜しいですね?」

 瑚沼崎が三人娘と緋色の死に伝える。

「問題ないなお。確かにいいころ合いなお。ここから先はちょっと色々ハードなお。『お疲れ様でした。死ね!』とかしないから深く考えて判断してほしいなお」


「選択肢をくれて有難うと云うべきなんだろう。明後日までだな。返事をするよ」

アイリーンが緋色の死を代表してミント達に云う。


「『何でもかんでも皆ガンガン焼こうぜ!!』の施行日も明々後日からで宜しいですか」

瑚沼崎が月跡に伺う。


「甘いわね。瑚沼崎。でも構わないわ。ミントもほたるも構わないわね?」


「もちろんなお」「構わないぜ」


「ではこれにて散会ですね。それでは明後日にまたここで会いましょう」


瑚沼崎たちは退室し緋色の死が残る


「でどうすんだ、アイリーン」

バーナードがアイリーンに尋ねる。

「正直、迷っている。当然、これ以上は、と思うし、ここまで来て今更とも思う。なによりアタシ達がどっちを選ぼうが『何でもかんでも皆ガンガン焼こうぜ!!』は実行されちまう。バーナードはどうなんだ」


「俺は降りる一択だ。これ以上は無理だ。邪魔だから降りろって云ってくれてんだ。しかも最後のチャンスだっていうんだから決まりじゃねえか」


「私は残るよ。既に、生き返る際に彼らの一部を取り込んでいる。もはや真っ当ではない、私の最後まで彼らに付き従うよ」


「私もアランと一緒で残るつもり。理由は単純に興味かしら。アイリーンの云う通り結局、『何でもかんでも皆ガンガン焼こうぜ!!』か実行されるなら、本当にどうやって、どうなるのか、口ぶりじゃLv8の子がやるんでしょ。しかも瑚沼崎さん。明らかにLvにとらわれない能力を使っているわ。最高よ」


「私は降りたいわ。パトリシアが云ったことがそのまま降りる訳になるわ、余りにも異常過ぎる。得体が知れないどころではないわ。」


「…2対2とはね、緋色の死、解散の危機到来か」


「多数決じゃないの?アイリーンが決めれば3対2になるでしょ」


マーガレットがアイリーンに尋ねる。


「命含む自分の全てを懸ける判断になる。自分の意思に反する事をさせたくないんだよ。アタシは」


「ただし、アタシの腹は決まった。1人でも残る奴がいればアタシも残る。つーわけで、ここで緋色の死を解散する。バーナード、マーガレット、今まで有難う。今一度云う、本当に有難う」


「おい、別れの言葉の前に説得の一つぐらいあってもいいんじゃねーのか」

バーナードが渋い顔で云う


「そう云うがな、降りる理由は尤もなんだよ。アタシには説得の言葉が見つかんねえよ」


「あら、あるでしょ。アランの言葉通り『私の最後までいい。私に付き従え』で十分よ」


アイリーンは一瞬アランの顔を見る。


アランはいつもと変わらず穏やかな顔だ。


「そうだな、迷うなんてアタシらしくなかった。アタシはあのガキどもと子守りについていく。アンタたちも『アタシの最後まででいい。アタシに付き従え』」


「了解しましたぜ、アイリーン」「アイリーン、貴方の最後まで付き従うわ。願わくば、それが私の最後の後に来ますように」


「では緋色の死の再結成ですね。再結成を祝い明後日まではまだ時間がありますので超高級店でとにかく飲み続けましょう」


「それがいいと思うよ。経費として付けてもらえるように瑚沼崎さんに頼んどくよ」


 パトリシアの発言を受けアランは会議室の扉を開けながら話を続けるとミントちゃんが現れたというか扉に張り付いていた。


「やはり立ち聞きは扉に張り付くのが一番なお。盗聴魔法とか言語道断なお。プライバシーの侵害なお」


アランいつもと変わらず穏やかな顔で


「お店の予約とお支払い御願いたします」


「わかったなお。ただうちの系列店で構わないかなお。というか、うちの店がここらの最高級酒店なお」


「酒店ネリウムをどうぞよろしくお願いいしますなお」

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