第7話 刺激的な旅
「ハードパワーとしてみれば、もう既に過剰戦力なお。ソフトパワーが必要なんだなお、文化爆弾の戦略爆撃が必要なんだなお。こればっかりは時間とお金と人的資源と適切な法治が必要なんだなお」
「必要なの、それ、かむなぎ様の祝福に逆らえるものなどないわ。そうでしょう?」
「然るべくして然るべき。醉妖花は秘花である」
なんだなお〜。こればかりは超越変態に同意なんだなお〜。あ、同意といってもそういう意味ではありません。念のため。云々等々
白々のパタパタ1号は、青々のパタパタ2号が『くっこれも、奴の罠か。どこまでもし』などと供述しているのを放置してくんちゃんに話しかける。
「というわけであのド変態の夢いっぱい(希or欲)望いっぱいのくんちゃん、息してる?ド変態がド変態的嗜好しているのは当然だけれど、自分がそれを体現しているというのは死にたくなるわね」
言葉の確殺、白々のパタパタ1号の言葉は確実にほたる(くんちゃん)に絶望をもたらした。
「ああ、ほたる、貴方を追いつめるつもりはなかったの。ただこれはチャンスではなくて?」
「私たちに下されている勅は骸薔薇様からのもの。あのド変態が膝を地につける数少ない御方よ。これ以上の説明はいらないわね?」
「では、まず強化された力を使ってみましょう。半刻ほど前から列車強盗に襲われているでしょう。一掃してみなさい。」
絶望の中の希望、白々のパタパタ1号の常套手段である。
しかし、絶望の中に希望を見たものにその希望を疑い捨てることはできない。
『うう、性格悪いなお、いいのは見た目だけだなお。超越変態の性格は超越変態だけど邪悪ではなく超越変態なだけだなお。OG!、OGF!!』
「・・・魔力から察するに護衛はだいぶ押されているようね。でも、あなたなら大丈夫、たった三千人足らずの強盗、敵ではないわ。さあ。いってらっしゃい」
リキュールを元素置換し、生成したたなにかとなにかに溶かされてゆくガラス瓶をミントちゃんの口に無理やり注ぎ込みながら、月のように微笑む。
「自分の人生、自分で救う。その力と機会がある。当然、やってやるさ」
Ⅱ両刃双の大鎌を虚空より掴み取り、すらりと空間を切り開き、血と鉄と火で命を清算する場へ飛び込む。
車両一両を使って設置されている防御壁と銃座、軽機関銃で討たれても完全に運動エネルギーを中和する障壁、そして複数の重機関銃から発射される鉄量は、列車強盗程度、撃退するには十分以上のはずであった。しかし、個人用とはいえ軍用の防御障壁、重火器、身体能力強化及び精神干渉防御の魔法のかかった強盗達はそのうえ練度も高く次々と車両を制圧していく。
ちなみに強盗達は自身を強盗とは思っておらず、レジスタンス(軍としては敗れたものの自分たちはまだ祖国のために命ある限り戦うことを決断した軍属達である)として認識しており、この列車を襲ったのも、帝国の要人がこの汽車に乗車していると、帝国に潜入しているスパイ(ミントちゃんカワ(ღˇᴗˇ)。oイイ!!は本当に働き者だなお)から情報を得たためである。
銃撃が一瞬止まる。それもそうである。幼女がいきなり銃撃戦のど真ん中にしかも一瞬にして現れればやむを得ない。が、その一瞬が終わるときには、大鎌が振られ、子女には見せられないよ!の姿になっている。
一度大鎌を振るだけで空間を超えた数千万の斬撃となる。人体のみならず、発射された弾丸、爆発した榴弾の破片一つにすら数万の斬撃が与えられる。それのみならず、もはや粉砕されたといえるまで切り裂かれた物体は『Ⅱ両刃双の大鎌』の魔力により強制的に熱電離を起こす。
つまり爆炎も『Ⅱ両刃双の大鎌』の支配下にある。
ここは血と鉄と火で命を清算する場である。
血も鉄も火も全て『Ⅱ両刃双の大鎌』の支配下にある。
清算は極めて速やかに行われ、清算の後、ほたるは、月跡にダメ出しを食らうのであった。
「あなたの本質は武具の支配でしょう?列車強盗がもっている武器を強盗自身に向ければそれで終わったでしょうに。」
「自分の武具しか操れない、なんて制限はないわ。いえ、解釈の徹底とその拡大の両立こそ力のなせる業よ。私は私の本質の解釈の拡大と支配の徹底とその両立のために魔力を使うし、かむなぎ様もそれは同じよ」
「まあいいんじゃないかなお。最初から本質の解釈の拡大と支配の徹底、その両立には気が付かないなお。どうしても目先の力にとらわれるものなお」
「それにしても随分目立ちましたなお。ひそひそ話が大合唱なお。というかさせてみせるなお。これで有名冒険者パーティーの仲間入りだなお。特典としてご飯に毒入り確率急上昇だなお。」
「ふふーんなお、ご飯に入れられる毒なんていまさらなんだお。けど偶に凄いのあるから気を付けるんだお」
いや、毒より狙撃の方が、狙撃より路肩爆弾の方が、路肩爆弾より一斉蜂起の方が
ぶつぶつとつぶやく
「これは刺激的な旅になりそうなんだなお、少し楽しくなってきたんだなお」




