第8話 落ち込んだ日もあるけどミントは元気です
八十八重宇段大天幕、その三重宇段天幕
「『可愛い子には旅をさせよ』と言いますが、大丈夫なのでしょうか。不安ですなぁ。虹蜂近衛長殿、三人とも無事であるか、なんぞ連絡などありはしませんかな?」
馬令上人が虹蜂近衛長に尋ねる。
「大活躍だよ。上人。幾つもの反朝廷武装組織を撃滅している。その勲功で準一級冒険者、発令依頼を受けていない冒険者としては最高位だ。かむなぎ様に仕える者として実にほこらしい。」
「あーっ、そんなことだろうと思いましたよ。全然無事ではない。事あれり。即ち有事ではありませんか。」
「貴方にも御せない月跡とシッソ首席補佐官の直属のミントがそろいもそろってくんちゃんが悪の道を爆走するためのあらゆる手段とっているのではないですか。私、一応くんちゃんの発注に関わっているので無関係ではないのですよ」
「シッソの阿保が『Ⅱ両刃双の大鎌』を用意した時点で、用意することを許可したことで、かむなぎ様がそれを求め、認められたということ。故に、上人ならば同じくではなりませぬか?」
「全くその通り、しかし、それでもと思ってしまうのは、私の不徳の致すところなのでしょうなぁ」
上人と呼ばれる身に悖る事なきよう精進せねばんなりませぬなと誰へともなく言葉を発した後
「それでは坊主の務めとして茶話に行くので虹蜂近衛長殿、後のこと重ねてよろしく。何事もないとは思いますが、暁将軍をはじめ、シッソ首席補佐官、華命玉天が戦地にいるわけですからな。この醉妖花様のおわすこの地が安寧であるよう黒蝶女官長と共に
「言わずともよい、これでも大人なのだ。勤めは果たすさ」
馬上人は一礼すると、まずは一番遠い極超巨大聖都へと跳び去った。
ところは変わり
都市一つ丸ごと聖堂となっている群聖都「ラースパ」、その冒険者ギルド「ラースパ」本部のカフェでチョコレートパフェをつつきながら
「ナニが役立たず野郎っすなお。コレ毒が入ってないなお。あ〜あ、つまんないなお。やっぱり今夜こそ、高級酒店に泊まるのは止めて安宿一択なお。刺激的な夜がまっているなお!」
「そんなわけないわ。貴方、どれだけ暴れて来たと思ってるの。ここがどこ思ってるの。今が最高の機会でしょう。今、それがない。どこに泊まろうと同じことよ」
こちらは掌鉄珈琲を飲みながら返答する。
「それよりどうするんだよ。群聖都に来たのはいいけど法陣閉じてるし、他の星に行けないじゃないか」
おかかマヨなまめんたい子おにぎりと珈琲牛乳激甘Maxというそれはどうなんでしょうという組み合わせのくんちゃん。メシマズの資質があるのかもしれない。
「しっかたないなお。五大宗教と戦争中だからなお。併合した八ヶ国の群聖都同士としか法陣がつながってないんだなお。全く困ったもんなんだなお。」
「でも時間の問題じゃない?天と名乗られた華命玉さまとド変態の統合作戦、片端から叩き落とすでしょ。でも、確かに、つまらないわ。ただ待つだけというのは」
「かわいいミントちゃんは待つ女なおー。でもあの超越変態に待ち々プレイをさせられているかと思うと怖気が走る。つーか殺す。」
「殺しても死なないんじゃーねーかな、あの糞変態。でも、糞変態待ちってのは確かに気に入らねないな」
「やるか」
「やってやるなお」
「偶にははしたなくても良いかしら」
元気な三人であった。そう、”あった”のである。
「ハメられた、ハメられちゃったよう、ミントもう
「はしたなくてよ」
「でも確かにオレらハメられたよな。正直、今も辛い」
「ミント恥ずかしくてもう
「はしたなくてよ」
「でもこれ完全に罠にハメられたよな」
一刻前のことである。聖堂の法陣へ突撃した三人は抵抗する聖歌隊並びに司祭を撃滅し、ボルテージの上昇に身を任せその勢いのまま無理やり法陣を起動させついには、罠にはまったのである。
多少なりとも考えれば、既に併合した地の群聖都である。抵抗など、少なくとも撃滅が必要な程の抵抗などあり得ない。
ただ三人娘のヒャッハー!係数が高かったのがこのような、そう巨大固体惑星へ飛ばされたうえで、帰還の為の法陣を破壊され、少なくともノキ首席補佐官が知れば、ミントちゃんは体も心もハメられて行っちゃたんですね♡となることは火を見るより明らかである。
「糞、重力がきつい。適正値の八十倍はあるぞ。頭がホントに重い。吐きそう」
「直接、重力に抵抗しようとするから魔力の操作が難しいの。貴方の場合、自分の身体を武具と見做して魔力をつかえばよいのよ」
「それと罠に嵌められても、そう思わなければ、そうはならないの。わかるわね、ミント」
落ち込んだ日もあるけどミントは元気です。元気にならないと燃やされそうです。




