第19話 剣闘士
「それは悪くないですね。色々夢が広がりますーが、とりあえず、死体の準備をお願いします。そうですね3体ほど棚からお願いします」
「おいちゃんはリスクを説明済みにチェックをつけたなお。それでもやるかなお?」
「まあ、多少のリスクはありますが、見た通りのLvであれば許容範囲内かと。できれば最高レベル38だったものと生贄の子供たちから一人、後は軍から一人でお願いいたします」
「わかったなお、準備するなお」
パンパンとミントが手をたたくと、一つの本が現れトントンと空中で跳ね回ると、死体の落ちる音がドサッ、ドサ、トサと三拍子でリズムよく聞こえた。
「さて此処からはやや刺激が強いので、といっても今更ですしね。では頂きます」
益尾の横一文字の口がさらに大一文字にさけ、とにかく怪しいLv38の男の頭部を丸ごとのみ首を食いちぎり身体は本へと投げ返す。軍属の者も同様、ただ、生贄の子供の頭部を食す際には、五体投地し死体を恭しく扱い静かに頭部を嚙み締め、頭部を食べ終わった後も恭しく抱きかかえけながら本へと返した。
三頭分を食べ終えた益尾だが、
「おおーおいちゃんのレベルが上がっているなお。Lv76からLv83まで7Lv上がったなお」
「お陰様です。本来なら供養しなればならないのですが、その場は改めて設けましょう」
「さて、食人を本質に持つ者、益尾、私たちが今なすべきことは何?」
「市井にまぎれることですかね。ゆっくりと時間をかけて事を成すべきです」
「幸いにして近くにそれなりの交易都市があります。根城にしましょう」
「というかそこんところの連中かこれっていうか皆消し飛ばしちゃったけど」
「はは、何もなかった。知らぬぞんぜぬで通せばよいのですよ。売れるものはきっちり換金しますし、紙幣や貨幣も使いますけどね。表沙汰にできぬ以上、表沙汰には出来ませんから」
「さて、いまさらですが、皆さんの容姿は人目を引きすぎます。認識阻害の魔法のようなものはありませんか?」
三人は顔を見合わせてから瑚沼崎益尾に顔を向けてニッコリ笑った。まさに天に咲く花の微笑みだった。
「では、プランBですね。詳細は私が表から、皆さんは裏から、ああ、それと
益尾は指を三本引きちぎる、
血を飴の様に舐めてください、原語や文化、一般常識などがスッと頭に入りますよ。味は保証しませんが、それではまず、十五昼夜後に会いましょう。」
「くれぐれも、いいですか、ゆっくりとなじむように事を進めてください。」
「それでは始めますか」
その言葉が終わると同時に三人娘は一瞬でその場から消え去る。久しぶりに彼女らが「みつらぼし」を名乗っていたころを益尾は思い出す。
益尾は上着を脱ぎながら
「とりあえず私は都市まで走りますか。持久走は苦手とも云ってられませんね」
流石にその場から消えるとは云えぬものの、体色を変化させながらかなりの速さで駆けてゆく。時速200mileの持続速度は人体離れしているといってよいだろう。
ものの十数分で交易都市アラビリス外縁へとたどり着くやいなや地に伏せ、防壁を見る。
高さは80ヤード、数人の部隊が定期的に巡視している。益尾はトカゲのようにするすると荒野に這いつくばりながら進み、巡視隊に一気に襲いかかり巡視隊を殉死隊へと変える。
「偽還の儀が行われていたというのに平和なことだ。」
益尾は少し笑った
さて膝を曲げた両足に力を籠め、跳ね上がり、80ヤード上の防壁の上に立つ
「さて、歓楽街はあちらか、またこの世界でも殴られ屋をするとは因果なものだ」
客を見つけるのは簡単だ。何しろLv制の世界である。にもかかわらず、Lv以上の言動をしている者を挑発すればよい。虚勢と見られたくない為最後は必ず刃物沙汰となる。
流石に警邏の兵が飛んでくるがその前に客だったものを叩きのめして置けばよい。3日もすれば顔役が手下を連れて来てくれる。そして7日もたてば合法的に闘技場で剣闘士だ。
「動物を虐待するのは気が引けるが、異か仕方なし」
ライオンのような頭部が3つ、前足が4本、胴体につながった体高が15フィートのにゃんこちゃんである。
中央の頭部が咆哮すると同時に紫電が放たれる。続けて左右の頭部も咆哮を上げると爆炎が上がる。
最後に4本の前足が魔方陣を描き、激烈な衝撃波が無数の刃として放たれる。
「でもなあ、月跡様は猫好きだったよなあ」
紫電に爆炎、衝撃波。益尾は本質で耐えているが益尾のLvでは危うい威力だ。
「それに観客は何も不思議に思わんのかね。本当に不思議だ。」
こんな「にゃんこ」を思いのままに出来ることに。益尾の見るところ、この「にゃんこ」のLvは244である。少なくとも闘技場にいるLvではない。が故の
「偽還の儀か」




