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「お母様は悪役令嬢」  作者: 輝く泥だんご
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第15話 『秘花である』

「それで三人は講和条約の締結式に行ったのかい」


 八十八重宇段大天幕の奥、三重宇段天幕で変わらずカウチに寝そべりながら醉妖花は笑う。

「好奇の目を向けれることぐらい構わないのだがね」


「かむなぎ様は骸薔薇様でもあらせられます。好奇の目ではすまないかと」

黒蝶女官長が返答する。その返答を聞いて


「お母さま、愛しておりますが、少々お転婆が過ぎていらしてようで、私、驚くことが多いのです」

 

 『何とも困りました』というような表情で醉妖花は誰ともなく呟く。

 

「しかしだ、ノキはかむなぎ様を『秘花である』と吹聴して回っているが、このままいつまでも閉じ込めておく気か。いささか正気を疑うぞ」


「構わないよ虹蜂、本尊というのはその様な扱いをされるもの。それに、虹蜂や黒蝶はじめ皆々がいてくれるから私はとても楽しいよ」

 醉妖花の声は明るく影を感じさせるものはない。が、それゆえにこの場に詰めている女官、近衛の表情は暗い。


 文官と武官に分けられてはいるものの、そもそもが『エルフorderは文官、それ以外は武官にしましょう。もちろん分ける理由は特にありません。ふぃーりんぐです』で決められたものだ。しかも、実務は『そんなのあるわけないでしょう。私が全てやりますから。なんかひらひら?ちらちらリズム?てゆーかそんなかんじの?しててください』である。

 

 『虹蜂』、『黒蝶』の名も本来の、本当の名前ではない。他の者達も全て与えられた名前である。今は真名を書き換えられ、与えられた名前が真の名となっている。しかもそれだけではない、皆、帰るところがない。それは、『やっぱり帰るところがあるとアレですよ。帰りを待つ人?達がかわいそうですよ。こればっかりはね。後顧の憂いを断つというんでしたか、なんか違う気もしますがやっちゃいますか。で、何時やるの?今でしょ!!』である。


 『虹蜂』はある皇統の象徴たる秘宝であった。だが今となっては当時のことは薄っすらとしか思い出すことが出来ない。『黒蝶』も同様だろう。しかし


「かむなぎ様の御声掛りあれば我ら命いかようにも」


 その発言に強奪されてきた全ての花たちは醉妖花に礼を執る。


 その礼に対し醉妖花は

 

「それは私とお母様の力のせいだ。心苦しいが、否定もできない。受け取るよ。ありがう」


 醉妖花の本質は「超越汎心論」、骸薔薇の本質は「超越唯心論」である。どちらも成立しえない。が、無尽の魔力で成立してまう。しかも、天中に咲く花として他者自らが進んでその力を受容する。resistが本質的にできない。故に、存在しないということにも心が存在し、その心を魅了し、束縛し、誘惑する。


 醉妖花自身にもにも止めることができない。何故ならそれが醉妖花の本質だからである。

 

 醉妖花は微笑むのみ。まさに全てを酔わせるような笑みであった。


 さて草木、盆栽たちは


「扱いが酷すぐる。許されざれることですよこれは!!まるでセクハラ野郎のごとき扱いではないですか。今すぐ異議申し立てをせねばならぬー!!」


「とは言え、自業自得ではないのか。これは。まだ扱いに温情がある。驚くべきことだ。」

 めっちゃ盗聴・盗撮されている貴賓室で声を荒げたノキ首席補佐官に対して曉統合元帥は答える。


「そうだよ、ノキ、形式的にも実質的にも戦争を始めたのは私たちだからね」


「そうでございます。それに、この条約、ほとんどノキ首席補佐官の草案通りではないですか」「私めも頂いた草案通りになるようそれはそれは骨身を削りましたよ」


馬令上人も華命玉天に追随し答え、ひょいとその『草案』を取り出す。


「あーダメダメ、機密過ぎます。います

「なるほど、確かにノキの魔力で書かれているね。この気持ちの悪さ間違えようもない」


「まあ、それはいいだろう。それより、馬令上人、天子殿に従者が一人もいないのはどうしたことだ」


「それが、ノキ首席補佐官が『おじさんはねぇ

「ハイ、止め止め、終了、終わり、終わったのです。」


「それでは困ります」

その発言に皆の視線が天子殿に集まる。黒髪、赤い瞳の少女は臆することなく

「『かむなぎ様を受け入れているならば、一人で来ることもできる。』との言葉に遵い一人で来たのです。」


「まあ、そうゆう訳です。曉統合元帥殿。実態はともかく形の上では我々は皇家に庇護される一宗教ですからな。少し釘をさしておこうとしたのでしょう。一応、天子殿の従者として虹蜂近衛長と黒蝶女官長より近衛と女官をそれぞれ出していただいております」


「華命玉天、いささか、首席補佐官を遊ばせすぎてはいまいか。不安である」


「そうだね。今度、骸薔薇様に奏上することになるだろう」


世の終わりに人はこのような顔をするのだという見本の様な顔をするノキであった。

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