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「お母様は悪役令嬢」  作者: 輝く泥だんご
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第21話 去るものは追わない。残るものは全て喰う

「分かりました。では少々慌ただしいですが、取り掛かってしまいましょう」

 益尾は娼館から姿を消し、何食わぬ顔で監視者や追跡者達の前にでる。もちろん監視者達がいることなど素知らぬ風にである。


 むろん、監視者達は益尾が『淀み』の者を何人か食べたことを知ってはいるのだが、圧倒的なLv差で何をしても益尾に喰い殺されるだけであることを自覚していため何もできない。

 そもそも監視者たちの役目は益尾が『淀み』の者に近づいたときに危機を知らせることであり、益尾を斃すことではない。その意味で大失態を犯したのだが、監視者たちを処罰して監視の目を減らしては元も子もない。詰みである。


 ここで益尾が追跡者の一人にゆっくりと近づく。追跡者も素知らぬ風を装う。が、瞬間、益尾を見失う。が同時に首元に違和感。直ぐに手をやると折られた香紙があった。


 香紙には簡潔に『去るものは追わない。残るものは全て喰う』と書かれていた。


「甘いと月跡様に咎められるでしょうか」

 益尾は渋い表情をつくる。が、

「ミント様がとりなしてくれるでしょう」


 様は結果が出ればよいのだ。この地、この交易都市アラビリスにあってこその『淀み』である。


 聖都への大交易路の拠点にあればこそ巨大な利益を子々孫々の代まで生み続ける。その権益を握るためにはこのアラビリスを握らなければならない。


 そのための手段は何でもよい。喰ってしまえば簡単だが、常にそれ以外の手段も考える。

「思考の視野狭窄、油断大敵ですからね」


そして数日後、娼館ネリウムでは


「思ったより残ったなお」


「個人的には命あっての物種だと思うのですが、命が惜しくないのでしょうか」


「おいちゃんは知らないなお?闘技場の件、派手にやりたなお。今、おいちゃんを打ち取って名を上げようとする連中でアラビリスはいっぱいだお」


「はー、いや失礼足しました。討ち取ってほしい『淀み』と討ち取りたい『挑戦者』の思惑の一致ですか。いや思いつきませんでした」


「レベリングと思えばいいなお。おいちゃんのLvはLv288かなお、丁度いいなおLv300overを目指すなお」


「ミント様のご協力を頂きたいことがありますがよろしいでしょうか?」


「まとめて相手するのかなお?」


「さっと挑戦者を喰べて、さっと残った『淀み』を喰たいので、まとめて頂けると助かります」


「まかせるなお。適当な事由をでっち上げて集め集めするなお」


 本当に適当な事由であった。益尾の食人の能力は新月の日には使えなくなり大幅に弱体化する。その為、益尾はその新月の日は身を隠す。


 余りにも都合のいい内容であったが、その情報を得るには、多大な困難があったため信憑性を疑うものはほぼいなかった。何より新月を迎える日、益尾の姿が交易都市アラビリスのどこにも見当たらないのが決定的だった。


 益尾を血眼で探す挑戦者たちは、遂に、益尾は偽還の儀が行われていた場所に隠れている。との情報を探し当てる。それだけでなく、日没後にはLP技能の大半をに失うとの情報すら手に入れる。

ある挑戦者は

 「勝ったぜ」

とネリウムの娘との凸凹Σの際に自慢げに語ったとその娘は笑いながら後に語った。


 さて、全部嘘なわけだが、益尾は頑張っている。網に少しでも多くの獲物を掛けるためである。大きな面倒を避けるためには少々の面倒ごとは受け入れなければならない。それが大人というものでー

 ガツンと重い棍棒の一撃が益尾の頭部に直撃する。流石に思考が危うくなる。挑戦者たちの歓声がかつての偽還の儀の間に響く。


 益尾の巨躯よりさらに一回り大きな体躯をもつ者の渾身の一撃だったのだろう。その巨躯の者の陰から滑るように回り込み長剣を益男の喉に正確に突き立てる者がいる。


 この二人を軸に挑戦者たちは益尾を斃そうとしていた。


 混戦であるため攻撃魔法は牽制のみ、魔法はこの二人をはじめに直接物理攻撃をする者達への支援魔法と益尾への弱体化魔法のみであるが、自身のLvを隠すため、あえて弱体化魔法に抵抗せず受け続けため益尾の行動は鈍っていく。


 益尾を一方的に攻撃する挑戦者達、ほとんどは勝利を確信しているが、流石に違和感を覚えるものが出始める。新月の日没後、最も弱体化し、Lv相当の強さまで落ちているはずの益尾に対しこちらは完全な準備を行い、数十もの人数で戦っている。何故、益尾はまだ生きているのか。


 打撃、斬撃を受け致命傷だらけのハズの益尾が口を開く。 

「皆さん、美味しく頂き、ありがとうございました」

 言い終わたときにはかつての偽還の儀の間に立つのは益尾ただ一人のみ。当然と云えば当然である。既にこの偽還の儀の間は益尾の胃の中に等しい。数日を掛けて自らを焼き続けることで気体化させ、内部を益尾を構成していた分子で満たし、効力を持続化させるため魔力を消費し続けていたのである。

「外にいる者もそれなりにいますが、まあ仕方がなかった事にはー、やはりできませんね。仕留めましょう」


 内部に入らなかった、つまり流した情報を信じ込まなかった。益尾を仕留めたものを仕留めれば良いと考えた者がいる可能性がある。


 その様な者がもしいれば、是非、喰べておかなければならない。

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