第11話 世界境界
「つまり、どゆこと」「もうぶった切った後だけど」
「つまりなお、『おっきくなっちゃったなお計画』のパクリなお」
「骸薔薇様が成された極超々(略)巨惑星の生成の真似事よ」
「醉妖花様が半径が億光年単位の惑星の生成をするんだお。これにより実体を持った人間をいっぱい飼えるんだなお。後は、それなりの経済成長と自由を与えれば文化も実るんだなお。そのときには文化爆弾の絨毯爆撃も実行可能になるんだなお」
「不可能とはいわないよ。醉妖花様のことだもの。けど。実行できたら、その他の連中、もう極巨超聖都とっていうのも最早アレだけど、ほっといていいんじゃないか」
「そうね。ほたるの云うことは確かに間違ってはいないわ。けど、全体は部分の総和より多きものよ。ましてどれだけ大きくとも部分は部分に過ぎないわ」
「そうなお。まして超越変態者の計画?は醉妖花様をただ一つの花として天中に咲かせることなお。翻訳すると文字通り醉妖花様を全ての中心にすることなお。この全ては文字通り全てなお。このuniverseのみならずmultiverse全てなお」
「つまり俺は異世界転生をしたわけだが、元居た世界も何もかもという訳か?」
「いくざくとりーなお!!」
「もっとも、あのド変態が企んでることであって、醉妖花様が望んでいるわけではないの」
「ただ醉妖花様はあのド変態に甘いから好きなようにさせているだけなのよ」
「とりあえず、如何しよう?」
眼下には重力による収縮により白色矮星となった巨大岩石惑星、コアの主成分が鉄であったため核分裂や核融合を起こすことなく素直に潰れた後、電子の縮退圧に崩落の衝撃が跳ね返されそれなりの爆発を起こしたものの
「まあ、こんなもんかななお」
の一言で片づけられた。
真空の宇宙空間に放り出された三人であるが、一人は『アンデッド』、一人は『細かいことはいいだなお』、一人は『なんかなってる』であるため特に問題はないものの
「同じ銀河団といえ六百十二万二千光年は遠すぎないか」「空間切り裂いても届きそうにないんだが」
「何も戻る必要はないわ。元々私たちは骸薔薇様の勅を果たすため極超巨大聖都に向かう途中だったでしょ。近くの極超巨大聖都にいけばいいのよ」
「近くとなるなお、距離にして百十一万四千光年ぐらいかなお」
「遠いぞ」
「んー。月跡に距離を焼いてもらう手があることはあるんだなお。ただし」
「ただし?」
「奇襲ができなくなるんだお。流石に極超巨大聖都の守りは固いんだなお。真正面から突撃は骨が折れるんだなお」
「それは被害を抑えようとするからでしょ。ただひたすらに焼いてしまえばいいのよ。後のことなんて知らないわ。ド変態が何とかするでしょ」
「待つなお。超越変態に借りを作るのは自殺行為なお。ここで必要とされるのは自由な発想なお。そう、creativeな発想なお」
「じゃあ、そもそもなんで極超巨大聖都に行こうとしてたんだっけ」
「それは異世界に行くためね。普通の聖都群では世界の外には行けないから」
「月跡は世界の境界を焼ける?」
「・・・不可能ではないわ。でも狙った世界との境界を焼けるかどうか。ちょっとした籤と云ったところかしら」
「それなら焼きまくればいいんだなお。存在する事が分かっている世界なお。全部引けばあたりを引くなお。いつ焼くの?今なお!!」
「わかったわ。なら焼き尽くしましょう。隔てる世界境界を全て」
青い月が月跡を照らす、月明かりとは思えぬほど明るく、地には月跡の影が落ちる。
月跡は月明かりを抄うように手を差し出す。その手に天中にある青い月が零れ落ちて青い炎となり月跡を火の粉へと変える。火の粉は舞い、火の粉一つ一つが花となり現れた花園がまた一つの花を創る。
「月花」
世界と世界を隔てる境界。数多の世界を隔てる境界。数多の世界境界が燃え尽きる。




